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デッドマン・シーカー ―不死の地獄を解体する葬送者―  作者: autofocus


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第10話(2):欺瞞の聖壇

講堂の扉が開くと、そこには見慣れた殺風景なブリーフィング室の面影は微塵もなかった。壇上には巨大な教団の紋章が鎮座し、数えきれないほどのキャンドルが揺らめいている。

 最前列を陣取るのは、純白の装甲に身を包んだ【白翼アルバ】の面々だ。彼らは彫像のように微動だにせず、後方に押し込められた俺たち「旧クロウ」を見ようともしない。


やがて、緩やかな賛美歌が鳴り止むと、一人の男が静かに登壇した。

 新代表、マクシミリアン。

 司教のような豪奢な法衣を纏い、透き通るような白い肌と、すべてを慈しむような穏やかな微笑みを湛えた男だ。


彼はゆっくりと両手を広げ、天を仰ぐようにして口を開いた。


「愛しき子らよ。まずは、先の作戦で散った勇敢なる同胞たちに、深い祈りを捧げよう」


その声は驚くほど澄んでおり、講堂の隅々にまで染み渡るような響きを持っていた。


「彼らの死は、我々に重要な教訓を与えた。……これ以上、尊い命が失われる悲劇を繰り返してはならない。これまでのクロウは、あまりにも過酷で、あまりにも血に汚れすぎていた。暗いカタコンベの中で、孤独に死を待つような戦いは、もう終わりにしましょう」


マクシミリアンは、後方に座る俺たちの方へ、慈愛に満ちた視線を向けた。


「これより、我が教団の精鋭『白翼』が、皆さんの盾となり、剣となります。虚人の浄化という『野蛮な重責』は、神の加護を受けた彼らが引き受けましょう。……そして、元クロウの諸君。あなた方は今日から、戦いという呪縛から解き放たれるのです。これからは、聖地を守るための礎として、我々の後方を支えていただきたい」


講堂のあちこちから、困惑と、そして抗えない安堵が混じったような溜息が漏れる。


「……これこそが、命を落としたギリアム前代表が、最期に願った平和の形なのです」


その言葉が発せられた瞬間、俺の耳の奥で、何かがパチンと弾ける音がした。

 ギリアムが願っただと? どの口がそれを言う。

 仲間を実験体に使い、使い捨てた連中が、死んだ代表の名を盾にして「平和」を説く。


「さあ、祈りましょう。今日この日が、新たな秩序の始まりとなることを」


マクシミリアンが静かに頭を垂れると、白翼の隊員たちが一斉に唱和を始めた。

 俺は拳を血が滲むほど握り締め、壇上の「聖者」を凝視した。マクシミリアンが一瞬だけ、閉じていた目を開き、俺の視線を真っ向から受け止める。


その瞳は、笑っていなかった。

 氷のように冷たく、底知れない悪意を孕んだ「支配者」の目。

 

 俺は悟った。

 この男は、俺たちが守ってきた「死の番人」としての誇りを、一滴残らず絞り出し、灰に変えるつもりなのだと。

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