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第55話 両片想いの恋人ごっこ


 長いようで短い夏休みが終わった。


 八月が終わって、暦の上では秋である九月がやってきても、その殺人的な暑さは止まるところを知らない。

 夏休みとは本来、暑くて健康を害する気候であるための休みだったような気もするが、今や学校に冷暖房は完備されているし、九月になっても夏のように暑いのだから、なんとなく夏休みとは最早そういう休みの期間というような脳死制度のような気がしてくる。九月も信じられないくらいに暑い日が続く今日日、九月も休みにしてくれよ、と玄関を出てすぐの真夏の日差しに、俺はぶつくさと文句を言いながら登校した。



「あ、」

「あ、」


 高校の最寄り駅の電車を降り、改札を出たところで、ちょうど美千瑠に出くわした。


「おはよう、凍華」

「おはよう、美千瑠」


 あれからも俺達の恋人ごっこは続いていた。


 夏休み中ももちろん何度か遊んでいたのだが、恋人ごっこを終わらせたい俺 VS 恋人ごっこを終わらせたくない美千瑠 の攻防戦は続いている。


「一緒に登校するか?」

「もちろん! だって私達恋人同士だし?」


 にっと笑う美千瑠に俺は引きつった笑みしか返せない。譲る気はないってか?


「九月なのにあっつうー」


 美千瑠はブラウスの首元をがばっと広げて、ぱたぱたと胸元に風を入れる。


「だからそれ外でやるなっつの」

「え? どうして? 凍華がドキドキしちゃうから?」

「そうだよ! なんか文句あんのか!?」

「えっ、いや、ないけど……。なんでちょっとキレ気味なの? でも、嬉しいかも! 彼氏って感じ」

「彼氏ですけど?」

「うん! そうだよね! 凍華もすっかり恋人ごっこが板についてきたわけだ」


 美千瑠は満足そうにうんうんと頷く。


 何度言っても分からない美千瑠に、俺はもう何度言ったか分からない言葉を口にする。


「俺は恋人ごっこ、やめたいけどな?」


 夏休み中、散々言ってきたわけだが、美千瑠は全く聞く耳を持たなかった。


「うん、私は恋人ごっこやめないけどね?」

「こいつ……」


 ずっとこんな調子である。


 これじゃあいつになっても、俺と美千瑠は恋人ごっこをするだけのただの友人のままだ。


 俺は早くそれを終わりにしたいと言うのに。


「美千瑠」

「なに? 凍華」


「俺、二学期から本気出すから」

「え? なにそれ? 何に本気出すの?」


「美千瑠に恋人ごっこ、やめたいって言わせてみせる」


 俺の決意は固い。


 恋人ごっこをやめて、美千瑠の本当の恋人になるのだ。


 美千瑠は、ふうんっと自信満々な表情を浮かべる。


「凍華にできるかなぁ? 彼女である私が傍にいなくなるの、絶対寂しいよ?」

「さて、どうだか」


 俺の言葉に、美千瑠は不満そうに頬を膨らませた。



「出来るものならやってみなよっ。凍華は絶対、恋人ごっこをやめられないよっ! (私の魅力でなんとかして凍華をメロメロにしなきゃ……! このままじゃ凍華が離れて行っちゃう……!)」



「いーや、絶対に恋人ごっこを終わらせるね! (そうしてちゃんとした恋人同士になって、これからも美千瑠の隣にいるんだ……!)」




 俺と美千瑠は、にこにこと笑顔を浮かべながらも、内心同じように冷や汗をかいていた。




 こうして俺達の恋人ごっこは、本当は同じ気持ちなのに擦れ違ったまま、波乱の二学期を迎えることになった。





 両片想いの擦れ違い恋人ごっこは続く…………。





一部 終わり






ここまでお読みいただき誠にありがとうございました!

楽しんでいただけたでしょうか……。


ひとまず10万文字ちょっとで、第一部を終わりとさせていただきました。


二部以降はのんびりと更新予定です。

二学期に突入&恋人ごっこもますますじれったいものになっていく予定です……!


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!

少しでも隙間時間が楽しものになっておりましたら、嬉しいです!


四条 葵






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