第53話 変わらない関係
「美千瑠、聞いてくれ。話がある……っ」
俺は美千瑠を引き剥がすと、真正面に座らせる。
「相変わらず気持ちいいね、キス……」
未だにとろんとしてる美千瑠に理性を奪われんと、俺は大きく頭を振った。
「またヘドバンしてる……」と言う美千瑠の呟きは聞かなかったことにする。
「美千瑠、大事な話なんだ」
「大事な話……?」
美千瑠はこてんと首を傾げる。
美千瑠から誘われて始めたこの恋人ごっこ。
俺が終わりしようと言ったら、美千瑠は、どんな顔をするのだろうか……?
気が付けば喉がカラカラに乾いていて、俺はテーブルの上の麦茶を一気に飲み干す。
「美千瑠、恋人ごっこのことなんだが……」
「凍華、もしかして終わりにしようと思ってる……? 恋人ごっこ」
「……っ」
美千瑠に先に言われて、俺は二の句が継げなくなる。
「そ、そう……」
そうだ、と口にしようとして、その言葉に被せるように美千瑠は強く言う。
「やめないよ?」
「え?」
「恋人ごっこ。私、凍華との恋人ごっこ、やめるつもりないよ」
「え……どうして……」
「だって、楽しいし、お手軽に恋人気分が味わえるの、すっごくよくない? 凍華だって、私と恋人っぽいことするの、案外好きでしょ?」
「まぁ……、そうだけど……」
確かに美千瑠との恋人ごっこは楽しかったと思う。
でも、俺は本当の自分の気持ちに気が付いてしまった。その気持ちを無視したまま、恋人ごっこを続けるなんて無理だ。
「じゃあ問題ないよね? これからも私と凍華は恋人。それでいいじゃん」
美千瑠はにこっと笑う。
俺はそれ以上強く言うことが出来なかった。
ここまで拒絶されるとは思っていなかったのだ。
俺が美千瑠の本当の恋人になるのは、まだ早いってか……?
悔しい。
俺はぐっと唇を噛みしめた。
「もう一回する……?」と美千瑠は俺の唇に自身の唇を重ねる。
このままでいたくないのに、こんな関係のまま美千瑠とキスしたくないのに、結局俺と美千瑠の関係は変わらないままだった。




