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第4話 リア充ってこういうものですよ


 放課後は大抵四人で遊ぶ。我ながらかなりリア充である。


 俺達の通う高校の周辺は見事に何もなく、隣にコンビニがある以外遊ぶ場所は全くない。

 住宅街と畑に囲まれた学校から二十五分ほど歩くと、駅がありようやく小さなショッピングモールがあった。この高校に通う生徒の遊び場は、専らこの小さな商業施設だ。


 その中に入っているこれまた決して大きくはないゲームセンターへと、俺達は足を向ける。


「さて、どこから回るか……。因みに俺は音ゲーがしたい」


 さりげなく自分の意見を主張しながら三人に視線を向けると、三人は各々やりたいことを口にする。


「ゾンビ倒すゲームやろうぜ!」

「私、クレーンゲームでぬいぐるみやお菓子を取りたいな」

「プリ撮ろ! 新しいプリ機だよ!?」


 こいつらとはもう二カ月一緒にいるが、なんというか見事に意見がバラバラである。行きたい所はすんなり決まるのに、そこでやりたいことはいつも違う。まぁこれもいつものことだ。


「よし! 順番に遊ぶか!」

「「「おー!」」」


 三人は楽しそうに拳を挙げる。


 自分のやりたいことははっきり主張するが、誰かのやりたいことを否定したりはしない。好きも嫌いもはっきりしているが、打算的ではなく裏表のない言葉で接してくれる。


 だからこそ俺はこの四人でいることが好きで、気に入ってもいる。高校に入学して仲良くなったのがこいつらでよかったと、心底思っている。


 時たま絡んでくるうざいやつはいるが、それもまぁ嫌いではないのだ。




 俺達は順番にそれぞれの遊びたいもので遊ぶ。


 まずは結菜が欲しいと言ったぬいぐるみを取りお菓子を取り、真宙がやりたがっていたゾンビを倒すゲームをし、俺の得意な音ゲーをし、四人でプリを撮った。


 美千瑠は俺と一緒に写ることを嫌そうにしていたが、これもいつものことなので「はいはいツンデレツンデレ」と隣に並んだらキレられた。うんうん、これもいつものことだ。


 そうして出来上がった、加工されまくって別人となった四人の写真を見て、四人で笑い合った。


 こういうのマジでものすごく青春だよな。


 目の前で笑う三人を見ながら、きっと大人になってもこうして四人で笑い合った日々は忘れないだろうなぁなんて、柄にもなくセンチメンタルなことを思った。




「はー、楽しかったなぁ~!」

「だねっ」

「うん!」


 ゲーセンから駅へと向かう帰り道。真宙、美千瑠、結菜は揃って笑顔だった。きっと俺の顔にも同じような表情が浮かんでいたことだろう。


「凍華も楽しかったか?」


 真宙が俺を振り返って尋ねてくる。


「ああ、楽しかったよ」

「よかった!」


 俺の言葉に、また三人が笑顔になった。


 俺は社交的な方じゃないし、自分の意見も面倒で強く言う方じゃなかった。だけど、こいつらになら自分の気持ちを嘘偽りなく伝えることができる。


 この二カ月で、それだけ俺は三人を信頼していた。逆もまた然りだと思いたいくらいには。




 電車通学の俺達は、揃って同じ黄色い各駅電車に乗る。

 十分ほど電車に揺られたところで、真宙と結菜が同じ駅で降りる。

結菜はゲーセンで取ったうさぎのぬいぐるみを、大事そうに胸に抱えていた。


「凍華くん、美千瑠ちゃん、また明日!」

「うん! また明日! 真宙くん、結菜のことちゃんと送ってあげてね!」

「おう! 任せろ!」

「じゃあな」


 二人を見送ってまた電車が動き出す。夕焼けのオレンジがやけに眩しかった。

 結菜と真宙はどうやらご近所さんだったらしく、いつも帰りは真宙が結菜を家まで送っている。


 俺と二人残された美千瑠は、窓の外に視線を向けながら、今日のことを思い出しているようでしみじみと呟いた。


「楽しかったねー」

「そうだな」

「凍華ってクレーンゲーム得意なんだ?」

「真宙ほどではないな」


 真宙はあらゆるクレーンゲームが得意で、結菜が欲しがっていたうさぎのぬいぐるみのも一発で取っていた。そこそこクレーンゲームが上手いと自負していた俺もあれには敵わない。


「でもお菓子たくさん貰っちゃった! いいの?」

「いいよ。ただ取るのが好きなだけで、お菓子はいらないから」

「変なのっ。でも、ありがと!」


 美千瑠はにこっとその綺麗な顔に笑顔を浮かべる。


 珍しく素直にお礼を言われてなんだか気恥ずかしくなった俺は、ついいつものノリで余計なことを言ってしまう。


「いつもそうやって素直でにこにこしてたら、お前だってまぁそこそこ可愛いのにな?」


 そんな言葉がついぽろっと零れて、それを聞いた美千瑠は顔を真っ赤にして眉を吊り上げた。


「まぁそこそこ可愛いってなんだ! いつも可愛いでしょうがっ!」


 言いながら右ストレートが飛んでくるので、俺はそれをさっとかわす。


「あぶなっ! そういうとこが可愛くないんだよ!」

「はぁ!? 凍華って本当に一言余計!」


 一言余計はお互い様だ。



 そんなやり取りをしていると、俺達を乗せていた電車は美千瑠が降りる駅へと到着した。


「今日はこのお菓子に免じて許してあげるっ!」

「はいはい、お許しいただきありがとうございます」

「なんかいちいちむかつくなぁ」


 そんな言葉を残して、電車の扉が閉まる。


 先程までむっとした表情だった美千瑠はしかし、お菓子の入ったビニール袋を揺らしながらにっと笑って俺に手を振った。俺もそれに手を振り返した。きっとその表情も穏やかなものだったに違いない。




 俺達の日常はとてもありふれていて平凡で、きっとずっとこれからも四人でいられるのだろうと、この時の俺は信じて疑わなかった。




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