第2話 4人の出逢い
そんな俺達四人が出逢ったのは、高校の入学式だった。
入学式とは不思議なもので、祝われる立場のはずの俺達が何故かその片付けをさせられる。他校もそうなのかは分からないが、少なくともうちの高校はそういう流れのようだった。
新入生分三百二十脚のパイプ椅子と、それとほぼ同数の保護者用のパイプ椅子の片付け。それもA組とB組の生徒だけだ。
つまりA組に配属されてしまった俺も、例に漏れず片付けをするはめになったのである。
新入生に片付けさせるか普通? と思いながらも、初めて訪れる体育館で胸につけられた「祝ご入学」の花を揺らしながら、俺は黙々とパイプ椅子を折り畳んでは台車に積み上げていた。
ふと視線を上げると、いっぱいになった台車を押す二人の女子生徒の姿が目に入る。
折り畳んだパイプ椅子を山ほど積んだ台車は、体育館のステージ下に収納する。
そのステージ下まで運ぼうと女子二人は台車を押していたのだが、これがどうにも重いらしく真っ直ぐに進めていなかった。
それはそうだ。パイプ椅子が五十脚も載っているのだから、いくら押すだけだといってもかなりの重量だろう。
見て見ぬふりをするというのも気が引けたので、俺は渋々彼女達に声を掛けた。
「俺が持って行くよ」
ぱっと驚いたように顔を上げた女子生徒二人はどちらもとてつもなく美人で、「あ、ありがとう……」と小さく呟く。
それが美千瑠と結菜とのファーストコンタクト。
格好よく引き受けたはいいが非力な俺には当然重く、へにゃへにゃと蛇行しながらステージ下へと向かう。
格好付かないなぁと思いながら台車を押していると、そこに一人の男子生徒がやってきた。
「平気か? 俺も一緒に押すよ」
モテそうな爽やかな笑顔を浮かべたそいつは、派手な金髪にピアスをしていて少しビビった記憶がある。今は真っ黒に染め直したが、それが真宙の第一印象だった。
言葉の通り俺の横に並んで一緒に台車を押してくれた真宙は、ステージ下の収納まで手伝ってくれた。
「えっと……ありがとな」
「おう! 女子の代わりに運んできたんだろ? 声掛けてるの見たよ。お前見た目に寄らずいいやつだな!」
にかっとイケメンスマイルをこちらに向けてくる真宙。
見た目に寄らず……?
確かに俺は目つきも良くないし愛想も良くないが、なんて直球な言葉なのだろうか。
「俺は榎本 真宙。よろしくな!」
「え? あ、ああ、よろしく……。藤野 凍華」
差し出された手に躊躇いながら自分の手を重ねると、真宙はその手をぎゅっと握りぶんぶんと上下に振った。
「凍華か! なんか珍しい名前だなー」
「そうか?」
そんな会話をしていると、二人の女子生徒が駆け寄って来る。
「さっきはありがとう!」
ぱたぱたとやって来たのは先程台車を押していた二人、美千瑠と結菜だった。
どうやら俺が台車を引き受けたあともずっと見ていたらしい。
俺が持って行く、と言ったくせに真宙の手を借りてしまったことに若干の羞恥を感じる。
俺が答えるより先に、隣にいた真宙が笑顔で答えた。
「女子じゃ重くて大変だろ? こういうのは男子に任せておけって」
「うん!」
にこやかに話すイケメンと美少女二人。
さて場違いな俺はおいとましようとその場を離れようとすると、美千瑠が声を掛けてきた。
「待って! 君にもお礼言ってるんだよ?」
「え?」
「手伝ってくれてありがとう! 私は桜咲 美千瑠! よろしくね」
「あ、ああ、よろしく……」
見ず知らずの俺なんかに、惜しげもなく笑顔を向ける美千瑠。
今思えばあの時の俺は、不覚にも美千瑠を可愛いと思ってしまったんだよな……。今となっては可愛いなどと思うことは一切ないが。
奇しくも俺達四人は同じ一年A組で、そうしてこのことをきっかけにつるむようになったのだった。




