第25話 謎のもやもや
昼食を終えた俺達は、俺が気になると言っていたホーンテッド猫屋敷、所謂お化け屋敷へとやってきた。
ここもまたこのパークらしく、おどろおどろしい雰囲気の中にもにゃーんがいて、怖いんだか可愛いんだかと言った感じである。
入場は二人一組と言うことで、当然俺と美千瑠、真宙と結菜で分かれる。
「じゃ、俺達先に行くわ」
「い、行ってきます……っ!」
少し不安そうな結菜を支えるように、真宙が先導して歩いて行く。
俺達はその後ろ姿を見送り、入場時間まで待機する。
「真宙くん、すっかり結菜の彼氏って感じ」
「そうだな。お似合いだよ、とっても」
THEピュアピュアほわほわ癒しカップル。
「やっぱりいいな~恋人って! 憧れる! 私もあんな恋人ほしい!」
どんな妄想をしているのか知らないが、美千瑠がうっとりとした瞳で空を見上げる。
いつもなら「おいおい彼氏の前でそんなこと言うか普通?」と軽口を叩くのだが、実際そう言おうと思って口を開きかけたし、しかし自身の中に生まれた謎のもやもやに上手く言葉を紡ぐことが出来なかった。
「……できるといいな、本当の恋人」
出てきたのは思ったよりも投げやりな言葉で、その言葉に美千瑠は眉を下げて笑う。
「……うん」
そうこうしているうちに俺達の番が回ってきて、俺と美千瑠はゆっくりと猫屋敷に足を踏み入れる。
中はかなり薄暗く辺りが真っ赤で染まっているようなのだが、暗いせいか血が固まったような黒々とした色のように見え不気味な雰囲気を漂わせていた。
しかし所々ににゃーんがおり、怖がらせたいのか和ませたいのか、どっちつかずなコンセプトだなと思った。まぁ、にゃーんのパークは子供も多いしな。
中に入ってすぐ、壁や通路がミラーになっていて、俺と美千瑠は戸惑った。
そこにいると思っていたはずの美千瑠は鏡に映る美千瑠で、いくら追いかけても美千瑠本人には会えない。
「おーい、美千瑠?」
いつはぐれてしまったのか、さっきまで隣にいたはずの美千瑠は鏡の向こうにいる。
「凍華?」
美千瑠の声がすぐ傍で聞こえた気がして振り向くも、そこに美千瑠の姿はない。
俺はふと、いつまで美千瑠と恋人ごっこをしていられるのだろうかと、そんなことを思った。
真宙と結菜が付き合い始めて、ただ退屈しのぎで始めた恋人ごっこ。
しかしきっと、美千瑠にちゃんと好きな人ができれば、この恋人ごっこは終わる。
俺はその時、どう思うのだろうか。
やっと美千瑠から解放されたとスッキリするのか、それとも…………。
「凍華っ! 見つけた!」
突然腕をぎゅっと掴まれ、俺は振り返る。
そこにはほっとしたような表情を浮かべる美千瑠がいた。
「よかったぁ~。高校生にもなって迷子だなんて、勘弁してよねっ」
「いや迷子になったのはお前の方だろ。勝手に先に行くなよ」
「ええっ、凍華が遅いからでしょ? ちゃんとついて来てよ」
「じゃじゃ馬め」
俺は文句を言いながらも、美千瑠の手を取る。
「え……」
「ほら行くぞ」
手でも繋いでおかないと勝手にどこに行くか分かったものではない。
俺は戸惑う美千瑠に気が付かないフリをして、ずんずんと前へ歩みを進めた。
驚かす系の怖さはほとんどなく、どちらかと言うと謎解き系の多い猫屋敷だった。雰囲気はおどろおどろしいが、案外と熱中して謎解きをしてしまい、結果的にはすごく楽しめたと思う。
出口付近のベンチで座って待っていたらしい真宙と結菜に合流して、そのあとも空いているアトラクションを見つけては手当たり次第に乗った。
そうしてまたグッズショップへと戻ってくる。
美千瑠と結菜は楽しそうにお土産を選んでいた。クッキーやチョコといったお菓子から、にゃーんのマスコットキーホルダー、食器、文房具など。色んなものをカゴに入れて行く。
俺も適当にクッキーが入ったお菓子を購入する。帰ってラノベでも読みながら食おう。
そうこうしているとあっという間に陽は傾き、空一面が橙色に染まり始めた。
腕時計を見ると、午後六時を回ろうとしていた。
パレードも見終わってそろそろお開きかな、と思っていると、結菜が園内のとある箇所を指差して声を上げる。
「最後に、あれ乗らない?」
結菜の指差す方に視線を向けた俺達は、OKと頷いた。




