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第24話 揃いも揃ってピュアすぎないか?


 星型の小さなチュロスを頬張る美千瑠に、俺は先程の真意を尋ねられずにいた。


 どうせまたいつもの「冗談でした~! 凍華本気にしたの? ぶふふーっ! 私のこと好きじゃん!」とからかわれる未来しか見えない。


 美千瑠というやつは俺を動揺させて楽しんでいるのだ。なんて面倒くさいやつ。


 そういうわけで、美千瑠の言葉にいちいち動揺するような俺ではない。


 この三か月間ほぼ毎日一緒にいるのだ。美千瑠がどんなやつなのかくらい嫌でも分かってくるというものだ。


 チュロスを食べ、さてどうするかと思っていると、結菜から着信があった。

 美千瑠がその電話に嬉しそうに返答する。


「うん、うん……、よかった! うん、うん……。わかった! それじゃあまた後で」


 俺に向けることはほとんどない無邪気な笑顔で結菜からの電話を切ると、こちらを振り返る。


「結菜、体調大分良くなったって!」

「そうか、よかった」

「カフェで待ち合わせにしたから、そこで合流しよ」

「OK」


 二人が待ち合わせに指定してきたカフェは、ちょうど俺達と結菜達のいた場所から真ん中くらいの位置にあった。徒歩で行くと、十分弱くらいだろうか。


 美千瑠は俺の隣を歩きながら、今日はなんだか終始楽しそうだった。

 きょろきょろと辺りを見たり、何かを見つけては写真を撮ったり。


 無邪気な美千瑠は、それはもう可愛……………。


 俺はぶんぶんと頭を横に振る。


 ナチュラルに美千瑠を可愛いなどと思ってしまうところだった。今日の俺もどうやらパーク内の愉快な熱気に当てられ少し思考が緩んでいるようだ。


「凍華、何してんの? 雨に濡れた犬の真似?」


 俺が頭を振っている姿に、美千瑠は怪訝そうな瞳を向けてくる。


「そんなに頭振ってると、カチューシャ取れちゃうよ?」

「え、ああ……」


 そういえばパークのキャラクター、にゃーんのボーイフレンドらしいキャラクターの猫耳を付けていたことをすっかり忘れていた。


 地面には俺と美千瑠の影が並んでいて、二人の頭の上には猫耳が付いていた。


 こうやって並んでいると、なんだか本当の恋人みたいだ、な………。


 俺はまた訳の分からない脳内コメントをかき消すように頭を振って歩き出す。


「そんなに頭振ってたら、気持ち悪くならない? ヘドバン?」

 と美千瑠が不思議そうに俺の横をちょこちょこ歩く。


 とにかく早く真宙と結菜に合流したかった。




「凍華! 美千瑠!」


 指定されたカフェに到着すると、真宙が大きく手を振って迎えてくれた。隣で結菜も上品に小さく手を振っている。

 美千瑠は結菜に駆け寄る。


「結菜! 平気?」

「うん、もうすっかり大丈夫! ゆっくりしたら良くなったよ。二人共迷惑掛けちゃってごめんね。真宙くんも……」


 俺達三人は揃ってぶんぶんと首を横に振る。


「迷惑なんて思ってないっつの。結菜が元気なのが一番!」

「だな。四人で気楽に楽しもう」

「うん! まだまだ時間はあるし、無理せず遊ぼうね!」

「ありがとう~~~!」


 結菜は嬉しそうに笑う。



 早速四人でカフェに入り、昼食を取ることにする。


 パークキャラクターにゃーんのフレンチトーストに、カフェラテのセットを頼んだ美千瑠と結菜は、きゃっきゃと楽しそうに写真を撮りながら食べている。


 対して俺と真宙の男子組は、にゃーんのボーイフレンドこと、にゃんぞうの「男の極太ソーセージフランクフルトセット」を頬張る。肉肉しく、且つ野菜もボリューミーでケチャップとマスタードが豪快に掛かっており大変食べ応えがある。


「凍華、今日は本当にありがとな」

「ん?」


 お互い口いっぱいにパンを詰め込み、もぐもぐと会話する。


「ダブルデートっつって、急に誘っちゃっただろ? 二人きりでどこか出掛けたかったんじゃないかなってさ」


 真宙の言葉に、俺は首を振りながら返す。


「それはこっちの台詞だ。二人きりじゃなくてよかったのか? せっかくの遊園地デートだろ。俺達は邪魔なんじゃないか?」


 そもそも俺と美千瑠は恋人同士でもなんでもないし、マジでただのにぎやかしでしかない。


「そんなわけないだろ! 凍華と美千瑠とまた四人で遊びたかったから、俺はすげー嬉しいよ!」


 相変わらず屈託のない爽やかな笑顔で真宙が笑う。


「真宙がいいなら、俺達も嬉しいけど」

「おう!」


 目の前で楽しそうに笑う美千瑠と結菜を眺めながら、少し声を潜めて真宙に問う。



「で、結菜とはどこまでいったんだ?」



 俺の問い掛けに、炭酸飲料を口に含んでいた真宙は目を見開いて思い切り咳き込んだ。どうやら炭酸飲料が気管に入ってしまったらしい。炭酸はきついな……。


「げっほ!? ごっほっ!!!」


 急にむせた真宙に、「大丈夫!?」と心配そうな視線を向ける結菜。美千瑠も驚いたように目をぱちくりとさせている。


「あ、はは、大丈夫! マジで大丈夫だから!」


 真宙は無理に笑顔を作ると、女子二人にひらひらと手を振る。

 二人は首を傾げながら、会話に戻っていく。


「大丈夫か?」

「いや! 今のは普通に凍華のせいだろ!!」

「はは、悪い悪い。まさかそんなに動揺するとは思わなかったんだよ。付き合ってたら普通のことだろ?」


 当然これは彼女がいたのことのない俺の偏見である。あしからず。


「ふ、普通のこと……? まさか凍華はもう済ませてるとか? キ、キスとか……」

「そんなわけないだろ」


 第一俺と美千瑠は付き合ってなどいないのだから。


 真宙は何故かほっとしたように胸を撫で下ろした。


「そうか、そうだよな。そういうのは俺達にはまだ早いもんな」

「え?」

「キスとかそういう……ちょっと大人なことだよ……」


 真宙は少し耳を赤くしてごにょごにょと口籠る。


 キスって大人なことなのか? 俺としては付き合った男女なら当然通る道だと思っているのだが、真宙の反応に俺の方がおかしいのかと勘違いしてしまう。


「恋人同士だったらそういうことも普通にするのかもだけど……。俺達はなんていうか、もっとゆっくりでいいかなって。やっと両想いになれたし、今はとにかく一緒にいられれば幸せっつーか……」


 凡そ男子高校生とも思えない純情すぎる真宙の発言に、俺はぽかんと口を開ける。


「え、マジ?」

「マジだけど……。なんだよ? その反応。俺、なんか変なこと言った?」


 真宙が不思議そうにこてんと首を傾げる。その様子は本気で言っているやつのそれだった。


 確かに真宙は恋愛に関してかなり純粋で純情なところがあると思う。派手な髪を染めて結菜の隣に立っても恥ずかしくないよう身なりを整えたり、結菜の手に触れる時もすごく丁寧に優しく壊れ物みたいに扱う。この感じだとキス以上のことをするには、相当な時間が掛かりそうだ。


「ああ、いや。二人のペースでいいと思うよ」


 あまりにピュアピュアすぎて、飲んでいたカフェラテが更に甘く感じる。


 少女漫画のヒロインかよっっっ!!!、と内心で盛大にツッコミを入れたことは内緒だ。



 美千瑠に結菜に真宙。揃いも揃ってピュアすぎないか?




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