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第18話 付き合ってたの……?


 七月の一週目。


 ついに高校に入学して初めての定期テスト、一学期末テストが行われた。


 テストは三日間に渡って、現代文・古典・数学・英語・地理・公民・化学・保健・家庭科の計九教科の試験が行われる。


 しかしこの期末テストが終わってしまえば、夏休みまでの残す登校期間はテスト返しやら講習会やらの短縮日課となる。


 中学生の時は期末テストが終わったらすぐに次の単元の授業が始まり、テスト勉強疲れを癒す時間など全くなかったが、どうやらこの田舎の公立高校では期末テスト以降はのんびりとした授業カリキュラムが組まれているようだ。




 キーンコーンカーンコーン……と、間延びした電子音のチャイムが鳴る。


 テスト監督をしていた教諭の、「後ろからテスト集めてくださーい」と言う声が掛かるのと同時に、ここのところ教室内に満ち溢れていた緊張の糸がプツンと切れ、一気に開放的なものへと変わる。「終わったー!」と教室のあちらこちらから声が上がり、どういう意味で終わったのかはきっと人にもよるのだろうが、ひとまず根を詰めた勉強とはおさらばになりそうである。


 例に漏れず俺もほっと息をついていると、隣から地を這うようなぐったりとした低音が聞こえてきた。


「やっど、おわっだぁぁぁ~~~……!!!」


 机に突っ伏しながら魂が抜けたようになっている美千瑠だ。その頭をポンと叩く。


「お疲れさん」

「んー……」


 美千瑠、かなり頑張ってたもんな。


 俺が教えてからというもの、二週間みっちり勉強していたようである。その努力の結果が、しっかりテストに反映されていることを祈るばかりだ。


「カラオケ行く人~!!」


 クラスの男子の誰かが言い出し、みなその声の方へと視線を向ける。


「カラオケ?」

「テストの打ち上げだよ! ぱーっと遊ぼうぜ!」


 教卓の前で賑やかに話す男女は、どうやらクラスみんなでカラオケで打ち上げをしないか、と希望者を募っているようだ。


 その声に先程まで魂が出かかっていた美千瑠が、ぱっと顔を上げる。


「カラオケ!? 行く行くっ!」


 元気よく手を挙げた美千瑠にクラスメイトも賛同する。


「美千瑠ちゃんがいるなら行こうかな」

「桜咲さん行くのか。なら俺も……」


 などと、美千瑠が参加を表明したことによって、クラスメイトも次々に参加を表明する。


 おお、さすがクラスの人気者だ。


 今更ながらに感心してしまう。


 美千瑠は俺達三人以外にも友人が多く、俺以外には当然人当たりもよく優しいので人に好かれるタイプだった。何故俺にだけ喧嘩腰だったり揚げ足を取ってくるのかは全く不明だが、どちらかと言うと、俺達といる方が素のような気もする。


 その美千瑠が、ぱっと俺に視線を向ける。


「凍華は? もち行くでしょ?」

「え、俺?」


 クラスメイトみんなでどこかに遊びに行くのは初めてだった。普通打ち上げと言うのは文化祭や体育祭の後などに行うものだと思うのだが、入学してから行事らしい行事もまだなかったため、これが初めての打ち上げである。


「まぁ、行くかな。暇だし」


 暇であることが一番嫌いなので、ひとまず参加を表明しておく。


「うんっ! 一緒に行こ!」


 テストが終わり上機嫌の美千瑠は、クラスメイトに向けるような優しい笑顔を俺に向ける。


 真宙と結菜はどうするのだろうかと思っていると、彼らも「行く!」と言って手を挙げていた。




 授業はテストだけだったのでお昼前には下校となり、俺達A組は駅前のショッピングモールに入っているカラオケ店へとやってきた。


 俺達が入学する頃合いにできたらしいカラオケ店はチェーン店の店舗としては割と大きく、二十人の団体だったが、平日とあってすぐに部屋を用意してくれた。


 みな適当に席に腰を下ろし、これまた適当に注文したポテトやらお菓子やらを摘まんでいく。


 真宙と結菜の傍に座ろうと思ったのだが、他のクラスメイトに先を越され、まぁ、二人共美男美女でモテるからな、俺は隅の席にぽつんと座ることになった。


 三人以外に友人がいれば良かったのだが、生憎美千瑠、真宙、結菜以外はそこまで親しくないため、わざわざ声を掛ける人はいなかった。もちろん挨拶や同じ班になったら会話もするがその程度である。


 俺は適当にご飯を摘まみながらクラスメイトの歌を聴いていた。

 すると女子の集団できゃいきゃいしていた美千瑠がこちらにやってきた。


「おや、凍華くん。寂しくお一人で?」

「寂しくはないさ。こうして君が来てくれたからね」


 胡散臭い笑顔で返せば、「ぷっ」と美千瑠は笑った。そうして手に持っていたグラスを傾け、俺のグラスにかちんと当てる。


「勉強見てくれてありがと。多分、そこそこいい点が取れるんじゃないかな? と思います!」

「そうか、それは期待してる。美千瑠のそこそこが平均点以下でないことを願うよ」

「え、」

「え?」

「冗談だよ! 平均点はいってるでしょ、多分……さすがに……」


 どんどん自信をなくしていく美千瑠に苦笑いを零しながらも、


「ま、ひとまずテストのことは忘れようぜ」

「そうだね! 今は頑張った私に拍手だ」

「俺にも拍手な」

「はい、ぱちぱち~」

などとしょうもないことを話して笑っていると、美千瑠が酷く真剣な面持ちで言う。


「でも本当に感謝してる。ありがとね!」


 素直なお礼の言葉に俺は目を丸くする。美千瑠に素直な感情をぶつけられるとなんだかくすぐったくて調子が狂う。


「まぁ、彼氏だしな」


 俺の言葉に、「えっ!?」と反応したのは美千瑠ではなかった。


 それは真後ろからの声。


 俺が慌てて振り向くと、そこにいたのは結菜と真宙で。




「美千瑠ちゃんと凍華くん、付き合ってたの……?」




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