第14話 テスト勉強もまた青春(と思いたい)
六月も三週目に入ると、我が校では三者面談が始まる。高校に入学してまだ二カ月だと言うのにもう進路のことを考えなくてはならないのは、随分と生き急ぎすぎな気もするが、まぁ目標の大学など早めに決めておくにこしたことはないのかもしれない。受験が終わったばかりで次の受験って、さすがに気が重いけど。
三者面談の時期がやってくるということは、同時に一学期末定期テストの二週間前でもあった。
七月の一週目に行われる、高校に入って初めての定期テスト。
うちの高校は三学期制なので、一学期末、二学期中間、二学期末、三学期末と定期テストがある。
中学も同じようなものだったが、高校に入って初めての定期テストはさすがに対策の取りようがない。部活にでも所属していれば、先輩にテストの出題傾向や各教科担任の癖など訊けたのかもしれないが、俺達四人は生憎誰一人として部活動に所属していないので、そのようなアドバンテージは取れなかった。
故に、ひらすら授業のノートを見直しながら、問題集を解くしかない。さすがにまだ一年生の一学期なわけだし、そこまで難しい問題は出ないと俺は踏んでいる。
しかしそれでも、来たる定期テストを前に恐怖で震える二人の男女がいた。
「どうしよう~! 期末テスト勉強ってなにしたらいいの!?」
「テスト自信ねえ~……。復習とかもまったくしてねえし……」
昼休み。各々食事を頬張りながら、美千瑠と真宙が嘆く。
運動神経抜群な二人だが、勉強はどうにも苦手らしい。
「結菜お願いっ! 勉強教えてっ!」
「凍華頼む! 勉強を教えてくれ!」
美千瑠と真宙、それぞれから勉強を教えてほしいと頼まれた俺と結菜は目をぱちくりさせながら顔を見合わせる。
「そんなに身構える程のものでもないと思うが……。一年の一学期だし」
「いやいやだからこそだろ! 簡単なうちに点数取っておかねーと!」
「簡単なうちにって……今後酷かったら全然意味ねーけどな?」
懇願する美千瑠と真宙に、結菜は漫画のキャラクターのようにポンっと手を打った。
「そうだ! 四人で勉強会をしない?」
「勉強会?」
「そう! みんなでたくさん遊んできたけど、みんなで勉強会ってまだしたことなかったよね? 一人で嫌だなぁって思いながら勉強するよりも、四人で楽しく勉強した方が効率も上がると思わない?」
結菜の勉強の成績はかなり上位だと思われる。なかなかみんなのはっきりした成績が分からないながらも、授業で行われる小テストはいつも満点。先生に指名されてもなんなく正解を答えていた。ノートもいつも綺麗にとっているし、予習復習をしている姿もよく見掛けていた。かなりの努力家であることが窺える。
逆に俺はと言えば、定期テスト前にわーっとやって、テストでいい点数は取れるもののすぐに忘れるタイプである。まあこの中学の時のテスト勉強法が通じるのかまだ分からないけど。
結菜の提案に俺も頷く。
「四人で勉強会、いいんじゃないか? 美千瑠と真宙に教えつつ、俺も分からないところは結菜に訊きたいし」
「勉強会……! いいかも! 一人だとすぐスマホ見ちゃったりして全然進まないもんね!」
「だな! 俺もすぐゲームしちゃうから、一緒に勉強できると助かるよ!」
というわけで、三者面談週間によりお昼ご飯と掃除で下校になる今日、俺達はファミレスで勉強会をすることにした。
「んーっ美味しいっ! 結菜も一口食べる?」
「え、いいの? わーい、食べる~!」
「あ、もりもりポテトフライともりもりからあげのセット、追加でお願いしますっ!」
ファミレスに来た俺達は、ドリンクバーの他に勉強しながら摘まめるものを頼んでおこうという話になり、美千瑠がパフェを食べたいと言い出し、真宙がパスタセットを食べた末に、またポテトセットを注文していた。
お前ら、さっき昼飯食べたばっかりだよな?
お昼ご飯などなかったかのようにもりもり食べる三人に、俺は仕方なく声を掛ける。
「おーい、飯を食いにきたんじゃないぞ?」
「え? そうだっけ? 期間限定のマンゴーパフェ食べに来たんじゃなかったっけ?」
「ファミレスって飯食うとこだろ? 頼まなきゃ失礼だろ?」
「お前ら、そうやって言い訳して勉強から逃げようとしているわけじゃないよな?」
俺がにこっと笑いかけると、美千瑠と真宙は食べる手を止め、慌てて鞄から問題集を取り出し始めた。
「まったく……」
俺がため息をついている目の前で、結菜がくすくすと笑う。
「凍華くん、なんだかお母さんみたい」
「お母さんって……勘弁してくれよ、結菜……」
美千瑠と真宙が俺の子供だなんて、世話が焼けるにもほどがある。特に美千瑠。
座席は俺の隣に美千瑠が座り、その正面に真宙、真宙の隣に結菜が座っている。
今までなら俺と真宙、美千瑠と結菜、と男子は男子、女子は女子同士で隣り合わせで座ることが多かったのだが、真宙と結菜は付き合っているのだから隣同士の方が嬉しいだろうという俺と美千瑠なりの配慮だった。
まぁ一応、俺と美千瑠も恋人なわけだし。……ごっこだけど……。
そうして俺達は、高校に入って初めての期末テスト対策をするため勉強を開始した。




