魔眼を持つ者
「ったく、話が逸れちまった。それで、結局聞きたい事は何なんだい。」
俺はサンドイッチを咀嚼もそこそこに、無理してサンドイッチを喉に通す。
「とりあえずこんな場所に監禁している理由を教えてもらおうか。」
「意地悪な言い方をするね。まったく。」
「仕返し。」
にやつく俺を横目に静かにそして重々しい雰囲気でソフィアは口を開く。
「あんたはね魔眼持ちなんだよ。」
医者が重大な病を宣告するときのような、そんな重々しさ。
「魔眼?それを持っていることがなんで監禁されている理由になる?」
「まあまちな、ほら。」
老婆はどこからか手鏡を取り出す。
鏡には予想した通り頬がこけ黒く長い髪が肩まで伸びた男が写っていた。しかし話の魔眼というのは確認できず、日本にいた頃と変わらない黒い瞳がこちらを覗いていた。
「その瞳は悪魔を映す眼とされていてね、それが原因かは分からないが魔眼を持つ者のスキルは異様な能力が多いんだよ。まあそんなわけで魔眼持ちは呪われているだとか穢れているだとかで忌み嫌われているのさ。だからこの家で坊ちゃんは生まれてすぐにここに入れられ17年間家の者からいないものとして扱われているんだよ。」
「悪魔ねえ。何も見えないけど。」
鏡を下ろし辺りを見回すが暗くジメジメとした空間だけが広がっている。
「悪魔に関しては言い伝えレベルのモンだからね。それよりもみんなスキルの方を恐れているのさ。」
「ああ、耐性とか攻撃力上昇とかいくつも持てるあれか。」
「少し違う。スキルってのは自身の魂に定着しているその者固有の能力さ。確かに耐性だったり能力上昇のスキルも存在しているけれどあまりポピュラーではないね。そんで魂の在り方だったり形が変化することでスキルも変化するんだよ。」
「魂?」
「魂とは自分を象るいわば象徴のようなものだね。」
霊魂だったり精神だったりみたいなもんか、解釈は日本のそれと大差ないみたいだ。
「で、スキルってのはどうやったらわかるんだ?」
「普通だったら10歳になると魂明の筆でスキルをみる儀式が解禁されるんだけどちょうどその頃からあんたは思いつめるように下を向いてばかりで話すことも目を合わせることですらしてくれなくなったからね。多分、滅入っちまったんだろうね。」
「だから俺が話しかけた時驚いたのか。」
「そういうことだね。しかしまあ、記憶喪失でもまた話せて良かったよ本当に。」
優しく彼女は微笑んだ。
きっと毎日欠かさず会いに来ていたんだろう。そんな年老いてもこの体の前の持ち主のことを忘れないでくれているそのメイドの健気さは、自分の中にほのかに残っていた警戒心を消し去った。
「そういえば俺の名前は?」
「ああ、そうだったね。あんたはハル・アーラス様だよ。伯爵階級であるアーラス家の三男様さ。」
メイドの存在で薄々気づいてはいたがやはり貴族だったか。まあ文化上仕方がない部分もあるとは思うが自分の息子を生まれた途端いないものとして扱うなんて碌な家族じゃないだろうな。
「それで、あんたは?」
「自己紹介が遅れたね。私はアーラス家に勤め始めて55年になる、ソフィア・ゲイナ―ってもんだよ。それと、私はあんたに仕えている身分なんだから敬語はやめておくれ。」
そう言ってソフィアは申し訳程度にお辞儀をした。
「助かるよ、堅苦しいのは嫌いなんだ。こちらこそよろしく」




