6 夢を見るシンデレラ
パソコンを買うために娘はお年玉を使おうとした。
でも母親に学費として使われていた。
娘は怒り、狂いました。
死に物狂いで金を稼ごうとしました。
夢を見すぎた娘。
少しずつ金を貯めてパソコンを買いました。
でもそれだけじゃ物足りない。
妹を夢の国に連れていきたいと。
夢を語る娘はまるでシンデレラ。
妹からしたらフェアリーゴットマザー。
でも努力は実らずに儚く散っていきました。
娘は病んでしまいました。
バイトして、頑張っても誰も褒めてくれないから?
何でも真似してくる蝙蝠娘のせい?
全部違う。
己を信じられなくなった。ただそれだけ。
王子様も何処にも居ないと知ってしまったから。
それでも頑張って耐えて半年働きました。
それでもお金は見事に足りませんでした。
10万円貯めたら夢の国に連れていってくれる?
ママの分も私は貯めてあげていたんだよ?
私を認めて。感心してよ。ほら、私はここにいる。
ちゃんとここにいるんだってば。
お願いだよ。ママ、私を見てよ。
娘は頑張って働いた。
勤務先に新しいマネージャーがやってきた。
それだけでいっぱいいっぱいなのに、ソイツは娘に無理を言ってきたりした。
でも娘は挫けませんでした。
ある日シフトを確認しにお店に行くと、ソイツが何か言ってきました。
「昨日シフト入ってたの知らなかったの?なんで来なかった?」
娘はその声に怯えました。
間違いなく確認していたのにどうして?
それから娘と二人は様子がおかしくなりました。
元気も小説を書くことも絵を描くことも減ってしまいました。
ついにそれが爆発して娘は泣き叫びました。
誰かそっと私を抱きしめて、この状況から救いだしてくれる王子さまは何処?
理想を追い求めるあまりに家から逃げ出してしまいました。
女王は理想を、王は現実を愛していました。
理想は娘の足に噛みついて、現実は娘の頭に噛みついていました。
奇跡でも起こらない限り、娘は呪われたまま。
夢も度が過ぎればただの病のように心を蝕み続けてしまう。
女王は
「現実はいいことなんて無い 私の手を取って?」
王は
「理想なんて逃げ場はない 私の手を取りなさい」
2人は手を差し出しました。
娘はどちらの手も取りませんでした。
寒空の下で娘は泣きました。
娘は昔に戻りたいと望みました。
昔に戻って、大好きな画面の中の存在とゲームだけの青春を望みました。
裏切るような友達はいらない。
光のような青春を取り戻したいと、青き魔法と呪文のように明るい時間を心から願おうか。
娘は暗い森に迷い込みました。
そこには白いふわふわな髪の赤い目の男がいました。
様子がおかしいと娘は感じました。
その男は無言で手を差し出しました。
娘はその手を取りました。
その男は娘の手を引きながら急ぎ足で森を抜けました。