4 魔女の命命 誕生
娘はアイカと同じ高校になってしまった。
運が悪い所じゃ済まないほど落ち込んでしまった。
アイカとは娘の水筒にチョークを入れるという嫌がらせをしていた女で、アイカの母親が逃げてしまい気を病んでしまっているらしい。
娘は理不尽だと感じた。
母親が居ないと罪は問われないのか?好き勝手やってるくせに私から青春を奪ったクソ女にお似合いの末路辿らせてやるんだから。
女王と王は
「お前が手を汚すまでもない 私らに任せろ」
「末路は決まってる 私らに任せろ」
娘を宥めた。
娘は高校になってから新しい友ができた。
ナツキという女でした。
彼女はいじめられて学校に行けなかったらしい。
娘は彼女を玉のように可愛がってしまいました。
彼女が望むまま娘は課題を写させてしまいました。
ある日、娘は聞いてしまいました。
ナツキが他の女に娘の悪口を言う場面を。
「あの人ならすぐ写させてくれる 私も写させて貰ったからわかる」
「鈍感だからわからない」
「あの人は抜けてるからさ」
前々から気づいていた。
娘の言葉遣い、短歌や勉強法、ましてやバイト先も何もかも似せてきていること。
娘は目を背け続けた。
背け続けないといけなかった。
片親の子が集まってくる体質だったから。
慰めや相談相手を求めて寄ってくるから。
娘はそんな子達を可愛がっていたから。
いつかもう一度友達だと言ってもらえるように、
疲れたらいつでも戻って来てねと言えるように。
娘は母性も強かった。それ故、利用したいと思う奴らも多かった。
「蝙蝠のように傲慢なナツキと蜘蛛のように強欲な娘 戦ったら間違いなく娘が勝つだろうねぇ。」
女王はそう言いました。
「案外蝙蝠が勝つかもしれない。」
王はそう言った。
「一理あるねぇ でもあの娘は手元に有利な切り札を持ってるからねぇ どうなることやら。」
女王はそう言いました。
「切り札?」
王は女王に聞き返しました。
「そうさ うちに秘められし穢れた切り札が」
娘はナツキを傲慢で穢れた蝙蝠だと思うようになりました。自身を強欲な蜘蛛だと思うようになりました。
蜘蛛は時に蝙蝠を食らうことがあるそうな。
女王は蝙蝠を嘲笑いました。
「所詮 蜘蛛がいないと何もできない弱い弱い蝙蝠のクセに汚いねぇ…」
悪魔のような女王に対し王は
「君は本当に感情に流されやすいな 私ならあの子を地獄に落とせるのに」
天使のような顔をしているのに言っていることが恐ろしかった。
娘は魔女の命命を産み出しました。
「君には恋と蝙蝠を殺して貰うよ 私の為に頑張って動くんだ さあ!」
娘は魔女の命命に命を吹き込みました。
命命は人形のように眠っていました。
「時間が来たら 起こしてあげる 私の可愛い子」
娘は命命を自分の心の中で眠らせました。
美しい星屑のようなシルバーと海のようなターコイズカラーのグラデーションの髪を撫でる娘。
女王は言いました。
「あの娘、なかなかやるね」
王は笑った。
「ああ、間違いなく成功する 見守ろう」
こうして命命は生まれた。命命の命と引き換えに娘は玉のように可愛がっていた蝙蝠を失いました。そして幸せになりましたとさ。めでたしめでたし