9 泡沫のマーメイド
秋風に金木犀が漂う夜に私は恋をした。
25歳も上の男に一目惚れ。
周りからは散々馬鹿にされたけど「恋は盲目」で止めどなく。
運命の王子様だってずっと信じ続けた。
それなのにある日、あの男は他の女と結婚した。
だから現実の男は嫌いなんだよ。
鈍感すぎて…嫌いなんだよ。
私はとんまな蜘蛛の子さ。
それでもいいと思えたらよかった。
自分が王ならどれほどよかっただろう、
そうしたらあの男がもしかしたらこちらを見てくれたかもしれない。あの男の良き友になれたかもしれなかった。
もしこの現実がおとぎ話なら私は塔や冷たい海から身を投げてしまいたい。
こんな恋になるくらいなら最初からしなかった。
あの男が妻にした女より優れていたらどれほどよかったことか。
傲慢で怠惰な恋がもっと続いて欲しかったと願ってしまう私は冷たいのだろうか。
私を心から愛してくれる男は現れるのだろうか。
己を愛せぬような女には無謀か?
メンタルは泡のようにすぐ傷ついて弾けてしまうそんな己呪えとも、名残惜しさを声にした。
怠惰な恋でもいいの、傲慢でもいい。
そんな私はアンタを愛してた。
どんなことでもアナタの為ならと我慢してたんだから。
私をアナタのマーメイドにしてくれる?
返事は無くていいから。
秋風に金木犀が漂う海のマーメイドになれた気がしたんだ。
アナタを忘れたい。