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そこの人ー

 ネスタフェを出て一時間ほどかな?

 まだ国境まで距離はあるけど近づいてくる一団がある。

 五人か? 数日前を思い出すけどシュリはいないよね?

 動きは速いし鼻の効く奴もいてバランスが良い。



「そこの人ー、止まってくださーい」


 まぁ、敵意は感じないし、問題ないので素直に従って止まる。


「はぁ……はぁ……。 ありがとう……ございます。」

「…………」


 シュリ達の方が速いのかな?

 少し離れて五人がならんで内一人がフードをとって近寄ってくる。

 オレンジの髪色の伏し目がちな眼鏡っ娘が話をするみたいだね。

 ふむ、これはこれで良い。

 伏し目がちって、人によっては上目遣い?

 目力の違いかなぁ?

 

「ユフィさんでしょうか?」

「誰?」

「私はコーラル王国軍、第六大隊所属のミサと言います。 シュリとは友人で彼女からユフィさんの事は聞いていました。 ほんとにお独りで……、凄いスピードですね」


 ボクもフードを外して彼女に向き合う。


「シュリは元気?」

「はい、それはもう。 ユフィさん、シュリの友人としていくつか質問いいでしょうか?」

「質問? 今する話?」

「はい。 どうしても確認しておきたくて呼び止めました」

「そっか。 何?」

「シュリ達を手籠めにしたと言うのは真実ですか?」

「手籠? ………………手駒にとったの間違いじゃないかな?」

「では、シュリに激しく口づけをしたのはどうですか?」


 近い近い、鼻息荒い。

 もう、食い気味でノエルを思い出すよっ。


「んー、唇は奪ったけどね。 激しくはしてないね」

「では、では、婚約して宝剣を与えたと言うのはっ?」

 

 だから近いってば。

 ほっぺスリスリしてないか?

 嫌じゃないから良いけどさ。


「シュリの剣を折っちゃったからね。 剣はあげたけど婚約はしてないよ」

「あの剣はシュリの剣の数倍は業物ですよっ。 献上品レベルですよっ」

「あんまりつまらない物あげられないしね」

「そうですか。 では、シュリに気持ちは無いと?」

「そうだね。 シュリを抱えてる心の余裕はないね」

「それは残念です。 王子様が現れたと話すので、どうかな? とは思ってました。 まぁ、あの子は夢見がちな処があるので私から話しておきますね。 ここから北に半時間ほどの所にキャンプがあるのですが、立ち寄って行きませんか? シュリもいるかもしれないですし食事でも?」

「今日は遠慮しとく。 そんなに時間ないしね」

「そうですか。 では、お気をつけて」

「ありがと」


「ユフィさん、私にも何か下さい(小声で)。 痛っ」


 デコピンの刑に処す。


「がめついわっ」


 シュリと同じ剣を取り出して握らせ、ほっぺに軽く口を付ける。


「あげるから、死なないでね」

「はい」

「じゃ、またねっ」

 

 呆けたミサを置いてまた走り出す。

 シュリと同じ剣を渡す事で誤解が薄れたらいいなっ。

 その後二度国境警備に遭遇するけど、お姉様がくれた身分証のお陰で問題はない。



 出発してもうすぐ二時間。

 クンクン。 焼け焦げた匂いがする。

 匂いの元には、焼けた荷馬車に複数の死体。

 死体は複数の男女で全員が痩せ細っていて、荷物はなく、魔法による殺害で女性には嬲られた跡も見られる。

 許せない。

 許したくはないけど忘れるしかない。

 ごめんね。

 弔ってからまた走り始める。

 もうすぐ国境の川と村が見えてくるはず。

 

 はぁ。



 予定通りに川が見えてきたけど村らしい物は見当たらない。

 ちょっとズレたかな? 戦闘の被害で無くなってる可能性もあるしね。


 大雑把サーチ……リリース。

 だって大雑把にしないと頭痛くなるから。

 精密サーチしたら虫まで判るかもしれないけど、きっと死ぬ。 ほんとに死ぬ。

 そしてこの調整はなかなかに厳しいのだ。

 

 んーーー、近くには何もないけど走って十分ほどの所に大きな魔力反応があるね。



 川から離れて平原の道? 人が通って草が薄くなっているとこを走るけど、そろそろかな?

 スピードを落としてのんびりモードに。

 遮蔽物がない場所だから隠密モードは難しい。

 軍や騎士なら魔法での隠匿も気付かれるし、友好的に出来るならそれが一番だからね。


 見えてきたのは簡易の柵に見張り台と軍人。

 ボクの接近に反応は見せるけど、大きな動きはなくてそのまま門の所までいける。

 

「こんにちはー」 

「こんにちは。 何か用かな?」


 ほう、友好的。


「すいません、冒険者なのですが迷子になってしまって? 道を教えていただけませんか?」 

「それは大変だな。 何処まで行くんだ?」

「南のジャローダに向かってます」


 これは、お姉様の入れ知恵。

 「お前はすぐ戦闘になるだろ」

 失礼なっ。


「どっから来たの? もうここはジャローダだよ」

「ファーレンからですが、もうジャローダ? ジュノーかシャルマンの予定だったのですが?」

「東にズレてるよっ。 地図を見せてやるからちょっと待ってろ」


 また東かっ。

 そりゃコーラルの軍人ばっかり会うはずだよ。

 今いるのは東にズレててジュノー、コーラル、シャルマン、ジャローダの四国が国境を接してる場所らしい。

 ジュ、コー、シャルはいんだけどジャローダは東から長細くチンアナゴみたいに伸びてきてる。

 普通の地図くらいは持っててもいいねぇ、自分の場所が分かったら最高なんだけどな。

 

「今はここだな」

「ほんとだ。 ありがとうございました。 ここは簡易なキャンプに見えますけどいつもあるのですか?」

「いや、今だけだなぁ。 ジュノーと、シャルマンが戦争してるのは知ってるか? (頷いて返す) だから警戒の為に出張ってきてんだよ。 ここに町と駐屯地がある。 まぁ二時間くらいだな。 目的地は何処だ?」

「こっち」

「なんだ第二の方かよ。 ここの町からこう行く方がいいな。 ここらには近づかない方がいいぜ。 第二の奴らが集まってピリピリしてるだろうからな」 

「親切にありがとうございました」

「おう、気を付けてな」


 ジャローダには第三まであって向かう? いや、別に向かってはないけどシャルマンの南側は第二帝国。

 サササッ。

 出発と見せかけて踵を返す。

  

「おう、どうした?」

「この地図貰えませんか?」

「高いからやれないなぁ。 売ってならやれるけど、10ゴールドあるか?」

「ファーレン通貨なら(かぼちゃパンツ10枚分か、高くはないね)」

「おう。 ファーレン通貨なら信用あるから大丈夫だぜ」

「ありがとうございます」

「多いぜ」

「貰って下さいっ」

「ガキから貰えるかよっ」

「貰えよっ。 ガキじゃねーからっ」

「へっ。 なら遠慮なく」


 さてと、ならジャローダ見てからシャルマンに入るかなっ。

 兵士のおじさんに手を振って南に向かうけど、少し離れたら声がかかる。


「おーい。 も少しこっち」

「はーい。 ありがとうー」

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