冗談が通じない奴め
「ユフィ様……、もうし…………んっ」
「謝らない」
「はい」
「陛下に力を示せたし、条件はあるけどフェルミナとの時間ももらえた。 結果的には良かったんじゃないかな」
「条件というのは?」
「ごめん。 それはまだ話せないんだ」
「そうですか……、わかりました。 話して頂けるその時をお待ちしております」
フェルミナと昼食を貰うけど、メイドさん達がニヤニヤしてきて落ち着かない。
フェルミナが好きなのは分かったけど、領事館のメイドさんを見習って欲しいもんだよっ。
ノエルさん……、一応目上の人に対して物欲しそうな上目遣いは止めなさい。
今日は宿題を出されている。
ジュノーと他二体を治してこいだってさ。
セラリスとジュノサイザーは自然治癒なら数ヶ月、魔法士を総動員しても数日づつはかかるらしい。
夜にでもやるかな?
倒れてもそのまま寝ちゃえばいいし。
クラス他のパスは繋がってるけどセラリスとは切れてるしチェスターのジュノサイザーとは繋がってないのは何故だろうね?
チェスターは何も話さなかったそうだけど、ジュノサイザーの証言からシャルマンとの繋がりが疑われている。
もし裏切りが手札の一つならかなりの痛手だろうけど、勝てる算段が出来てたはずなのに一気に攻めてこない、手札の一つを失っても撤退はしない……、他にも大きな一手があるって事なのかな……。
ジュノーかジュノサイザーが欲しいと言ったけど却下された。
護りの要は渡せない、成り行きで載ったら控え目にな、との事だ。
失礼だな、領事館を壊したのはボクじゃない。
昼食のデザート中なんだけど、先に終わったフェルミナはボクの腕から離れなくて、ちょこちょこ顔を寄せて来るのだけど、みんなの視線を感じるので居心地が良くない。
今は杏仁豆腐風と戦っているので彼女にたべられている場合じゃないのだけど嫌ではない。
フェルミナの笑顔はいつもより輝いて見えて、行動の結果を肯定された様で嬉しい。
居室に引っ張って行こうとするフェルミナは一緒に付いてくるノエルをまったく気にしないのだけど? 慣れってそこまで? いやいやボクは嫌だよ。
振り向きざまに変な顔をしてるノエルのおでこを小突いて扉を閉めてやる。
扉を閉めると直ぐにフェルミナは唇を重ねてきて
、深く重ねられる唇に胸が高鳴り自分の気持ちを強く意識させられてしまう。
求められるままに受け入れずにやり返すと、きょとんと惚ける顔はいつもより幼い少女みたいでかわいいくて愛らしい。
………………
「さてと、お仕事いかなきゃだね」
「嫌です。 傍にいて頂きたいたいです」
「かわいいね、フェルミナ。 今日はいかなきゃ。 また魔力切れになったら帰ってくるからさ」
「わかりました。 お待ちしております」
唇を合わせて居室から出ると扉の前でむくれている娘がいたのでほっぺを潰すと睨みながら待合室にエストアが来ていると教えてくれる。
「よっ。 どしたの?」
「ユフィが王太子ぶっ倒しちゃったからね、仕事がなくなったのよ」
「良かったねぇ」
「良くない」
「好みだった? 顔は良かったから残念だねぇ。 でも第二王子のがよさげじゃない?」
「どうだろね。 第二王子は知らないけど、私には優しかったわよ」
「そーなのー、ふーん、へー、ほー」
「な、なによぅ?」
「べっつにぃー」
「私はユフィみたいにフラフラしてないのっ。 私のほっぺにスリスリしてたのも知ってんだからね、他にも触ってないでしょうね?」
「触ってねーしっ」
「目を見てはなせ、このエロ娘っ。 タキナに言い付けてやるんだからっ」
「意地悪いぞー。 ならクラスのパス返さないんだからねー。 ぷっぷっぷー」
「こらっ。 それはダメよっ、返しなさいっ」
「やだぷー。 さっ、いくぞクラス。 お前の力をセカイに示せー」
「ダメだからっ。 絶対にダメだからっ。 国王陛下から怒られるからっ」
キッシッシッシッ。
繋がったままにしとこっと。
「ジュノーはあのまま? セラリスとジュノサイザーは、どこあんの?」
「その為に待ってたのよっ。 ジュノーは領事館に倒れたまんま。 セラリスとジュノサイザーもよっ。 一応部品は集めてあるけど、その方が良いんだよね?」
「ありがと。 頭だけからだったら魔力足りないと思うからねー。 ならセラリス達からいこっか。 倒れたら連れて帰ってねー」
「はいはい。 よろしくね」
「エストア遅いー」
「ユフィが速いのよっ」
一分かからず着いたよ、同じ敷地内だしね。
エストアはその倍。
広い場所に二体分の部品がだいたい体の形に置いてある。
自然治癒も進んでいるんだろうけど、どちらも一刀両断されてるから軽い傷ではない。
「頑張ったね、セラリス」
返事はない。
パスが切れてるからかな?
魔力収束、構成陣を展開して指をならす。
「お願い癒やしの妖精さん。 ヒールスプライト……リリース」
セラリスとジュノサイザーの周りを妖精達が舞い癒やしの粉を振りまいて二体が光に包まれる。
セラリス? パスが繋がらない、返事も無い。
隣のエストアに視線を送る。
「大丈夫よ、スリープさせられてるだけ。 持っていかれたら大変でしょ?」
「そっか、良かった。 じゃあ、次行くよっと」
「きゃっ、何よっ」
エストアをお姫様抱っこして走り出す。
へへへ、良い匂いだし、柔らかい。
「エストア遅いもん」
「顔が緩んでるわよ、手を動かすのは止めなさい」
「ほーい」
ジュノーの傍まで駆け抜けて彼女を降ろす。
降ろし際に頬ずりするのを忘れてはいけない。
いてっ。
「止めなさいっ。 速いわね。 おまけになんで誰も気が付かないかなぁ」
「ボクだからねぇ」
いてっ。
目を閉じて唇を出してみたのだけど、またしてもチョップが返ってくる。
「冗談が通じない奴め」
「十割以上本気よね? ほんとタキナも大変」
「エストアが本気にならないから冗談だよ」
「本気になる人がいるから言ってんの」
「エストアがかわいいのが悪い」
いてっ。
「誰だっ」
遊んでたらやっと警備に気付かれた。
ちゃんと見てないとジュノー奪われちゃうぜ、ボクに。
ごめんねジュノー、こんな姿にしちゃって。
綺麗な細身の体の胸には大きな穴が空いてしまっている。
構成陣展開、ヒールスプライト……リリース。
うっ、気持ち悪い。
ヒールスプライト解除っ。
魔力ほとんど残ってたはずなのに。
ダメ……、意識保てない。




