イライラするしっ
「国外退去だそうだ」
「え? 何で……」
「そのままだ。 この国から出ていけ、だと」
「今? 納得できないよっ。 あれだけの力を示したボクに出ていけと?」
「抗議はした。 気持ちはわかるけど決定事項だ。 残念だけど面白くない奴はいるだろうし、どんな伝わり方をしたかわからんけどフェルミナ殿下との恋仲まで伝わってる。 強いだけの平民が相手じゃ簡単には受け入れてもらえないわな」
「フェルミナはこの事は?」
「知ってるはずだ」
「そっか……」
背すじがザワザワする。
嫌な感じ。
目に涙が滲む。
「分かった。 お姉様、今までありがとうございました。 今日からただの冒険者に戻るよ」
「……わかった。 で、どうする気だよ?」
「とりあえず国王に話を聞いて考える。 もし良い返事が貰えなかったらシャルマンに交渉に行く」
「ユフィの好きな様にしたらいいさ。 自分の大切な物だけ見てりゃ良い。 けど出来たらあたし達の敵にはならない様にしろよな」
「頑張るよ。 ボクが敵になったら逃げてね」
「ぬかせ。 クラスと一緒なら負けないね」
「ユフィちゃん。 軍議の内容だけ聞いてから行きなさい」
「うん。 お願い」
軍議の内容は戦況報告と防衛の場合の配置の確認。
戦況は膠着状態で魔装機の損害は無く、特に目新しい情報も無い。
一緒に来たワイバーン達は、一体はファーレンとの連絡役、残りは情報収集で飛び回ってるそうだ。
ワイバーンの操者達は会った事ないんだよね。
普段は一般区の詰所の方にいるらしい。
三女のエストアは警護任務中で不在。
最後になるかもだから、会っておきたかったなぁ。
防衛時の配置に関してはお姉様達が明らかに蚊帳の外になってる。
何もなかったら良いけど、これじゃフェルミナを護ってもらえない。
「ジュノーの事に言う事はないけど、姉様達はもっと王族に近づけない? これじゃ、何かあっても間に合わない」
「それも決定事項だ」
「そっか。そこだけはフェルミナに頼んでみるね。 じゃ、行ってくる」
「はい、いってらっしゃい。 困ったら、こそっと帰っていらっしゃいね」
「ユフィ、負けんなよ」
ファーレンの魔動船の応接室を後にする……。様に見せかけて戻る。
「ねぇ……、国王って何処にいるの?」
「…………今ならネスタフェの領事館に滞在してるはずだけどな。 入れるか?」
「わかんない。 ファーレンの王城みたいに大きい方が楽勝だけどねぇ」
「楽勝なのかよ」
「気を付けていくのよー」
「うん、ありがとう」
魔動船はネスタフェの城壁に沿う様に停められていてピッタリ完璧な係留位置なんだけど、どうやってやるんだろ?
カメラでもあんの?
領事館は町の真ん中辺り。
城が無くても城壁って言うのかな?
ネスタフェも中世の町らしく周りを城壁で囲って作られていてほぼ円形。
この壁って凄いよねー。
土壁で良かったら魔法でなんとかなるけどレンガ積みだもんね。
もう規模が意味わかんない。
巨人でも埋まってんのかね?
服装は一応、町人風にしてみたけどフードまで被るから冒険者の格好でも変わらないね。
第二騎士団の騎士服もジュノーの騎士服着てく訳にもいかないし。
騎士服ですっと通してもらうのも有りかな?
戦争の最中だけど町の様子は普通で活気がある。
町並みもお店もファーレンとそこまで違いは無いかなぁ。
並んでる露店は確かに麺類が豊富そう、ラーメンみたいなのもあるね。
食べたいなー。
お肉の串焼きを買って食べながら歩く。
うんうん、スパイシーな味付けで美味しい。
もう少しゆっくり見たいとこだけど仕方ない。
目立っても困るから騎士の目は避けていかないとだし。
領事館に近づくにつれ町並みが上品になり裕福そうな人達が増えてきて、お店の見た目も高級感のある物に代わっていく。
ただ……、人間を紐で繋いで歩いてる奴がいる。
ファーレンでは、さすがにそれは無い。
怒りが湧いてくる。殴り飛ばしてやりたい。
くそっ、今は何も出来ない。
フェルミナは知ってるのかな……。
領事館は三階建ての貴族の館な見た目。
こそっと入る?いや、全員を戦闘不能にするか?
イライラするし。
町中で魔装機は出さないとは思うけどさ。
メイン通りなら歩行くらいなら問題ないだろうけど、戦闘したら怪獣大決戦になっちゃうねぇ。
フフフ。




