この考えなしっ
もう夕方だよね。
あーーー、そーいえば予定あったんだったぁー。
フェルミナ、セラまたねー。
こそっとテントの扉を開くと応接室があって、更に次の扉を…………。あー、やっぱり止めとこ。
うんうん。
なんか扉の前に怖い顔の人が立ってるからねぇー。
開こうとした扉を閉じ……れなかった。
ボクが閉めようとした扉に足が挿まれる。
「あのー、お客様。 お嬢様はお休み中ですので足をどけて頂いてもよろしいでしょうかぁ?」
「あぁ? いつからここのメイドになったんだテメェはっ?」
「お客様? 人違いではございませんかぁ? 何を仰っているのかよく…………。ひたいひたいれふぅ。 ひゃひゃたふへへー」
「ユフィちゃん、ダメですよぉ」
「入んぞこらっ」
「ろうろ、おへぇはま」
扉の外にいたのは対照的な印象の二人の美人騎士。
赤の髪を短くハンサムショートにまとめて鋭い目つきのアシェ・クラスフィード・フィーネお姉様。
もう一人は同じ赤の髪を腰ほどまで伸ばして今は三つ編みにして前に垂らしてる、ちょい垂れ目のサシャ・クラスフィード・ファルナ姉様。
二人は同じ白を基本にして赤の挿し色の騎士服で、今日は他所行きの飾りが豪勢なタイプだね。
クラスフィード家にはもう一人三女のエストアがいるんだけど姿が見えない。
三人共に魔装機クラスドラゴンの操者。
「とりあえず茶」
「はい……」
お茶の用意はわからないので、アイテムボックスから三人分のセットを準備してテーブルにならべて、アシェの視線の指示のままにカーペットに正座する。
「ユフィちゃんありがとぅ」
「…………。 で、なんでテメェは葉っぱ色の服着てんだ? それジュノーロイヤルナイツのだろがよっ。 あぁん? うちの騎士服は赤だろがっ。 勝手に先に行って問題ばっかり起こしやがってこのバカ娘っ」
「すいませんお姉様……」
「複数の兵士を殺害の上に魔装機を奪って乱闘騒ぎ。 挙げ句の果てに近衛騎士長と決闘って何しとんじゃいっ」
「はい……、返す言葉もございません。 みんな話を聞いてくれなくて……」
「だぁかぁらっ、ちゃんとした服を着用しろっつってんだよっ。 礼服じゃなくても騎士服や身分に合った服をきてりゃそんな事になんねーの」
「はい、申し訳ございませんでした」
「ユフィちゃん。 お姉様は騎士服を着てないとすぐ喧嘩になるのよぉー」
「今はあたしの話じゃないっ。 で、なんでそんな事になんだよっ?」
「実は……。 …………。 …………」
「はぁ。 ……っとにもってんな。 どこがどうなったらそんな事になんだよっ」
「ねぇ、ユフィちゃん。 フェルミナ王女に求婚したってゆーのは?」
「は? 求婚も告白もしてないよぅ?」
「?」
「フェルミナが絶対に逃げないってゆーから、ならフェルミナとジュノーを護るよって言っただけ」
「国と王女を護るって、他にどんな意味があるんだよっ? この考えなしっ」
「すいません……」
「…………」
「でねぇ、これからの話なんだけどぉー。 …………。 …………」
この後もボクは自由だって。
ビッテンフェルト家の人間だけど魔装機もないし食客だから傭兵扱い。
力は示したけど、意見の隔たりは埋まる訳もなく判断はつかないまま。
信用のない傭兵に魔装機どころか役割など与えられる訳がない。
ファーレンからの応援はアシェお姉様達計九名。
クラスドラゴン三機にワイバーン六機。
ワイバーン? ワイバーンだって竜種の端くれ、知性をもち契約できる個体も少なくないらしい。
戦闘能力は低いけど速さはあるから偵察や連絡が主な役割なんだと。
「最初から覚悟はしとけよ。 あたし達はあくまで防衛の為の応援だからなっ。 ジュノーが負けると判断したら直ぐに撤退する。 クラスドラゴンは絶対に渡せねえからな」
「ユフィちゃんは自由にしたらいいらしぃよぅー。 でもタキナを泣かせちゃ「めっ」だからねー」




