ケラケラケラケラ。 詐欺じゃん
どうしよう?
フェルミナがついに泣き出してしまう。
なかなか泣き止まない挙げ句に口づけまで求めてくる。
人前でそれは止めなさい。
セラと付添は呆けて動きがない。
助けてよぅ。 なだめてよぅ。
仕事しろよぅ。
「クククククッ。 いやー、これは面白い物が見れました」
チェスター? はぁ?!
なんで繋がったままなんだよぅ?
切っとけよぉー。
「仕合は一時間後としましょう。 貴女の愛と私の正義とどちらが上か楽しみだ。 では、失礼する」
ちょっと何いってんだ?
「ユフィ様、私の為にありがとうございます。 私はもうユフィ様のお側から離れません」
話がおかしな方に転がってないか?
言ってる事がよく分からない。
「ほらほら、邪魔しないの」
なんか引っ付いてくるフェルミナは置いといて、やるからには勝たないと意味がない。
武器は人間が使える物はだいたい準備されてるのね。
パイルバンカー? 使いたい。
でも、パイルバンカーは射出機構からパイル自体まで重たいんだわっ。
メインはもちろん日本刀的な細身の曲剣。
ふむ、鞘もあるんだ……有り難い。
いや、日本刀は腰差しにして、小太刀二刀流にしよう。
銃火器はいらない。
ベイルは欲しいけど重量とエネルギー運用の問題で断念。
NH型のベイルは内蔵兵器や武器格納、エネルギータンクまで多用途だからね
装甲もほぼ全無しにして両腕だけはソードストッパーにしとこうか。
装備、装甲の変更、チューニングは開始寸前に行う。
相手に対策を立てられちゃうからなんだって。
エネルギーは全力でも数日は保つから枯渇は狙えないらしい。
「さっ、フェルミナ降りようか」
「私もご一緒が良いです」
「だぁめっ。 武人として真っ向から当たりたいからね」
「わかりました。 ご武運を……」
ゆっくりと唇を重ねてから降りていく後ろ姿に寂しさを覚えてしまう。
早く終わらせて帰ったらタキナによしよしして貰おう。
「ほらほらセラもよ」
「いえ、このまま見届けます」
「死ぬかもしれないよ?」
「承知の上でお願い致します」
その目は曇りなく純粋。出来るなら一生そのままで曇らないでいて欲しい。
「わかった。 ボクとチェスターの戦い方、動きの流れ、太刀筋、その全て見逃さない様にね」
「はいっ、ありがとうございます」
「セラリス。 セカンドシートだけ脱出は可能?」
「可能です」
「指示は同じ、人命第一。貴方もね」
「わかりました」
「ねぇ、セラ。 一般的な事だけでいいからジュノーの事教えてよ」
「ジュノーの事? …………。 …………」
「あなた何も知らずに、何しにきたのよ? せめて地理ぐらいは調べて来なさいよ」
「急いで着たからねぇ」
「で、このお店のお菓子が有名で……。 ここのレストランはいっつも並んでるんだけど……。 ネスタフェは昨日着いたとこだからよく知らないの」
「名物とかないの? ジュノーまんじゅうとか?」
「なによそれ? ジュノーとコーラルは穀倉地帯で有名だからパンや麺類は種類が豊富かもしれないわね」
「マスター時間です」
「ありがとう」
「装備、装甲変更、チューニング完了しました」
「出し惜しみなしっ、フルパワーでいくよっ」
時間と同時に互いの駆動音が響き渡る。
セラリスの駆動音はさっきよりも甲高くうるさい。
「ジュノサイザーのチューニング変更を確認しました。 こちらに合わせています」
「上等っ」
友軍機同士互いのデータはあるから駆動音だけでもチューニングが判明してしまう。
見た目に変更は見えないけど防壁に回す魔力を動力に割り振ってくる。
「マスター。 ジュノサイザーとの勝負を五分と申し上げましたが訂正します。 チェスター機との勝率は二割です」
「ケラケラケラ。 詐欺じゃん」
「前提変更です」
「上等っ!」
「準備は良いかね?」
「いつでもオッケー」
「では、始めよう」
対峙して抜剣したチェスター機からは目に見えるほどの殺気が立ち昇る。




