思春期特有の病だね……
「では兄様また来ますね」
「ああ」
「姉様もまた」
「うん。 またねっ」
ふんふふんっ。
タキナぁ、タキナぁ、タキナはどっこだぁー。
講義室にはいない。
食堂にもラウンジにもいない?
「ユフィ様ぁー」
「ごきげんよう。 フェルミナ今日も綺麗だね」
ラウンジのテーブルにフェルミナと三人娘を発見する。
今日の彼女もとても美しい。
丁寧な縦巻きロールの薄紫色の髪がキラキラ輝いて見えるほど。
何か光学系魔法が…………ないね。
むぅ、女子力の違いを感じるぞ。
「ユフィ様ごきげんよう」
「ごきげんよう。 三人共元気?」
「はいっ」
「ユフィ様、ご一緒しませんか?」
「じゃあ、少しおじゃましようかな」
「はいっ、こちらにどうぞ」
おおぅ、何故ぎゅうぎゅうなんだ?
フェルミナと三人の真ん中に挟まれて座ったけど、両側から圧力がかかってお茶どころじゃないのだけど?
フェルミナはすらっと細身だから大き過ぎなくてちょっと安心する。
「フェルミナさん。 ちょっと近すぎやしませんか?」
「そうですか? 私はもっと近くてもよろしいですわよ」
「そうですか……」
近いよっ、べったりだよ。
もっと近いって何だよ?
姉様の話がよぎってどうしても意識しちゃうよ。
「? どうかなさいましたか?」
「なんでもないよ。 ホント綺麗だなって見惚れてただけ」
「そそ、そうでしたか。 気遣いが足りなくて申し訳ございません。 さぁ、ぜひ私の部屋に参りましょう」
「フェルミナ様、私達もご一緒しても?」
「もちろんですとも。 ご一緒にユフィ様に優しくしていただきましょう」
言ってる事が解るけど、分からない。
真っ昼間から何を言ってるんだ?
うん、あれだね。
思春期特有の病だね。
人の事言えないけどさっ。
ボクが優しくされたいのだけれど?
「いや、行かないよ。 四人は仲いいね?」
「ユフィ様のお陰です。 以前のフェルミナ様は怖くて、お話などとても出来ませんでしたから。 今では、それはもう優しくて優しくて」
頬を染める彼女達が幸せそうで何よりだね。
「もう、恥ずかしいので仰っしゃらないで下さいまし」
「ふふふ、良かったね。 そろそろいくよ。 タキナとアイシャ見てない?」
「お見かけしておりませんが、もう行ってしまわれるのですか?」
「うん、ごめん。 またね」
影がさすフェルミナの頬に口づけ……しようとしたボクの唇が奪われる。
「も、申し訳ありません……」
顔を朱らめて、もの言いたげな瞳でボクを見て目を逸らす彼女がいじらしい。
「いいよ……フェルミナ」
顔を引きあげて目を合わせて、もう一度長めに唇を合わせてから顔を離す。
惚けた彼女は年齢通りの顔でとてもかわいらしい。
三人とも唇を合わせてから席を立つ。
タキナもう帰ったかなぁー。
高等部にも顔見知りが増えたし、食堂や廊下でも挨拶したり雑談を交わしながら校舎を出て庭園を歩く。
「お姉様ぁーーーー」
庭園のガゼボではお茶会の最中みたいだね。
アレクシアがこちらに駆け寄ろうとして躓いて姿勢を崩す。
倒れ込む前に傍に移動して彼女の身体を抱きかかえる。
「こら。 走っちゃダメって言ったでしょ」
「ごめんなさい、お姉様」
「気を付けてね。 お茶会?」
「はい。 初等部ばかりですから、お姉様もいかがですか?」
残念ながら攻略対象も少なくないし、アレクシアの恋路の邪魔しちゃいけないからね。
「いや、遠慮しとくよ」
「お姉様はいつもそう言ってっ……」
ぷっくり膨らむ頬を指先で潰していく。
ふにゃふにゃ柔らかくて楽しい。
「ボクがいるとゆっくり出来ない人もいるから仕方ないよ」
「ですけど、もっとお姉様と過ごしたいです」
「そうだね。 今度お茶しようか? アレクシアと二人で」
「絶対ですよ」
「うん。 わかってる」
放課後は良く人に会うなぁ。
そっか乙女ゲームのセカイだから、放課後は歩き回って好感度あげないとだもんね。




