妹は寂しいのです
兄様の部屋に戻ったら姉様の太ももに座って昼食となる。
姉様の食べさせ方はうまい。
こぼす事もないし、話の邪魔になる事もない。
ボクの事だけ考えてるのがよくわかる。
へへへ。
頭を預けると姉様は優しく撫でてくれる。
「兄様。 多重魔法ってコツとかあります?」
「お前できるだろ?」
「できない子にアドバイスしたいんですぅ」
「ああ……。 だが難しいな。 出来る者には当たり前。 出来ない者は何を言ってるのか分からない物だからな。 自分で掴むしかないだろう」
「そこをなんとかっ」
「ふむ。 なら、魔法具の使用がいいだろうな。 使う魔法が決まっている組み合わせならば、一つの構成式を魔法具に任せて魔力を供給させれば可能ではないか?」
良い。思い付かなかった。
身体強化をメインにしつつ、追加の推進力は短時間でいいから魔法具で補えばいける。
「兄様。 最高です。 後、今の課題は高速移動なのですが、風と爆発以外の方法は思いつきますか?」
「風と爆発は一般的だな。 あまり思いつかないが、森の中なら魔力の糸を飛ばして引っ張るなんてのはどうだ?」
おおぅ、スパイダーヒーローみたいでかっこいいかも?
「さすが兄様です。 それもいただきます。 進路変更なんかにも使えそうですね」
「フフ。 役に立ちそうなら何よりだ」
キャー。
兄様の微笑み素敵ぃー。
でも、恋じゃなかったんだなぁ。
これが憧れって奴かな?
人の心は難しい。
「ねぇ、ユフィ。 夜は部屋にこれる?」
「今日は難しいです」
「なら明日はどうかな? フェルミナが寂しがってたから、一緒にお泊りとかどう?」
「姉様。 ボクにも責任はあるけどフェルミナの気持ちには応えられない」
「また難しい顔するっ。 フェルミナも卒業したら国に帰っちゃうんだよ?」
「そうかもなんですが」
「フェルミナだって例外じゃないんだよ。 国に帰ったら直ぐにでも好きでもない男の処に嫁がないといけなくなるかもしれない。 短い学院生活の素敵な思い出があれば、それだけでも救いになると思うよ」
「姉様……、重いよ……」
「仕方ないじゃない。 それが責務なんだから」
責務かぁ。
解らない。難しいよ。
やだなぁ。
「姉様。 少し横になりませんか?」
「食べて直ぐは感心しないなぁ」
「妹は寂しいのです」
「はいはい甘えん坊さんっ」
「兄様もですよ」
「ああ」
兄様をまくらにして、姉様に包まれて目を閉じる。
良い匂い。
少しでも嫌な事から逃げたい。
考えたくない。




