なら、あたしが……
いていていていて。
後ろからアイシャのダダッ娘パンチがボクを襲う。
さすがアイシャ。 発見してから攻撃まで一瞬だね。
勘のいいガキは嫌いだよ。
名残惜しいけどそっとタキナを降ろしてもう一度口づける。
獣の唸り声が聞こえる気がするけど、きっと気の所為だろう。
「えっち」
より目つきが悪いアイシャの唇に人差し指で蓋しておく。
ニシシ。
!!
くわえるな!
「みんな知っての通り加速はできるけど、止まるのが難しい。 まぁ、加速も姿勢制御が難しいんだけどね。 でもペアならこんな事もできるんじゃないかなって? 急加速できない人はその練習を。 できる人は止まる、受け止める練習をしてくれるかな? 後、出来る人も途中で方向を変えれる様になるともっといいよね。 出来て損は無いし、生存率が段ちだから出来る様になってね。 あっ、みんな防御強化が一番だからね。 ぜったい疎かにしないでね安全第一だよ」
みんなが散らばっていい感じに別れていく。
キョロキョロしてる子にはアイシャとタキナに向かってもらう。
タキナが話しかけた男子は真っ赤っ赤になっちゃった。
ケラケラケラ。
下心出したら殺すからねぇ。
冗談じゃないからねぇ。
急加速できない人は10人いないくらいかな?
飛ばされた後で錐揉みになったり、そのまま地面に突っ込んだり。
これは見とかないと危ないね。
着地の衝撃をやわらげたり、地面を柔らかくしたりして補助しておく。
出来る感じがしないのが三人っと。
一人は制御が雑。二人は多重制御に手こずってるか。
雑はいいとして多重制御って練習あるのかな?
「マジナせんせー……………」
「ケンハマカーせんせー………………」
マジナ先生は初めから得意で、ケンハマカー先生は使っているうちに出来るようになったけど得意じゃなくて四重、五重なんてとんでもないらしい。
タキナは自然に出来た派。 アイシャは良くわかんないって。
練習あるのみだね。 パウラにも引き継いどこ。
はい終了。
先生方と打ち合わせをしてからタキナと兄様の所に行きたいんですけど。
アイシャさん?
アイシャがタキナの腕にしがみついて離れない。
引っ張ってもギュッてしてへの字口だ。
はぁ。
「タキナ任せていい?」
「はい。 お任せください」
タキナに口づけして、しがみついたまま顔を出してくるアイシャの頬に口づける。
ふふふ。
「ユフィちゃんいらっしゃーい」
「ありがとシーズ」
「兄様ごきげんよう」
「今日は大丈夫そうだな」
「はい。 ありがとうございます。 先にお風呂かりますね?」
「ああ」
はぁ、疲れたぁ。
一人のお風呂もいいけど、広さが逆に寂しさを演出してくる。
人を好きになる事は素敵で幸せ。
でも当たり前になると今まで素敵だった事が物足りなくなる。
一人が寂しくなる。
青春なんて知りたくなかった。……なんてセリフが頭を巡る。
「ユフィはっけぇん」
「姉様」
「またそんな顔して。 こっちおいで」
姉様の傍によって頭を預ける。
ボクを撫でる手はいつも優しくて心地いい。
「姉様、部屋にお風呂あるじゃないですか?」
「ユフィ、あたしを差し置いていつもお兄様の所にいるらしいじゃない? 姉として行かない訳にはいかないよねぇ」
「ふふふ。 ごめんなさい」
「いいのよー」
「でも、姉様の生活が変わっちゃう。 人付き合いとか……」
「そんなの今更じゃない? どうせほとんどの人は卒業したら合う事もなくなる。 いつもひっついてくるフェルミナだってそう。 卒業したら国に帰っちゃう。 あの娘はあたしとユフィどっちがいいんだろうね? ユフィなにしたの?」
「いや。 耳を弄んだだけなんですが……」
「それだけ?」
「はい」
フェルミナはチョロインだった。
ささやきながらちょっと耳を弄んだだけで、ボクを求めてきた。
もう罪悪感しかない。
「女たらしだね。 あたしにもしてみて」
「ごめんなさい。 嫌です」
「なら、あたしが……」
ぷぅぅぅぅぅ。




