もう、無しでは生きて行けない
「兄様に会いにきたの? ちゃんと会話してくれた?」
「お兄様ならそう言って下さい。 どの様な方なのか気になって会っておこうと思って来てしまいました。 挨拶しても返事がいただけず、ユフィの側付と伝えるまでは一切無反応でしたね」
「ごめん。 言ってなかったね。 どうだった?」
「容姿、声、話し方、ユフィに好きと言われるだけの事はあると感じました。 御兄弟の方のみに対しては強い愛情を持っておられる様で安心しましたけど、それ以外の「人」と言う物に対しては関心がない様ですね」
「そっか、良かった。 全否定されなくて。 ボクの自慢の兄様だからね」
人が疎らになってきてようやく落ち着ける。
人が多い時は視線が刺さりまくって煩わしい。
もうタキナにみんな釘付けだよぅ。
「ねっ、行こっ。 校舎案内するよっ」
「はい、お願いしますっ」
講義中で人気が少なくなった廊下を二人で手を繋ぎ合って歩く。
他の教師に見られても別に何も言われないし気にならないし。
講義室の横を通る時は気配遮断しとかないとねっ。
隣にいる彼女がかわいい。
かわいくて仕方ない。
アイドルみたいに整った顔、貴族の様に上品な所作、ちょっと小さめの制服。
目が合って首をかしげる仕草だけでもクラっとする。
「タキナ……ちょっと……こっち」
「はい? ……んっ。 ん……ダメ……です……よ」
柱の影に入って顔を引き寄せ頬を撫で唇を重ねる。
止まらない。
朱く染まって視線を逸らす彼女が魅力的でたまらない。
「やだ……。 我慢できない……」
「…………もぅ」
「ユフィ……いやらしいです……」
「だってタキナが魅力的だから……」
「好き」
「はい」
………………
「町に行こうよぅ」
「別に必要な物はないと思いますが?」
「ちぃーがぁーうー。 制服デート。 制服のタキナと行く事に価値があるのぉー」
「そうなのですか?」
「そーなのー。 タキナはメイド服ばっかりなんだからぁ。 もうタキナの制服姿無しじゃ生きて行けない」
「大げさですね」
「髪、上げてくれる? お揃いでっ」
「はいっ」
エヘヘ。
ベンチに座って後ろを向く。
髪を結ってくれるだけでもすごい幸せ。
学院の貴族区側は北側なので、南側の一般区の門から町に出る。
思えばやりたい放題だけど、その気になれば壁越えもできるから関係ないし、結界を気にしなければタキナにもできる。
生徒の数は貴族の方が多いし、一般生徒は寮住まいが多いから人は疎ら。
高等部の三人の目に付いて大きく手をふってくる。
「ユフィ様ぁー。 どちらにいかれるのですか?」
「ちょっと町に出ようかと思ってさぁー。 みんな元気?」
「ユフィ様になかなかお会いできなくて寂しいです」(すいません、やり過ぎました。反省致しております)
「町に? でしたら是非ご一緒に?」
「今日はデートだからダメぇ。 あっ、何か新しい物とかある?」
「ここのお店はいかがですか? ………………。 ご一緒できないのは残念ですがお気をつけてどうぞ」
「ありがと。 またね」
三人と軽く頬を合わせて別れるけど、タキナの視線が気になる。
別に嫌そうとか拗ねるとかじゃなくて、微笑みで読み取るのがちょっと難しい。
制服で手をつなぎ合ってタキナとデート
エヘヘ。
テンション上がるー。
かわいくて、かわいくて、チューって。
もひとつチューって。
彼女も人目に付いてない時は抵抗しないから思う存分堪能するのだっ。
「先ずは制服買いに行くよっ」
「さすがに買わなくても良いと思いますよ」
「ダメぇー。 胸キツイし、スカートが短い(あぁ、言ってるボクの心にダメージ入る)。 サービスされるのはボクだけで良いのっ、男子共にしてやる必要はないっ」
「そうではなく、ビッテンフェルト家の者として、メイド服で問題ないですし?」
「だぁめっ! ボクには、制服姿のタキナも必要なのー。 制服は普段使いでだって良いんだからっ」
「はぁ……わかりました」
制服を扱うお店は一般区にもあるけど、お客が基本的に貴族なので、高級ブティックみたいな感じだよ。
ブラウスとスカートは注文で10日後以後で引き取り。
後はかわいい小物がほしいなぁー。
「これ、制服に合わせたらどうかなぁ?」
「少し派手ではないですか? こっちの方が似合いますよ」
「うーっし、お揃いで買お買おっ」
「はい。 ありがとうございます」
「これタキナにいーよー」
「少し高級感がありすぎますね」
「大丈夫。 タキナの方が魅力的だってぇ」
「ありがとうございます」
「タキナぁ……」
「ん……」
「幸せ」
「はい……」