この想いも本物だよ……
「明るいうちに帰ろっか?」
「はい」
楽しかった。
収穫もいっぱいあったしね。
かわいい物もたくさんあったし、ミネルバだけじゃなくて、三人娘やメイド姉様達にもお土産を買ったよ。
みんなにおみやげを選ぶタキナも見ていて面白くてかわいい。
そして、タキナとお揃いの物もたくさん買った。
幸せなのに不安を感じて、握る手に力が入って彼女を引き寄せる。
顔を向けるボクに、彼女の唇が合わさる。
幸せ。
………………
彼女と一緒にお土産をみんなに配って回る。
見立ては間違いなくて、タキナが選んだプレゼントって言ったらみんな大喜び。
みんな仲がいいからねっ。
「みんなかわいいんだから、他の服も着たらいいのにぃ」
「はぁ? 僕らはメイドだぜ。 こんなひらひらした服なんて着れっかよ」
「似合ってるし、ミネルバも喜ぶと思うけどなぁ」
メイド服もひらひらに分類されないか?
………………
「おかえり、ミネルバぁ」
帰宅するミネルバを抱きついて迎える。
「今日は、ごめんね。 ほんとうにありがとう」
「おっ、気にすんな」
「お土産がねぇ、いっぱいあるんだぁ。 みんなのぶんもタキナが選んだからねぇ」
「ねぇねぇ、これ食べて食べて」
「おっ、アイスじゃん。 …………まっず。 味が薄いし水っぽい」
「だよねぇー。 アイス食べたい。 ある?」
「アイスは作り方わかんなくてさー……」
「うっし、ユリちゃんにご教示いたそうではないか」
「ありがとっ」
………………
「明日からタキナとダンジョンに潜ろうかと思うんだけどいいかな?」
「いいんじゃない。 泊まりになる?」
「タキナの疲労も考えて、何もなかったら日帰りの予定なんだけど、魔動船と連絡用の従魔とかある?」
「さすがに貸せないわ。 自由に動かせるものじゃないからさっ。 連絡は魔道具で足りてるしねぇー」
「魔装機って売ってるもの?」
「売っとるかいっ。 うちのやつと王家のやつだけだよっ。 魔動船ならティファ様は?」
「やだよ。 絶対ついてくるじゃん」
魔装機を手に入れる条件は、大型のインテリジェンスモンスターと契約する事。
これはなかなかに厳しい。
ボクでもドラゴンくらいしか思いつかないし、ドラゴン全てに知性がある訳じゃないからね。
「ボクが持ってる予定の『wrath』の手がかりはある?」
「具体的には無いねー。 七大罪シリーズは女神が持ってるはずだから、ユフィーリアに力を与えた女神カラミティが有力かなぁ?」
………………
夕食後は、みんなでお土産のお着替えパーティ。
タキナ、センスいいねぇ。 サイズもピッタリだよぅ。
ミネルバ達のお風呂が終わってから、タキナと二人で入浴させてもらう。
彼女達がいたらタキナは入らないからね。
ボクが洗ってあげるんだからっ。
洗われ慣れてない彼女は、照れてかわいいのだっ。
ボクも慣れてきたつもりだったのに、昨日からなんか気恥ずかしい。
裸で体が触れ合うから余計にね。
彼女と顔が近くなる度に唇を重ねてしまう。
………………
「タキナ、お昼の話なんだけど……」
「はい。 伺います」
ボクとミネルバには前世の記憶が残ってて、同じ国の人間だった事。
このセカイが前世の物語のセカイと同じな事。
物語はアレクシアが主人公で、ボクは彼女に意地悪する悪役である事。
そしてミネルバは同じセカイを舞台にした別の物語の主人公である事。
「私も物語の登場人物と言う事ですか?」
「ううん。 メイド姉様達もタキナも出てこないよ。 今日出会ったお店の人達なんかも当然出てこない。 ほとんどの人達は何の縛りもなく普通に生きてる人達だよ」
「では、私とユフィ様の出会いも……。 この気持ちも……、誰かに決められた役割ではないと言う事ですよね?」
「うん。 ボクのこの気持も全て自分の意志だよ」
「良かった。 作られた感情じゃなくて、良かった」
「ボクも、想いも本物だよ。 タキナ……、大好き」
「はい。 ユフィ様、私も大好きです」
「様いらない」
「ユフィ。 大好きです」
「タキナ、かわいっ」
「んっ…………」




