君と一緒に……
コンコン
「どうぞー。」
部屋に来たのは、赤い鎧姿に他所行きの顔でバッチリ決めたミネルバ。
「おはよ、ミネルバ? 朝からどしたのー?」
「おはよ。 ねぇ、ユフィ。 しばらく休んでいいよ。 クリフには昨日伝えておいたから」
「えっ、でも講義が……」
「パウラがいるからあんたいなくても大丈夫。 それにあたしが行くからぁー」
「いいの? だってボク……」
「いいから、休みなさい。 頑張り過ぎだよ。 少しタキナといてやりな」
「ミネルバ……、ありがとう……」
彼女の優しさが心に染みる。
抱かれた鎧越しでも温かい。
ありがと。
「じゃ、行ってくるね」
「うん、行ってらっしゃい」
ミネルバの頬に口づけをする。
不意打ちされた彼女の顔が面白い。
「今日は、部屋くる?」
「やだよっ」
「はいはい。 じゃ、ねっ」
部屋から出ていく彼女の笑顔が素敵でまぶしい。
急に後ろから手を引かれて、振り返りざまにタキナの唇が重なる。
指と指をからめ、目を閉じて身を委ねる。
彼女の甘い感触に頭がくらくらする。
「好きです」
「ボクも、大好き」
………………
「今日は、お買い物行こうか? タキナも着替えてっ」
「はい」
えヘヘ。
今日はピンクのパーティドレス。
タキナには白で合せた。
「これは、私には……。 いえ、ありがとうございます」
「ユフィ様、髪はどうしますか?」
「お揃いで上げていこぅ。 タキナのはしてあげるねっ」
「はい。 お願いします」
銀色の髪がサラサラで気持ちいい。
少し横を編み上げて、後ろで上げてとめる。
ちょっと巻いてみようかなぁ〜。
うんうん。
ちょうーかわいい♪
今日は目立ってもいい。
ローブもフードも要らない!
一般区まで、馬車で送ってもらって、ボクがタキナをエスコートする。
降りた途端に周囲の目は全てボク達に釘付けになる。
ボクとタキナかわいいからぁ。
それに、当然「どこの貴族様だ?」って感じだよねっ。
苦しゅうない、今日は見ても許すっ。
エスコートした手はそのまま離さない。
つなぎ直して町を並んで歩く。
「これ、かわいすぎてヤバくない?」
「ヤバい……ですか?」
「うん、ヤバいヤバい。」
「…………。」
「ふふ。 ヤバいって言うのはね、かわいすぎて死ぬほど危ないとか、美味しすぎて危ないとかそんな感じ」
「かわいくても美味しくても危なくありませんよ?」
「それくらい良いってことっ。 もう、タキナがかわいすぎてヤバいよっ」
「はい。 私もユフィ様がヤバいです」
「ミネルバ様もよくわからない表現で話す事があります。 ユフィ様と同じですね?」
「うん。 その話は夜にするね。 タキナに知ってもらいたい事があるから……」
「はい。 心します」
………………
「へへへ。 タキナは素材が良いから、なんでも良く似合うねぇ」
「ユフィ様だって、良く似合ってますよ」
「おやじぃー、ここにあるもの全部ちょうだいっ」
「コラ、それはいけませんよ」
………………
「ボクがタキナの選ぶから、タキナはミネルバのお土産選んでねぇ」
「はい。 ミネルバ様の物と、ユフィ様の物もしっかり選びますよ。 もう失敗はしません」
「うん」
………………
「姉様たちの分も選んであげてくれる?」
「いいんですか?」
「もちろん。 迷惑もかけてるし、いっぱいお世話してもらってるし」
「目移りしてしまって、選ぶのもたいへんですね」
「一つずつじゃなくてもいいよ?」
「ありがとうございます。 それでもなかなか……」
………………
「新しい氷菓子ですね」
「アイスクリームじゃーん」
「あいすくりーむ?」
「うっはぁー。 これ何味だよぅ、美味しくねー。(ケラケラ) ミネルバのお土産にしよ」
「ケクルの実の味がします」
「砂糖が足りない、砂糖がぁーー」
「そうですね。砂糖は高いですから」
………………
「歩きながら食べるなんて、お行儀良くありません」
「いいからタキナもっ」
「ほら、お口についてますよ」
「ふふんっ」
………………
「これ、かわいいねっ。 タキナに付けたげる」
「はい。 お願いします」
「うんうん、いいねぇ。 かわいっ」
「んっ……。 もぅ……」
………………
「たぁきなぁー」
「はい?」
「あっ、こら」
「フフフ」
「タキナ好きっ」
「……はい」
「んっ……。 もう、こんなところでダメです」
「えへへ。 大好き」
「はい。 大好きです」




