溢れ出る涙が……
部屋を追い出されて、ふらふらと本部を出ていく。
彼女の居場所なら分かってた。
でも、怖くて声をかけられなかった。
行くあてもなく、一般区を歩く。
どんよりとしていた空から落ちた雫は、次第に大粒の雨になってボクを責める。
向く先でたどり着いたのは、忘れられない場所。
あの時のように石に腰掛けて、川の流れを眺める。
無遠慮に近づいてくるバカ共がいる。
以前と同じ何も変わらない。
貧民街なんてそんなもんだね。
「それ以上寄るなら消すよ」
警告はした。
それでもお構い無しに近づいてくる。
ボクの足元から黒の炎竜が湧き出し、全てを食らい尽くす。
ボクだって一生懸命やってるのに。
彼女を愛してるのに。
あの日から強く彼女を求める様になった。
全てが欲しかったから、失いたくないから。
彼女の気持ちなんて考えてなかった。
一方的に彼女を愛してた。
フフフッ。
嫌われて当然。
悪いのは、ボクだね。
ごめんね、タキナ。
ごめんね、…………。
守ってあげられなくて……、ごめん。
もう日暮れかぁ。 学校サボっちゃったなぁ。
明日はどうしようかな。
歩き出した足は自然とギルドの宿舎に向いてる。
コンコン。
「だれ?」
「フリル……」
「ユフィ?」
「もう、ずぶ濡れじゃない。 ……泣いてたの?」
彼女が泣き腫らした瞼にそっと触れる。
「ボク……、ふられ……ちゃ……たよぅ……。」
「入って……。 先に体拭いて、服も着替えよ。 何があったの?」
「………………………………。…………帰ったら、タキナいな……くて……。 お前に……預けたのは……、間違い……だった……って…………」
「で、タキナには会えたの?」
「まだ……」
「そっか……。 なら、私のとこに来てちゃダメだね。 先にしなきゃ行けない事……あるよね?」
「うん……ごめん……」
「なら、行かないと……。 ね?」
「うん……」
「行っておいで。 大丈夫、私はずっとここにいるから……」
「ありがと……。 行ってくる」
………………
コンコン。
「ミネルバいる?」
いないのはわかってる。
「タキナ……、いるよね……? 開けてくれる?」
「開けてくれなくても良いよ、そのまま聞いて……。 ごめんね。 ボク自分の事しか考えてなかった。 タキナは、いつもボクのこと考えててくれてたのに。 タキナは離れて行かないって安心して、タキナの事何も考えてなかった。 最低だよね。 幸せになんて出来るわけないよね……。 怒って離れて行っちゃうのも……仕方ない……よね……。 ごめん……ね。 今まで……あり……がと……。……。…………。」
泣くつもりなんてなかったのに……、謝ったらありがとうって帰るつもりだったのに……。
溢れ出る涙を抑えられない。
「やっぱり……わかれ……たく……ない。 タキナと……離れ……たくない……よぅ……」
「……。ユ……フィ……様は……、本当に……泣き虫……ですね……」
「タキナ……」
「怒ってなんて……いま……せんよ……」
「じゃあ……、嫌い……じゃない……?」
「はい……、ユフィ……様が……大……好き……で……す」
「これからも……、一緒に……いてくれる?」
「はい……、ずっと……付いて……いき……ます……」
ドア越しで顔が見れなくても、声が聞けただけでタキナを感じられる。繋がれた気がする。
彼女を失いたくない。




