鬼軍曹のパウラ
講義に刺激が欲しくてパウラを借りてきた。
普段はミネルバの付き添いしかしてないから、予定が無い時は一人は連れてっていいんだってぇ。
あぁ、パウラ姉さんの殺る気がハンパ無い。
人選間違ったかもしれない。
ザワザワ。
見知らぬタンクトップ姿の美人の登場に、みんな興味津々だけど、男子諸君の目は彼女の胸に集中している。
「今日は皆さんの為に、特別教師をお呼びしました。 第二騎士団所属のドラゴンナイトのパウラ様です。」
「おぉ……。」「キレイ……。」「はぁ~……。」「お姉様ぁ……。」「……。」「……。」
「只今、紹介いただいたパウラだっ! 今日は貴様ら腑抜けたクソ共の調教を仰せつかった。 ついてこれなかったら、お仕置きだから覚悟しておけっ。 わかったら返事!!」
「はい……」
「声が小さいっ! 「はいっ、パウラ教官!」だっ!」
「はいっ、パウラ教官!!」
は? 何、このキャラ?
聞いてないんですけど?
「さぁ、まずは走れっ! 死ぬまで走れっ! 死んでも走れっ! 止まったら殺す!」
おー、みんながむばれー。
「ユフィ、なにしてる? 貴様等もだっ!」
「はい? パウラさん?」
「教官だ。 教官! 異論、反論、抗議、口答えは一切認めん。 返事はっ?」
「は、はい……。パウラ教官」
ボクもですか? 先生方もですか?
そうですか。
………………
「お前らなにしてる! ドレスで走ってんじゃねぇんだぞ!」
「ひっ」
「私に追いつかれた奴はお仕置きだっ!」
楽しそう、実に楽しそう。
でも、いつものパウラよりいいかも。
………………
「貴様ぁ、誰が寝ていいと言ったぁっ!」
「でも、もう」
「言葉を話すな、腰抜けっ! 尻を出せっ!」
バシィィィィィィ!
「ありがとうございます! パウラ教官!!」
あの手にはちゃんと回復の効果がかかってる。
数人がマジナ先生の後ろを付け回して、ボコボコにされている。
クシシ。
でも、先ずは着替えようか……。どうしてそのまま走る気になった?
戦闘服だから? そうですか。
にしてもえっちぃ。
走ってると下のラインがギリギリすれすれなのだけど。ちょい覗くくらいが絶妙にえっちぃ。
「ユフィ二等兵、他の女によそ見とは余裕だなぁ? タキナがいるにもかかわらず欲求不満かぁ? 貴様は身体強化と回復魔法禁止だっ!」
「はい……、パウラ教官。」(誰が二等兵だっ。)
「声が小さいっ!」
「はいっ、パウラ教官!!」
うっうっ。
………………
「追い込みだっ! 全員、身体強化と回復を切れーー!」
「えぇぇぇぇぇ?」
「意見は認めん! 走れ、走れ、走れっ!」
………………
「よしっ、整列っ!」
「はいっ、パウラ教官っ!」
「いい顔になったな!」
パウラが、端の生徒の胸ぐらをつかむ。
バシィィィィィィ!
仰け反るほど勢いよく頬を叩くと、そのままの手で顔を寄せて大人の口づけをする。
長く……、深く……、ゆっくりと……。
口を離したら、胸に顔を押しつける。
「よしっ、良くやった」
「パ、パウラ教官。それは……、ちょっと……。」
「いいや、アレクシア。 こいつ等は明日は生きて帰って来れるか分からない。 もう二度と会えなくなるかもしれない。 この程度のご褒美など……。 私は部下の為ならば、この体でさえ差し出してもいい。」
パウラは涙を堪えた顔で訴えるが、きっとそんな事はない。
がむばれ、アレクシア。
「そうですね……。 パウラ教官、私が間違っておりました。」
「こいっ、アレクシアっ!」
「はいっ、パウラ教官!」
いやいやいや、負けるなよぉー、流されるなよぉー。
舌舐めずりしてんじゃん。
怖いよぉー。
ってか、王女はダメだろうよぅー。
あっ、ボクも王女だった。
きっと、初めての子だっているだろうに、ショックが……。
…………。
うん、みんな茹だってるから大丈夫っぽい。
クロエもゆだっ……ってない!
おぉ、これは姉様の勝ちって事かっ?
いや、経験済みだからか?
マジナ先生とパウラの絡みは、ただただいやらしいだけだった。
それは要らないだろ? よそでやれよー。
順番が迫ってきたので、ボクはジリジリと列から下がって距離を離していく。
「おい、二等兵……。 貴様、どこに行くつもりだっ?」 (ボクの服をがっしり掴みやがった。)
「いやいやいやいや。 自分には尊いパウラ教官のお口を汚すなど、とてもとても……。」(引っ張るなよぉ、お腹でてるからぁー。)
「立場を弁えるのは感心だが、褒美だから遠慮はいらん」
「自分には、心に決めた人がいるので……」(離せよぉ、服捲るんじゃないっ。 見えちゃう、見えちゃうからぁ。)
「大丈夫だっ。 ミネルバとタキナの許可は既にとってあるっ。 私の指導が受けられないなら、今後夜のご奉仕は無しだっ。」
「ちょ、ちょっと……、変な事言わないでよっ。 そんないっつも求めてないしぃー。」(こ、コイツっ。 もう、やだよぉー。)
「ほらほらほらほらぁ。」(絡みつくな! 服に手入れるなっ! みんな見てるからぁー。)
タキナ、たすけてぇぇぇぇぇぇぇぇ。
もう、コイツは呼ばん。
パウラの抱擁は力強くて、安心感があって、その口づけは、とても優しかった。




