姉君と知らない子と
実技査定が終わった午後は貴族生徒は学院長主催のお茶会。
一般生徒は学校見学や寮の手続きになる。
「アレクシア。 お茶会の後は予定ある?」
「どうエリック?」
「予定は入っておりませんが、夜までかかるかと」
「お姉様もご一緒しませんか?」
「さすがに、それはないかなぁ」
「そうですわよ。 平民は弁えて行動なさい。 アレクシア様のご学友である事さえ恐れ多いというのに」
「エレノア、そこまで……」「アレクシア様! 王家の者として分別ある行動をしていただかないと」
「そこまで畏まらなくてもいいんじゃないかな? エレノア」
「ティファお姉様」
「やあ、久しぶりだね。 アレクシア、エレノア、エリゼ。 少し見ない間にこんなに美しくなって」
後ろから声をかけてきたのは、ボクとアレクシアの姉君。
王位継承権第二位のティファニア・ティア・ファーレンハイト・ファルナだ。
あれっ、髪切ってるしっ!? 怒られない?
金髪碧眼は当然だけど、ハンサムショートでお姉様感がすごく良い。ゲームではアレクシアと同じロングストレートの激キレイお姫様キャラだったんだけど?
「みんなも元気にしてた? ふーん、君だね。 アレクシアのお姉様の座を奪おうとしてる、腕利きの冒険者ってのは……?」
またまた顔が近いっ。
ボクの周りをクルッと回って顔をまじまじと見て頬に軽く唇を合わせる。
手は頭から抱きかかえて、優しく、長く。
「はじめまして……。 ずっと会いたかったよ……」
きつくはないのに、胸が締め付けられる。
良い匂い。
「おっ、お姉様っ!」「ティファニア様っ!」
「わかった、わかった。 はい、はい。 アレクシアにもっ(chu)。 はいっ、エレノアもっ(chu)。 はいっ、エリゼもっ(chu)。 フフフッ、みんな素敵なレディに育ってくれてボクは嬉しいよっ。 そろそろ行こうか? ユフィーリアにもぜひ一緒に来て欲しいけどどうかな?」
「ありがとうございます。ですが本日はご遠慮させていただきます」
「そっか……、近いうちにまた」
周りが静かになって、黄色い悲鳴と怨嗟の声が煩わしい。
「寂しそうだね。 あたしもしてあげようか?」
「いらないよ。 命まで持っていかれそうだからね」
「もしかして、さっきの怒ってる?」
「怒っては無いかなぁ。 自分が好かれるタイプの人間って思ってる?」
「かわいいでしょ?」
「目つきがよければねぇ」
「それはしかたない」
横に来たアイシャは遠慮がない。
長めの濃い紫髪をポニーテールにしてかわいいんだけど、目つきが良くない。
「あたし寮なんだけど、寮? 通い?」
「通いだよ」
「帰るの? ついていっていい?」
「帰るけど、ダメ。 君は手続きとか案内とかあるでしょ?」
「終わってる。 もう住んでるし。 側付きとか、奴隷とかいらない?」
「いきなり奴隷? 必要ないから要らないよ」
「馬車? 歩き? 馬車乗りたい」
「残念だったね、歩きだよ。 それに君はこっちから出れないでしょ?」
「歩きでいい。 一緒ならだしてもらえるから大丈夫」
「そっか…」
どうも一緒についてくるみたい。
怪しい? そうでもないんだなぁ。
彼女は正直で素直。 ただスれてるだけ。
「大きな家」
「何いってんの? ただの騎士団本部だよ」
「あたし犯罪はしてない。 最近は」
最近ね。 まぁ、犯罪者は学院には入れないよね。
「おかえりなさいませユフィ様」
「タキナぁ! 寂しかったよぉ」
「はいはい。 御学友ですか? 人前ではちゃんとしてください」
「勝手についてきた知らない子だよ」
「それは、ひどくないか?」
「? ユフィ様の側付のタキナと申します」
「第四騎士団のアイシャ。 よろしく。」
なるほど、第四騎士団預りなのか。
まずはタキナと一緒に昼食をとる。 おまけがいるけど仕方ない。
アイシャがいるので、一般的な料理にしてもらってる。それでも彼女は喜びながら猛獣の様に食べてる。
タキナにひっつきたいのに、無感情な笑顔で拒否されて許して貰えない。
アイシャは今日の事を話してる間もずっと食べ続けてる。 もうほっといていいのでは?