悪役令嬢と実技査定と
「アレクシア様、本日も大変に麗しくて感激致しますわ。 お会い出来ない日々、この私がどれほど心を痛めていた事か……」
「お、おはよう。 エレノア」
「で、あなたですわよねっ? ミネルバ様に取り入って貴族に入り込み、コネで学院に入学した挙げ句に、あろう事かアレクシア様までかどわかそうとしている平民というのは? ここは貴方の様な方が来ていい場所ではございませんのよ!」
うわぁー、悪役令嬢きたぁー。
あれぇ? エレオノーラってこんなキャラだったっけ?
彼女はエレオノーラ・ファーレンナハト・ファルナ。
王家に連なる一族で彼女も王家特有の金髪碧眼のゴージャスな縦巻きロールのお嬢様。
顔立ちもボクやアレクシアによく似ていてかわいい。
かわいい? エヘヘへ。
「エレノア……彼女はそんな……」
「アレクシア様は騙されておりますのよ。 この平民の意地の悪そうな顔を見ればわかりますわっ。 貴方の為にアレクシア様は入学まで部屋を出る事すら出来ませんでしたのよっ。 …………。 …………」
それはボクのせいじゃない。
誰が意地の悪そうな顔かっ。
うっうっ、ベルが鳴って教員達が入ってくるまでエレノアの演説は続いた。
アレクシアとクロエはボクの後ろで雑談している。
いつもの事ですか? そうですか。
入学の式典が終わってこれから実力査定になる。
移動中、ボクの隣にクロエ反対側にアレクシアが付こうとするのをエレノアが割って入って、少し離れた後ろに五人組とエレノアの取り巻き達。
ただでも男子生徒からは避けられているのに女子生徒も近づいてこない。
なに、この集団?
もう帰りたい。 タキナぁー。
実技査定なので着替えるんだけどぉー。
なぜかジャージなんだよねぇー。
まぁ、中世な運動着ってなかなか難しいかぁ?
更衣室って和気あいあいな雰囲気があって好きなんだけどアレクシアとエレノアのが大きすぎて目障りだっ。
何がって……。
クロエにすらも負けてる気がする。
ちくせう。
まだ成長期だから。
エリナリーゼ様って着替えどうしてるんだろ?
修練場での準備運動を真似するアレ、エレ、クロ&五人組。
動きについての質問なんかもしてくれてすごく教えがいがある。
あと、ボクに対して言い様のない恐怖を常に感じているとエリナリーゼ様に告げられた。
今日の実技査定はボクにとってもすごく重要でこの八人を含めた全員の実力を把握して、他にも有望そうな生徒を見つけたらレベル上げに誘ってみるつもり。
エレノアも? たぶんアレクシアに付いて来るんじゃない?
アレクシアはともかくエレノアとクロエは強いと思うよ。
剣技査定は教師のケンハマカー・セロだ。
30才くらいかな? うす紫の髪色で見た目は似ているがけしてマシュマロ・セロではない。
ガルズやズザには乗ってない。登場しない……はずっ。
ケンハマカーは冒険者からの叩き上げなので期待している。
道場剣術や演舞剣術を教えられても困るからね。
査定は一人づつケンハマカーに打ち込んでいく流れ。
順番は特に無いという事でアクセルが鉄砲玉の様に飛び出していく。
ケンハマカー、これはなかなか。
勝手にレベルを付けるなら、アクセルが30、ケンハマカーが60。
全員が目標にするのに十分な腕をもっている。
目標は見えてる方が分かり易いからね。
ボク? 基準がないからわからないけど、xxxxxxxxxとか9999999999とか?
シルクが30、ルッツが30、キャメル20、エリナリーゼ様20、クロエ30、エレノア30、アレクシアが20、こんなところかな?
クロエとエレノアは腕はいいけど実践になれば体格差で負けてしまうのは仕方ない。
他に目についたのは貴族生徒のオスカー・メルカッツとキャゼルヌ・ウォルフガング、そして一般生徒のアイシャ。
この三人はレベル50くらいあって実戦経験者なのは間違いない。
ただ、アイシャには何かありそうかな?
隠そうともしない殺気に、飢えた獣の様なあの目。
人殺しの目してるよね。




