グレンとネネと昔話
「よう、久しぶりだなぁ。 元気にしてるのはちゃんと聞いてるけどなぁ」
「うん、久しぶりグレン。 紹介するね、この子はタキナ。 今日はタキナの登録と少し話があってきたんだ」
「話……ね。 ネネとその子はいいのか?」
「うん、大丈夫……」
ネネさんにタキナの登録や申請関係の話をしてもらってる間に、こないだの盗賊討伐の話をする。
あの日は話しないで帰ったから。
助けた五人の女性を除いた村人は全滅。
保護した女性達はギルド預かりになって、ギルドの下働きから始めるか外に出るかを選ぶ事ができる。
物証は発見されなかったけど、女性達の証言から盗賊は13人いたものとして処理されて報酬が支払われる。
みんな燃やし尽くしたからね、仮に報酬がなかったとしても文句言うつもりはなかった。
難しいクエストほど物証を持ち帰れない場合も出てくるから、そんな場合は証言だったり後の状況確認と信用がものを言う。
ネネさんとタキナが終わるのを待ってから本題に入る。
話の内容はタキナと一緒になった事、ビッテンフェルト家の食客になった事、学院に入学する事、学生をしながら王女達を鍛える為に冒険者の活動をする事。
「ユフィが貴族扱いで学院にねえ。 ギルドに来てから五年、あの事件からはもう三年か……」
「グレン、ネネさん、あの時はごめんなさい。 グレンを殺してなくてほんとに良かった……」
「もとから気にしてねーよ。 むしろ謝るのは俺の方だ。 俺たちが何もしてなかったばっかりに、たった13才のお前に罪を背負わせちまった。 申し訳なかった」
この国を救ったかもしれない英雄が二人、グレン、そしてフリル。
ラスボスであるボクの手から。
三年前、盗賊同士の衝突があって一般区の三つの建物が全焼、商家の建物一棟が半壊、死者は50人以上。 生存者なし。
商家にあった記録等から貴族家二つが取り潰し、当主が斬首に処される事件があった。
状況確認及び消火、救助に駆けつけたギルド職員の責任者がギルドマスターのグレン。
証人は偶然商家の近くに居合わせた職員見習いのフリル。
そしてグレンが商家にあった証拠品を集めて、王家に直訴した事によりその功績を認められる事となる。
「グレンとフリルには、感謝してもしきれないよ。 ありがとう、ボクを止めてくれて……」
「私は許さないからね。 ユフィ、許したら忘れるでしょ。 この人が帰って来なかったら絶対に許せなかった。 だから何かあったら頼りなくても先に話して。 私達を頼ってね」
「うん。 ありがとう」
応接室を失礼して下に降りたホールの机にはフリルが待ってた。
「遅い。 こんなにいい女を待たせるなんて悪い奴もいるもんだ」
「ふふ、お待たせ。 ステラんとこいっこっか」
「で、その子は?」
「いろいろあって、一緒になったタキナ」
「はじめまして、タキナと申します」
「はじめまして、私はフリル。 よろしくね」
黄昏色の石畳を三人で口数少なく歩いていく。
今日はフリルから手をつないでくる。
夕方の町は忙しくて騒がしいけど、ボク達の時間はゆっくりと静かに落ちていく。
熊の居眠り亭では受付の二人や顔なじみさんにも別れの挨拶を済ませておく。
ネイさんやステラには忙しくて申し訳ないが、今日はボクの奢りだ!
ボクも料理を運んでお酌して。 そのうちフリルとタキナまで一緒になって給仕して。
フリルを口説く男を酔い潰し、タキナを触ろうとする奴に圧をかけて説教して遅い時間まで大混乱だった。
だいたい片付けも済んだところで、ボクとフリルは部屋にあがる。
タキナはメイド魂が燃えるらしくて最後までやり切るそうだ。
「へへへ、たのしかったね」
「そだね。 騒がしかったけど悪くないかな。 ユフィはこれからどうするの?」
「うん、これからね…………」
二人でベッドに座ってグレン達と話した内容をフリルにも伝える。
「そっか、あまり会えなくなるね」
抱きついてくるフリルを抱き返す。
「そんな事ないよぅ。 ギルドには行くし同じ町の中にいるんだし」
「そうだね」
「そうだよ」
「そうだね……」
ボクの頬に軽く口をつけて離れるフリル。
「タキナとは?」
「タキナはビッテンフェルト家でメイドしててねぇ…………」
仕事が終わったタキナとステラも上がってきて、夜明け前だけどお風呂して、狭いベッドにみんなで潜り込む。 今日はフリルは休みでステラは夕方からでいいんだって。




