タキナとショッピング♫
今日はギルドや熊の居眠り亭に挨拶にいくかな?
入学準備もしなきゃだしねぇー。
いつもの服で出かけるつもりだったのにタキナがドレスを着せようとするから、ミネルバに間に入ってもらってなんとか真っ白のロールカラーのワンピースで許してもらえた。
たしかにこのワンピース姿のボクはかわいい。
このセカイでは一番妥協していた部分だけど、これで下町に行くのはアレクシア達と変わらない。
やっぱり下町にも出かけたいっ。
タキナはタキナで一緒に出かけたいからかわいい服でって言ったのに、フリルが多めについたメイド服で出てくるとは思わなかった。
かわいいのはかわいすぎるくらいかわいいんだけどぉ、そうじゃないっ。
カジュアルにゆっくり町を歩きたいっ。
タキナの所作は繊細で上品。
銀色の髪は綺麗に整えられていて、どこかのご令嬢のみたいで思わず見とれてしまう。
いっそ服を交換した方がいいレベルだ。
ボクもタキナもビッテンフェルト家の記章を持ってるからゲートはノーチェックでクリアできる。
まぁ、冒険者の格好なら更に身分証と証紙の提示が必要かもしれない。
タキナの歩幅に合わせてゆっくりと城壁前広場を歩く。
学生っぽい子達の中には羨望の眼差しを向けてくる子も少なくない。
ボクかわいいし、タキナもかわいい!
ふっふっふ〜。
そこが一番だと思うけど一般区だからね、貴族や上流階級への憧れもあるかもしれない。
「タキナー、横においでよぉ。」
「マスター、従者は一歩後ろを付き従うものですよ」
「マスターやだぁ、ユフィって呼んで」
「では、ユフィ様とお呼びしますね」
「手、つながない……?」
「品がないからいけません。 両手を空けておかないと、何かあったとき危険です」
「タキナが堅苦しい……。 つまんない……」
「ユフィ様はこれからビッテンフェルト家の人間として扱われます。 貴族として恥ずかしくない振る舞いをしていただかなければいけません」
「貴族やだぁー」
「そうかもしれませんね。 もし、ユフィ様がビッテンフェルト家を出てもちゃんとついて行きますからね」
「……うん。 ありがと」
少しお店を見て回ってからギルドにいくつもりだったけど、この早さじゃ暗くなりそうだからショッピングだけにしとこう。
「さぁー、タキナの服を選ぶよぉ〜!」
「ユフィ様、私には普通の服は不要です」
「ダメー。 メイド服姿は素敵だけど、学院に入学したらこの辺りや下町の方まで移動範囲が増えるんだからもっと目をつけられない様な服じゃないと危険だよ? もう既にけっこう目立ってるよね?」
「そうかもしれませんね……。 では、ユフィ様がいくつか見繕っていただけますか?」
「うっはぁ〜。 やったねっ〜」
………………
もう、タキナがかわいくてかわいくて。
もひとつかわいくて。
「じゃ、これ全部下さい!」
「ユフィ様……? 大変嬉しいのですが、これはいくらなんでも買いすぎでは?」
「だってタキナがなんでも似合うからぁ〜!」
「あ、ありがとうございます」
アイテムボックスに入れるから買い物も楽々ぅ。
「ユフィ様……。 冒険者というのはそれほどの収入を得られる職業なのでしょうか?」
「うーん、どうだろうねぇ? 危険なのは間違いないし、ボクはここのギルドでは上位に入る方だと思うからねぇ。 持ってる素材を全て売却したら、そこらの貴族には負けない程度にはあるから心配はいらないよ」
「じゃあ、次はタキナが選んでくれる?」
「かしこまりました。 洋服選びには自信がありますのでお任せください」
…………
「ユフィ様、大変申し訳ございません……。 弁解の言葉もございません」
「大丈夫だから、そんなに謝らないで……」
タキナの頬に手をあてて優しく諭す。
自信があると言うだけはあってなかなかにハイセンスで素敵な物を選んできた。
ミネルバにピッタリのサイズの……。
ボクにはどうしても身長と……が足りなくて似合わない。
「ミネルバのお土産にしようか? タキナが選んだって言ったら喜ぶよぉ」
お店を出てもなかなか元気が戻らないタキナをベンチに座らせて少し待機させる。
「おっまったっせぇ〜。 タキナっ、ちょっとごめんね」
「ユフィ様?」
顔を寄せて頬を合わせる。
手をまわして、首にネックレスを付けてあげる。
「よく似合うよ。 ねっ、ボクにも付けて」
「はい……」
「おそろいっ。 かわいいねっ」
「はい……。 ありがとう……ございます……」
涙を溜める彼女をそっと抱き寄せる。
「タキナも、泣き虫だなぁ……」
「…………」
泣き顔もかわいいけど、その後の笑顔はもっとかわいい。
…………
ミネルバにお土産の洋服を渡したらすっごい喜んでくれて、夜遅くまでお着替えパーティで騒ぐ事になる……。