こんなボクだけど……
「ユフィ様、おはようございます」
「おはよう、タキナ。 タキナも眠れた?」
「ありがとうございます。 私もとらせていただきました」
うーん。完全に寝ちゃってたかぁ。
ここまでしっかり眠るのは久しぶりかもしれない。
危機感知能力はあると信じてるけど、最近甘い気がするよねぇ。
けっこう身の危険があった様な?
「どうかされましたか?」
優しく抱きしめてくれる彼女の体は温かくて柔らかい。
もう、ダメになりそぅ。
「ミネルバ様から、身支度が済んだらお連れするようにと申し遣っております」
「ありがとう。わかったよ」
彼女ががさっと身なりを整えてくれる。
メイドさんって女子力最強だねぇ。
「おはようユフィー。 昨日はお楽しみでしたねぇー」
「そうゆぅ茶化しはいいですぅ。 なにもしてませんからぁ」
「そうゆう事にしとこうかなっ」
ミネルバの合図でまた二人きりになる。
今日のカティアは穏やかだねぇ。
「昨日は途中になっちゃってごめんねー。 で、さっそく話の続きなんだけど神器は持ってるー?」
「持ってないよぉ。 神器ってのもはじめて聞いたからねぇ」
「だよねぇー。 で、お願いがあるんだけどぉー。 学院に入学して、クロエの側にいてあげて欲しいってのと、アレクシアの神器『wheel of fortune』の獲得。 そして、ユフィーリアの神器『wrath』の探索を頼みたいんだよねー。 アレクシアを捧げる以外は女神達が攻めて来るシナリオは変わらないと思うから、神器は必ず必要になるし、あの六人をできるだけ強化しておいて欲しいのー」
「来るかなぁ?」
「来る!」
ですよねぇ。
うーー、学校いきたくなーーーい。
「悩んでおるね、ユフィ君。 君がこのお願いを受けてくれるのなら、この本部での生活権を差し上げようじゃないか? どうだね? ん?」
「もう、何キャラだよぅ」
「まだ足りないかな? では、とっておきだよ。 タキナを君の側付にしようじゃないかっ!!」
「…………いやー、だめでしょー。 本人の気持ちだってあるしぃー。 そんなの勝手に受けれないしぃー」
「素直じゃないなぁー。 たぁぁぁぁきぃぃぃぃなぁぁぁぁー」
「お呼びでしょうか?」
「うん。 今からいくつか質問するけど、あたしに気をつかう必要は無いから、ほんとの気持ちを聞かせて欲しいの」
「畏まりました」
「これに手を置いて。 わかるね?」
「はい。 存じております」
ミネルバが机に置いたのは魔法紙だ。
効果は、偽証の探知。
「昨日の夜はユフィとはし………」「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
「……冗談よ」
「本気じゃん! すっごい本気じゃん!」
「ごめん。 最初からね」
「あたしの事は好き?」
「はい」
「大好き?」
「はい」
「ユフィの事は?」
「好きです」
「大好き?」
「はい」
ちょ、ちょっとぉ。
恥ずかしいんですけどぉ。
顔あげれないんですけどぉ。
「命令や強制じゃなくて、ユフィのところに行く様に言ったらどうする?」
「申し訳ございません…………」
そう、だよね。
もう、何を期待したんだろ。
ちょっとバカみたい。
「ミネルバ様…………。 タキナはこの方のところに行こうと思います」
「えっ?」
魔法紙は反応してない。
嘘じゃない?
瞳を潤ませたボクの前にタキナさんが来て、まっすぐに目を合わせてくる。
「私の事お嫌いですか? my master」
そんな顔で見ないでよぉ。
涙が……。
「マスターは泣き虫ですね?」
「たった一晩……過ごしただけ……なのに……?」
「はい」
「貴族……じゃない……のに……?」
「はい」
「泣き虫……でも……?」
「はい」
「…………」
「私は、マスターの全てを愛します」
ボクを見つめる瞳はとても透き通って、綺麗で素敵だった。
「こんなボクだけど……、よろしくお願いします……」
「ほんと、ユフィは素直じゃないなぁー。 朝からタキナがわざわざあたしの所まで来てさー「申し訳ありません。 ユフィ様を愛してしまったかもしれません」とかゆーからビックリだよー。 一晩だよ、一晩。 魅了でもかけられたかと思って心配して鑑定と魔法紙まで使っちやったよー。 ほんとにもう。 タキナ……幸せになるんだよぉ……」
「ありがとうございます……今まで……大変お世話……になりました……」
二人とも笑顔だけど瞳からは涙が溢れている。抱き合う様子からは強い絆が感じられた。




