タキナ
なかなか長風呂になってしまった。
お風呂にゆっくり浸かるのは好きなんだけどねっ。
脱衣所にはしっかりとメイドさんが待機してて借りてきた猫状態になる。
髪と肌のお手入れが終わったら裸のまま隣の部屋に。
あのー、ほんとに恥ずかしいんですが。
このままですか? そうですか。
ミネルバは堂々と歩いていくのでいつものことなんだろうけど。貴族って。
隣の部屋はなんとマッサージルーム。
はぁ、幸せー。 もう溶けて無くなりそう。
用意されていた下着と寝巻を着せていただく。
下着はかわいくて良いんだけど、寝巻が透け透けなんですけどー。
これ、ネグリジェってやつですよねー?
「あのー、他の寝巻をお願いできますか?」
「よく似合ってるじゃない?」
ぐはぁ。
不意打ちのミネルバは致命的だった。
同じ透け透けのネグリジェでも色気のある下着と体はもうラスボスを瞬殺できるレベルである。
ボク? ……足りない。うん、足りない。シクシク。
脱衣所から出ると三人娘が待機していて、みんな同じネグリジェ姿だ。
この本部共通って事なのかなぁ。
三人共それぞれ違ってなかなかに魅力的なんだけど、カティアは顔のかわいさに比べて下着のチョイスが過激すぎかもしれない。
ボクに向ける視線が更にきついんですけどぉ?
「カティー。 そんな顔を続けてたらほんとにキツイ顔になってしまうよー。 あたしは、かわいいカティが好きなんだけどなぁー」
「だって、おねえさまがこの子ばっ………………んっ」
ミネルバに口を塞がれたカティアはそのまま体を預けていく。
「わかってるよ。 今日はいっぱい話をしようか? ねっ」
「はい、おねえさま」
「ユフィごめんね。 続きはまた明日。 おやすみ」
ミネルバはそういって三人娘とくっつきながら歩いて行ってしまった。
横にぴったりと寄り添うカティアはとてもかわいい少女の顔をしている。
はいはい、どうぞどうぞ。
「ユフィ様はこちらへどうぞ」
寝室に案内されたんだけどやっぱりメイドさんが一緒に入ってくるんですが?
貴族だから? そうですか。
ここのメイドさん達もなかなかにべっぴんさん揃いだ。
うながされるままベッドに横になる。
「本日、ユフィ様の身の回りのお世話おさせていただきます。 タキナと申します」
タキナさんは長い綺麗な銀色の髪に薄紫色の瞳でかなりの美人。
ミネルバに負けない優雅な動きと所作で、メイド服でなければどこの令嬢かと思ってしまうほど。
素敵な人だなぁ。目が合うだけでドキっとしてしまう。
「何かございましたか?」
「いえっ……何でも無いです」
「そうですか。 では、失礼致します」
そう言って、タキナさんは服を脱ぎ始める。
…………!!
「タキナさん、ちょっと待って」
「脱がない方がお好みでしたか? タキナでけっこうですよ」
「えーーーっと、今日はもう十分だから帰ってもらって大丈夫ですから」
「私ではご不満でしょうか?」
「いや……あの……。 タキナさんはとても素敵で、ドキドキしちゃうくらいなんだけど。そうじゃなくて、ほんとに大丈夫ですからから求めてないですから」
「ミネルバ様より、ユフィ様を満足させる様仰せつかっております。 このまま帰っては叱られてしまいます」
そんな事は無いと思うんだけど、立場が違うからわからない。
「えーっと……わかった。 うん。 帰らなくても大丈夫。 でも、そうゆうのは無くていいから、少しだけ話し相手になってもらってもいいかな?」
タキナさんとの時間は楽しくて、ベッドの上で遅くまでお互いの事を語り合う。
ここのメイドさん達は、みんな貧民街から子供の頃にミネルバに拾われてきた人達。貧民街での生活はとても辛くて死ぬ寸前のところを拾われて、楽しい思い出はここに来てからの時間そのもの。
第二騎士団には酷い人はいなくて、ミネルバや三人娘もとても優しくて幸せなんだって。
貧民街の生活改善は始まってるし、進んでるけど許せない事もまだまだある。
でも変える事を良く思わない人達もいるし、急激な変革はこの国そのものを揺るがしてしまうからできない、と言うのがミネルバの考えだ。
タキナさんがボクの頭を包んで優しく撫でてくれる。
色々思い出してしまって瞳が潤んでたみたい。
「少し本でも読みましょうか?」
「うん、ありがとう」
本を持って戻ってきたタキナさんはボクをお布団の中に促し、すっと服を脱いで下着姿で寄り添ってくれる。
温かくて柔らかくて良い匂い。
ドキドキよりも安らぎを感じる。
選んでくれた本は静かなおとぎ話でボクの頭を優しく抱きながら読んでくれてすごく安心する。
彼女と二人の時間はとても心地よくて幸せで素敵な夜になった。




