和食とお風呂は最高です
雑談に花を咲かせていると、ノックがあってメイドさん達が夕食を運んできてくれた。いつもはクロエと三人娘と一緒に食事をとっているけど、今日は遠慮して貰ってるそうだ。
ドアの隙間から見えた、カティアの刺さる様な視線に身が震える。呪詛が聴こえる気がするから、身代わり人形がいるかもしれない。
まぁ、アイテムボックスにちゃんと入ってるんだけどね。
「チャラリラン♪ みーがーわーりーくーん〜♪」
アクセル、ルッツ戦でも活躍した万能人形「みがわりくん」だ。
お腹のポケットから出して、ドアの横に立てておこう。
フフンッ。
「ユフィ……、何してるのよ…………?」
「いえ……、なんでもないです……」
今日の夕食のメインは『す・き・や・き』!
え〜♪ 『す・き・や・き』!
やばーい♪ 『す・き・や・き』!
テーブルには他にもお肉料理にスープやサラダ。うっはぁー、フライドポテトだぁ。やっぱりフライドポテトは必須だよねぇ。
まさしくホテルのビュッフェみた〜い。
毎日これか? これなんだろうなあ。
ただ、お寿司やお刺身は並んでいない。
近くの川や湖の魚はいまいちで、国を越えて海まで仕入れに行かないといけないからね。
まぁ、お寿司っていっても銀シャリじゃなくて芋になる。
丼だって芋。カレーみたいなのだって芋。じつは芋でもけっこう美味しぃ。
「ミネルバ君、カレーはあるのかなっ?」
「もちろん、開発済さっ!」
「おねぇさまぁ〜」
感極って抱きつくボクを、宝塚の男役みたく受け止めてくれる。
あぁ〜、ミネルバ様、ス・テ・キっ! ボクを、攫って〜。
顔をあげた先のミネルバはちょっとドヤ顔で、あまり色気がなかった。
「失礼いたしま…………。ちょ、ちょっとあなた、ミネルバ様から離れなさいよ」
演劇しすぎて、ノックに気づかなかったよ。
メイド達は冷静だけど、カティアだけ顔を紅くして素早い動きで近づいてくる。
あ、それ以上は。
「なに……? い、いゃぁぁぁぁ」
みがわりくんの自動防衛機能で、カティアは瞬く間に背後から拘束された。
ゴメン、切ってなかった。
そりゃ、木人形にいきなり抱きつかれたらホラーだよね。
熊のぬいぐるみにでもするかな? でも身代わりはかわいそうだし、マリオネット風? それはそれで怖そうだよね。
「ゴメン……」
拘束を解かれたカティアは、青い顔でパウラとカトレアに支えられて退室していった。
「…………。ゴメン……」
「こちらこそゴメンねー。 カティアはとってもかわいい子なんだけど、嫉妬してるのかなぁー。 あたしの一番でありたい欲求が強いんだよねー」
「さっ、どうぞ食べて食べて!」
「いっただきま~す」
うまぁー。 やっぱり和食だよねー。
でもフライドポテトはやめられない。
ミネルバが、一番時間とお金を使ってるのが食材探しで、次が美容品なんだって。
お約束通り、遠い東方には日本の様な国があって、似た調味料を仕入れる事はできるらしい。
お米らしき物もあるんだけど、運ぶのに手間がかかるから実現できてはいないそうだ。
自分で行きたいけど、貴族と騎士の義務があるから、長期間の留守は出来ない。
貴族って贅沢できるけど、そのへんがね。
料理残り過ぎじゃない? もったいないよ。 って思ったら、残りは使用人さん達の夕食になるそうだ。
贅沢な夕食も済んで、優雅なティータイムの後は、お風呂を案内されたよ。
あぁぁ、大きなお風呂だぁ。
ちょっとテンション上がるー。
あのー、メイドさんが一緒についてくるんですが?
あー、お貴族様だもんねぇ。 脱がしてくれたり、体を洗ってくれるのね。
そうですか。
もっとかわいい下着にするんだった。
これは……下着より食べ過ぎてポッコリしたお腹の方が恥ずかしい。




