お茶会ってそうゆぅ?
ミネルバの自室に通されて今は二人きり。
人払いを伝えるミネルバに青色が最後まで抗議していたけど、緑色とピンク色に両腕を掴まれて退室させられて行く。
第二騎士団は本部や詰所での待機はなくて、守衛番や受付番が交替で詰めているだけで、魔道具ですぐに連絡がとれるからいいんだって。貴族だもんね。
「今日は来てくれてありがとう。 お茶を準備するよっ。 コーヒー派? 紅茶派? どう、驚いた? この世界って別に悪くないけど、食べ物っていまいちじゃん。 だから専属のコックにだけ色々教えて作って貰ってるんだ。 そこは貴族に転生できて良かったかなって」
テーブルの上にはサンドイッチにスープ、ケーキや焼き菓子など今では懐かしく感じてしまう物まで並んでいる。
あぁ、とても良い香りがしている。まぁ、部屋自体も良い香りなんだけど。
この世界にもコーヒー、紅茶、お茶はあるけど現代の物とは雲泥の差がある。
色んな人の汗と涙の結晶なんだなぁと日々の生活で実感する。
専属のコックとメイドさん達は命を買い取ったんだって。
怖い話じゃなくて、身寄りがなくて死ぬ寸前の人間にこの世界には無い美味しい物を食べさせる条件で召し抱えるらしい。
この部屋で過ごせるのはクロエと三人娘だけ。
メイドさん達は用事がある時以外は給仕が終われば部屋を出ていく。
三人娘は緑色がパウラ、青色がカティア、ピンク色がカトレアで、パウラとカティアは姉妹だけどカトレアは違うらしい。
チッ。
「で、さっきのは何? ボクを魅了して手籠めにする気?」
「まずは座って、食べながら話そう。 呪いや毒なんかは入れてないし、きっと効かないでしょ?」
席に着いてサッとサンドイッチを一口!?
ぐっ……こっ、これはっ!?
目の前で悪い顔をしているミネルバを睨む。
「クックック。舌の良いガキは嫌いだよ……」
「まっ、まさか…………そんな……からしマヨネーズっ!」
うまうまっー!
舌が良いとか悪いとか関係ないでしょっ。うまうまっー!
ちょい辛も付いてうまうまっ!
スープも完璧チャウダーじゃーん!
あ〜ん、うまうますぎるぅ〜。
並んでいた料理を一瞬で完食! スープはおかわりを頂いた。
あ〜、満足だぁ〜。
「ごちそうさまぁ」
「豪華さまでした」
今となってはホント豪華。
あー、珈琲も紅茶も美味しぃー。
「この珈琲と紅茶は? 貴族には普通の味?」
「それもあたしが作らせてる。 なかなか苦労したよー。 今、飲めるのは一部の貴族だけだけど、10年以内には一般化できると思うんだけどねー」
「そっか、やっぱ違うねー」
…………
「ごめんね、罠にはめる様な感じになっちゃって。あたしには効かないから、ユフィにも効かないかなぁ? って思ってたよ。 でも、もし敵意や害意があったら最初から気づいたんじゃないかな? ただ、君が欲しいってのも本当だし、クロエを嫁がせたいってのも本当の気持ち。もう14年も一緒にいるし幸せになってほしいからね、愛故にしかないよ」
故にいる?
「だろうねぇ。 ってか、ボク女だし、ただの冒険者だよっ。 無理でしょ?」
「そうでもないよー? 王宮側はもう当たりつけてるから、そのうち呼び出されると思うけどねー。 髪と瞳の色は魔法で解決できるし、ギルドの記録がドンピシャだしねー。 冒険者でその顔でしょー、目立たない方が無理かなー。 そうそう、妹ちゃんは只今外出禁止だよ。 ユフィに会いたがってたけどねー。 まぁ、ないよねー。 アクセルはまともになるように育てたつもりなんだけどなー」
ちよっと目立っちゃったからね、記録と合わせたらそんな結論になるのも仕方ないよねぇ。
知らぬ存ぜぬで通す事もできるだろうけど。
その後は転生前のお互いの事とかマンガやアニメの話で盛り上がる。
生まれや育ちに共通点なんかは無かったけど転生した時期は近そうだった。
あっと言う間に時間は過ぎて外は暗くなり始めている。
「そろそろ帰らないとねぇ」
「いいじゃん、泊まってけば? 夜、和食頼んでるよ。(キラッ)」
即答で親指を立てた。
話しながらずっとお菓子食べてるんだけどねぇ。
成長期だから大丈夫! 成長期だからっ!