貫くべき正義
この話は、残酷な表現、汚い表現があります。
苦手な方は飛ばしてください。
今日は休日、休日。
まぁ、別に決まった休みとかないんだけどね。
もう昼くらいかなぁ? 昨日は一睡も出来なかった。
睡眠の必要はないんだけど、気持ち的にはすっきりしない。
あーーー、今日は何もしなーい。
何回か静を呼んでみたけど返事はない。
「うーーー、がぁーーーー」
あーーーーー、モヤモヤするぅーーー。
フンッ。
さっと身なりを整えてギルドに向かう。
こんな時間はさすがに人は少ない。
フリルいないぞ。
依頼掲示板から近場の依頼を粗方外してカウンターに向かう。
「おはようネネさん。 これお願い」
「もうお昼も過ぎてるわよ。 機嫌悪いじゃない?」
「べっつにぃーー」
ネネさんは、ギルドマスターの奥さんで、ブラウン系の長い髪を後ろで編み込んで、ちょーぷりちーな女性なのだ。
三十前で二人も子供がいるとはとても思えない。
知らない冒険者が軽口を叩いて、後で青い顔になるのだ。
「今日中に終わらせるのよね? コレとコレ外して、コレをお願いできる?」
「五人ほどの盗賊……で、ブラック……? これは報酬少なくない?」
「そうなのよぅ。 今の内容だとギルドの補助足してもそれだし、初級、新級さんには頼めないし……」
「オッケー、グーグー。 ちょっぱやで終らせてくるよ」
「お願いね。危ないと判断したら情報だけでいいからね」
依頼の色は情報の信用度だ。
ホワイトは信用度の高い情報やギルドで確認済の依頼。
ブラックは信用度が低かったり難度が上がってそうな依頼に付けられるから、初級や新級さんには勧められないのだ。
初級や新級ってギルド職員の見立てで、きっちりとランク分けされてる訳じゃない。
ランク制にしない? って話は随分と前にギルマスには伝えたけど難しいんだそうだ。
ギルド職員もなかなかに大変だね。
裕福じゃない町や村は報酬がだせないから、受け手が見つからなくて追加で女性なんかを要求される事は珍しい話じゃない。
そんなの盗賊と一緒じゃん。
以前どうしても許せない事があって駆除したら、フリルに泣いて怒られた。
ボクが手を汚す事じゃないって。
もう、とっくの昔に汚れてるのにね。
門を出た所でゆっくりラジオ体操。
横目で笑う奴らもいるけど、お前等歳とってから後悔するからな!
って言ってもこのセカイの平均寿命は長くないから、必要無いかもしれない。
今日は件数が多いから飛ばすよー。
獣の討伐系をさっと終らせて、目的の村まで走り抜ける。
「やっぱりかぁ」
遠目に見た感じは普通だけど見張りの装備が良すぎるし、家の外に人がいない。
村の中に魔力反応が18。位置関係からして盗賊は10人ちょいで、村人は女性だけを残して全滅だろうね。
この場合上級者なら討伐してギルドに報告、中級者なら情報収集だけして帰還。
初級者、新級者なら騙されて罠にはめられて……だろう。
アイテムボックスから愛刀「黒龍丸」を出して腰にさげる。
武器を持ってない方がむしろ怪しいからね。
街道を歩いて普通に正面から村をめざす。
見張りは二人。まだ距離はあるけど見張りが目視して笛を吹いてるのが見える。
冒険者証を右手に持って左手も相手に見せたまま近づいていく。
見張り二人はショートソードを構えて警戒の様子だ。
「こんにちは。 旅の冒険者ですが中に入れていただけますか?」
「フードをとって両手をあげろ」
「ほおー。 お前一人か? この村になんの用だ?」
「はい、旅の途中ですので水と食料を分けていただきたいのですが?」
「わかった確認をとる。 ここでしばらく待て」
男が一人奥に走っていく。
まぁ、まずは普通の対応だね。
…………
かぁー、これでもかってほど盗賊な見た目の大柄の男が手下を引き連れてやってくる。
その姿見た瞬間逃げられてもおかしくないよ。
絡め手は無し。 女一人だからってナメすぎだね。
外に11人。 家の中に7人。
家の中は見張りが二人で村人が5人かな。
「お前が旅の冒険者か? 俺はここの警備をしているカシムという」
「こんにちは。 冒険者のユフィです」
「こいつぁ、えらいべっぴんじゃねぇかっ。 冒険者? そんなモン辞めて俺の女になれや?」
「冗談は止めていただけますか」
ボクに伸びてくるカシムの手を払う。
「うっせぇぞ女ぁ。 お前はもう逃げられねぇんだよ! 他の女共と違って一生飼ってやるからよぅ」
カシムと手下が構えたので、ボクも黒龍丸をゆっくりと抜き放つ。
「もう喋るな害虫」
「あん? ちょいと顔が良いからって調子にのっちゃいかんなぁ。 体にたっぷり教えてやらねーとなぁ」
遅いね。
近づいてきた数人の手足を瞬時に切り落とす。
手足から血を吹き出しながら不様に転がるのを冷めた瞳で見下す。
「いてぇーよぉ」「お、俺の手がぁ。 足がぁ」
「テメェ、盗賊狩りかっ。 全員でかかるぞぉ」
残り全部でくるかと思ったのにカシムは下るのね。
だから遅いんだよ。
残りの手下の手足を切り落として、カシムとの距離を詰める。
カシムがその大柄な体通りの重い斬撃を繰り出すけど、ただの棒振り。ボクには掠りもしない。
そのまま同樣に手足を切り落として蹴り飛ばす。
次。
村人がいるであろう家に走って壁を切り裂くっ。
女性達は魔法で眠らせて、見張り二人が驚く間もなく手足を切り落とす。二人の髪の毛を掴んでカシム達の所まで引き摺っていって放り投げる。
「いてぇ、いてぇ。 おい、助けろ。 金ならやる。 お前の手下にもなる。 助けてくれ」
「ああ? お前なんか要るかよっ。 そうやって泣き叫ぶ人達を凌辱してきたんだよねぇ。 命乞いする人達を殺してきたんだよねぇ。 なんで自分達は殺されないと思ってるわけ? ねぇ、ねぇ、ねぇねぇねぇ」
カシムを足で転がして股間に黒龍丸を何度も突き立てる。
…………………………
「害虫。 悔いて逝けよ。 喰らえ……黒龍丸」
黒龍丸から吹き出した黒い炎竜が男達を足首からゆっくりと食い尽くしていく。
泣き喚いているけど止める気はない。
止める訳がない。
「悪・即・斬」
この言葉が一番しっくりくる。
それはボクが貫かないといけない正義。
終わった後に残るのは焦げ跡だけ。
眠ったままの女性達にローブを着せて、魔力で作ったフロートボードに載せていく。
全員抱える事も出来るけど、見た目が悪すぎる。
王都まで走って帰って、ギルドでネネさんに女性達をお願いして帰路につく。
足早に宿に帰ってお風呂に入り、自分に魔法をかけて無理やり眠りに落ちた。




