女神と眠れない夜
「…………美味じゃの」
「…………………………」
静が体を寄せて、頭を預けてくる。
…………………………
「ユフィ?」
「…………………………」
「ユフィ…………?」
「…………………………」
また、耳にやわらかい感触が。
「ひゃいっ」
「魔力を吸いすぎたかの? 大丈夫か? 気分は悪くないか?」
まだ頭がぼーっとする。
「だ、大丈夫……? うん、大丈夫……。 ね、ねぇ……、し、静は…………、いつもそうゆう事するの?」
「そうゆう事?」
「そ、その…………。 キ……、キス……とか……」
「何を言っているのじゃ、初めてでもあるまいに………………」
「………………」
「まっ、まさかお主…………」
「そ、そんな事ないしぃー。 ちょっと、びっくりしただけだしぃー。 キスくらいした事あるしぃー。 バカじゃないの15才だよ、結婚してたっておかしくない歳だしぃー。 キスどころかそれ以上だって経験済みだしぃ。 あー、やだやだー。 何を言い出すんだろーねー、この子はー。 おませさんだねぇー」
「………………。 なんか、すまぬ」
「な、なにを謝るのかなぁー? なにもないしぃー」
「ユフィは、もう特別な存在じゃ。私様はよい出逢いをしたの」
今度は静がボクの頭を抱える。
静はとてもいい香りで…………。
ボクの全てが静の香りで満たされた。
随分と長い時間二人で佇んでた気がする。
風景が変わらないので時間はまったくわからない。
「ありがと、静」
「うむ、ありがとうじゃ、ユフィ」
「よしっと、そろそろ帰ろっか? 静はどうするの?」
「うむ、私様が顕現し続けるにはまだまだ魔力が足りぬ。 しばらくは魔力を貰いつつユフィの中で眠る事になるかのう」
「一気に回復する方法とかないの?」
「お主の魔力量なら出来なくもないが、丸七日程は吸い続ける事になると思うがの」
目を細めて舌ペロする顔が妖しくてこわい。
「すいません、いいです」
…………………………
「空間を閉じるぞ」
すぅっと空間が消滅すると、静の姿は消えて、キングの店の中に戻っていた。
「お帰りなさい」
「ただいま、キングさん」
「今は夜中ですよ。 フェイクは少し前まで飲んでいたんですがね。 何か飲みますか?」
「いえ、今日は帰ります」
「そうですか。 いかがでしたか?」
「その話も後日でいいですか? では、失礼します。 ありがとうございました」
「えぇ、ぜひまた来てください」
店を後にして、壁を足場に屋根に上がり、夜の町を足早に駆け抜ける。
走れば一時間もかからない。
途中に騎士っぽい姿につけられたけど、面倒なので置き去りにして宿まで帰った。
いつもの様にカウンターで二人に挨拶して、女将さんにお酒とおつまみを貰って部屋に上がる。
もうステラは終わってるみたいだね。
「静?」
寝てるのか、返事はない。
ボクの中に魔力を感じるから、いるのは間違いないみたいだけど。
お風呂に入ってパジャマに着替える。
少しお酒を飲んでから、ベッドに潜り込んだんだけど。
はぁ、眠れない、眠れる訳がない。
胸のドキドキがとまらない。
唇の渇きをお酒でごまかす。
「静のバカ」
ベッドでゴロゴロ転がってたけど眠れなくて、結局朝まで本を広げてお酒を飲んで過ごす。