さようなら
「やっと、やっと来ましたわね。 機会が永遠に失われるところでした」
フブキとグリーンに案内されたフロアにはシアと紅い目の黒兜の女騎士。
そっか、最後の試練は彼女か。
「最後に貴方に出会えたことは幸運でした。 さぁ、わたくしに何か言いたいのであれば、その力を示しなさい」
「うん。 わかってる」
気迫よし。覚悟よし。マスクごしでも力強い眼光を感じる。
「来なさい、炎神スプリガン。 バズリウムチェンジ」
「…………」
喚び出されたばかりのスプリガンがその姿を変えていく。
「ねぇ、シュアの衣装は変わらないの?」
「変わるわけがないでしょう。 何をおっしゃっていますの?」
「そうだよね」
「集中を乱さないでいただけます?」
「はい、すいません」
「バズリウムチェンジ」
鎧騎士の赤い炎が黄色みを帯びた色に変わって、さらに輝きを増す。光ってるだけまだマシ? そんな事思ってる場合じゃない。
「すべての魂に安息を。 スプリガンレクイエム」
圧倒的だった。
レクイエムの炎の斬撃に防壁は役にたたず。部分召喚した魔装機の実剣やベイルは溶けてしまう。無駄にする事もできないから喚び出す事も出来ない。
小さく炎の精霊イフリート君を喚び出してみたけど、レクイエムの炎の権限は奪えないし、全力でも向こうが上なんだそうなので戻す。
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁ」
いったぁぁぁぁぁ。
読まれた。飽和攻撃を転移で避けた先を狙われた。
炎に包まれた剣先が腹に深々と突き刺さって、そのまま床に張り付けにされる。
痛みのほとんどは自動でカットオフされるけど、損傷の回復と炎の対処に体力と魔力の回復が間に合わない。
生きてるって事は手加減はされてるんだろうけ抜けない。動けない。
「さすが、死なないんですのね。今日は楽しかったです。 わたくしのマナがなくなればレクイエムも消えますので、それまでせいぜい頑張って生き延びて下さいね。 では……さようなら」
彼女はそのまま振り返る事なく去っていく。




