女神と…………と
厄災の女神の中の一柱、サイレン。
人族には、「北の魔神サイレン」の名の方がわかり易い。
遥か昔、良い神と悪い神が争ったとされる戦争で名を上げた一柱だ。
北の大陸には、山が吹き飛んで平地になった場所や斬撃で切り裂かれた深い谷間、町がえぐり取られて出来たと言われる湖など爪痕が多数残っている。
神話では巨人の姿で描かれているけど、まさかこれ程可愛らしい女子だとは。
ちなみに、このお話は長い年月戦い続けて、決着がつけないまま終わっている。
「ひやっ」
静が不意に耳をはんでくる。
「ちょっ、ちょっとぉ」
「いや、横顔がかわいくて、ついの……」
泣きはらした瞼の静は、いたずらっぽく笑った。
その顔はずるい。
「ありがとうなのじゃ。 泣いたら、すっきりしたの」
「…………。そうだね、ボクお腹空いちゃったし、おやつにしよっか?」
「いや、別にまだ空いとらんがの……」
アイテムボックスからクッキーとティーセットを出して紅茶をいれる。
「ねぇ……、これからどうするの?」
「ユフィ、私様の依り代になれ」
「そんな「俺の女になれ。」みたいなノリで言われても困るんだけど……」
神との戦いかぁ。
そんなシナリオも予定もないんだけどなぁ。
神がこのセカイで力を使う為には依り代が必要で、フィーネは人族の死体を依り代にして血肉で生命を補充している。
太古の昔はもっと空間の魔力が濃くて、いくら使っても疲れなかったらしい。
生命を魔力に変えて使うから、人を依り代にする場合は力を使う為の条件がある。
新鮮な死体、意識が無い状態、心が通い合ってる事、心が服從してる事。
死体は生命の量が減っていずれ朽ちる。
心を通わせたり服從させた場合は、その度合いによって発揮できる力の強さが変わってくる。
人の心は難しい。
どれほど打ち解けても完全に通い合う事はない、だから静は力でボクを服從させようとしたのだ。
「私様の依り代になればお得じゃぞっ。 お主が絶対絶命のピンチに陥って気絶する、もしくは死亡する。 するとじゃな、私様が顕現して変身するのじゃ。 「魔法少女 プリティしずか参上! 悪の組織は許さないぞ!」 となる訳じゃ。 どうじゃ、問題あるまい?」
静は謎のかわいい衣装に変身する。
「問題だらけだよっ! ボクの気絶前提だし、死ぬ前に助けてよ! それに「プリティしずか」って、ただの「かわいい しずか」だよぅ!」
「そうなのか? ならば、「美少女戦士 セーラーしずか」ならどうじゃ?」
「名前の話じゃないし、自分で「美少女」付けるなー。 ってか「しずか」をやめれっ! じゃなくて、ボクを変身させて、静は小動物になって浮いてるパターンでしょうがっ!」
「それこそ、何を言ってるのかよく分からんのじゃ。お主恥ずかしくはないのかの?」
きぃーーーー。
そのジト目ぇーーーーー。
実年齢はともかく、残念ながら見た目年齢なら静のほうが適正年齢だ。
でも、まだ15才だよ。魔法少女に変身したって良いよね? ねっ? フリルの服着てもいいよねっ?
かなた君よ、神にいったい何を吹き込んでいるんだ。
「まぁ、それは半分冗談、神ジョークじゃ。 ヨホホホホ。 変身は必須じゃがの」
なんだ、神ジョークって? 変身が本気ならどこが冗談だ?
「私様は……、フィーネを倒すのじゃ。 だが、力が足りぬ。 ユフィ、協力してほしい。 一緒に来てくれずともよい、ただ力が回復するまで魔力をわけて欲しいのじゃ」
ボクを見つめる目は、意思は感じるけど弱々しくて不安が見てとれる。
「…………うん。 わかった」
「よいのか?」
「うん、ボクも静と一緒に行くよ」
「大丈夫じゃ。 フィーネの所には一人で行くゆえ、力を分けてくれるだけでよいのじゃ……」
すこし俯いた静の手を取って傍に抱き寄せて、頭を撫でる。
「大丈夫。大丈夫……」
…………………………
目を綴じたボクの頰に静の手が、そして唇に指が触れる。
「しず…………」
そっと静とボクの唇が重なる。
やわらかい。
優しく入ってくる温かくてやわらかい感触に思考がとける。
言葉を発する事を頭が拒否する。
お互いの魔力が濃厚に混ざり合っていく。
…………………………………………………………
「んっ…………」
唇が離れても残る甘い余韻を指で確かめる。
朱く染まった頬と濡れた唇の静が、とても魅力的に見える。
作品を読んで頂いてありがとうございます
至らない点が多数あると思いますが減らして行けるように頑張ります
面白かったな。続きがきになるな。と思っていただけたら評価ブクマお願いいたします
作品は今後も加筆、修正あります
投稿は不定期です
先に閑話的作品を投稿してます、一緒に読んで評価いただけたら嬉しいです。
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