ウンディーネちゃん、お願い
「準備はええか?」
「望むところっ」
「来いや、フォルネウス」
召喚される複数の巨大鮫。
「はなから全力や。 バズリウムチェーンジッ」
は?
「エンペラー、フォルネウスゥ」
全ての大鮫が集まって一つの大きなかたまりになる。
「ほら、いくで」
「ちょっと待って」
「どないした? こわなったか?」
「何バズリウムチェンジって?」
「進化形態や。 いかついやろ」
「は? やだよ。 バズってもないし輝きもないし、鮫にやられても迷惑だよ。 違う言い方にして」
「言い方もなんもないわ。 バズリウムチェンジはバズリウムチェンジや」
誰だよ、変な名前つけた奴。
「それ、みんな言うの?」
「みんなできてたまるかい。 ほんまに努力したわ」
「そ、そう……」
「ええか? いくで」
「へーい」
はぁ、誰かやる気スイッチ押してー。
ふむふむむ。大きいだけなわけないよね。
フィールド全体が水で包まれて、動きの制約もだけど呼吸するだけにも魔力を消費する。
人間の動きにくい空間を巨大鮫は水を得た魚のように……うん、水を得た魚か……。鮫って魚だよね?
シアは平気みたいだけど、フブキの力が作用してるのかな。
今日は水の中だし大丈夫だよね。
ポケットから謎のボールを取り出してかざす。
「ウンディーネ、君にキメたっ」
ポンッ。
光と共に清楚でおしとやかな少女が……。また怒ってる。
「へんな喚び出し方すんなっ。 ゲートはちゃんと開けよっ」
「すいません」
「今日は水の中だから許してやるけどさっ。 次こそはちゃんと喚べよな」
「はい」
魔力消費が膨大なのは変わらないけど、昨日よりは全然まし。水を作る魔力分多くかかっちゃってたんだもんね。
自我を保ったまま悪魔を召喚するのは大量の魔力を消費し続ける。今のウンディーネちゃんも保って数分だね。小さく喚び出したら消費魔力が小さいかわりに幼かったり、自我がない状態になるから遊びや使い魔程度の使い方しかできない。FF方式で固有スキルを一撃放って戻す方がこのセカイでの使い方としては正解だと思う。数分で魔力切れでダウンってヤバいよね。
「ウンディーネちゃん、お願いっ」
「任されたっ」
悪魔とはパスが繋がってるからどんな状態でも頭で会話ができるし、強制的に命令や操作もできる。シアとフブキを攻撃対象から外すのも忘れてはいけない。
勝負は一瞬だった。普通に見ていても何が起こったなんてわからない。何も起こってないのに大鮫は息絶える。この空間程度の水は全てが彼女だから。
「おわりっと。 じゃ、またなぁ」
「ありがと。 またね」
フブキは終わったままの姿勢で固まってる。
「……。 ウソやろ」
「これほどとはね」
「もう魔力ないけどねー」
「それほどの精霊だもの、しかもあたしとフブキはしっかり避けてるなんてね。 完敗だわ」
「シアとは戦ってないじゃん」
「あたしよりフブキの方が強いのよ」
「一撃で殺すのに?」
「あたしはアレしかできないの。 真正面から挑んだら近づく事も出来ないわよ」
「そーなんだー」
シアは近接格闘型って事かな? どんな精霊なんだろ?
「次で最後や」
あっ、動いた。
「お前の気持ちに縋らせてもらう」
「わかった。 でも休憩」
「だな」




