関西弁、難しいわぁ
って、隣の部屋やないかい。
部屋に入ると男はシャツを脱いでタバコに火をつける。体中に模様が入っていて、背中の女神の姿はシュアを思わせる。
まぁー、なんて様になるのかしら? カッコよすぎて鼻血が出るレベルですわよ。こーゆーキャラって一度は通る道だよね。
ボクも破れた寝間着からさっと着替える。別に脱がないよ。ステッキをくるっとしたらキラリラリンッって着替えられるからね。殿方の前で服を脱ぐなんて考えられませんわよ。
「腕、もう治したんか。 一瞬やな」
「自分から折るやなんて、あんた頭おかしんちゃうか?(関西弁しんどっ。 話ててわからんくなるわ)」
「あぁ? アホか? 折らんかったら死んでもおかしない状況やんけ」
「ボクがそんな人間だとでも?」
「そんな人間や思たから手だしたんやんけ。 お前、人殺しやなくて本物の人斬りの目しとるからな。 本気で怖い思たんは久しぶりや」
「別に嬉しくはないね」
イケメンの名前はフブキ。
ペラペラ話す感じじゃないけど無口じゃない。感情は少ないけど淡々と話をしてくれる。
それにしても人の事をバカ、アホ言ってくる。ぷぅ~。
元々は貴族なんだけど没落して家名はない。小さい頃にレッドフレア家に引き取られて付人としてシュアを兄の様に見守ってきた。
精霊召喚は神殿で自分の血と引き換えに授かる事ができるけど、貴族や騎士団の口添えが必要なので平民が簡単に貰える物じゃないらしい。
シュアは不器用で頑張りやで一途。好きな人の為を想って行動して今の状況になる。残酷な内容もあるけど、その結果はどれも国の安定に繋がっている。自分が表に立って無法に闇を排して、全てを背負って死ぬのだと言う。
「フブキはシュアの処刑の事どう思ってるの?」
「どうも思てへん。 お嬢が覚悟決めてる以上俺が口出しする事やないからな」
「ホントにそれでいいの?」
「良いも悪いもない。 そう決まった事や」
「フブキの気持ちは?」
「お前……どんなけ気楽に生きとんねん? 気持ちなんかいらん。 背けば一生追われる身や。 生きとっても未来なんかない」
「なら、変えよう。 この国を」
「お嬢にもそんな事ゆうたんか?」
「うん。 ボクには関係ない話って」
「そうやな。 お前にも、ただの兵隊にも関係ない話や」
「ボクは諦めたくない」
「それ、ホンマに言うてんか?」
「うん」
「ホンマにアホやな。 なら覚悟見せてみぃ」
「覚悟?」
「明日……今日やな。日没後、ここに来い。 お前の強さ見せてみろ。 期待してへんからこんでもええけどな」
何か書いて渡された紙には町から離れた場所にバツ印のちくわ?
「うっわ。 へったくそ」
「うるさいわっ。 しばくぞっ」




