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もう一度……


「ふぅ、馳走になった。久方ぶりの食事が、これ程までに美味に感じるのはお主のおかげじゃの。」 

「どうも、お粗末様でした。」


 食べ終わりに温かいお茶をいれる。

 お弁当の後のお茶はしみるねー。


「なかなか出来た娘じゃのう。」

「最上でしょ。」

「うむ、最上じゃの」


 ………………


「…………、随分と古い話になってしもうたが、 私様はある転生者と一緒に旅をしておっての。静という名は、そやつが名付けたのじゃ。」


 名は、かなた。

 素直で明るくてお人好しな性格で、魔力も多く腕はたったのじゃが、損得勘定せずに行動するから、たいした財もなくてな。


 お主と違うて酷く不器用な人間での、お互い食事の準備が出来ぬから、旅の間はえらく苦労したものじゃ。

 大きな獲物から小さい肉しか採れんかったり、魚が半分以上炭になってしもうたり、あやつが毒で即倒したりしたのう。


 フフフッ


 二人でセカイ中を周っての、楽しかったのう、実に楽しかった。



 ある時、獣に襲われておる母子を助けたのじゃが、母子は、娘子がフィーネの巫女に選ばれてしもうて、フィーネ聖王国の聖都に向かう途中でな。

 母一人、娘一人の家族であるから別れを酷く嘆いておった。


 フィーネは美しき物を好む。

 そして人族には知られておらぬが、いつしか集めた物達を凌辱し、その血肉をす啜る様にになっておっての。


 それを聞いたあやつは、フィーネに直談判に行くと言い出したのじゃ。

 相手は神じゃ、碌な事にはならん。

 じゃが、あやつの意思を止める事が出来んかった。


 フィーネと会う為の条件で、あやつは一人で装備も持たずに神殿へと向こうた。

「大丈夫だよ。ちゃんと帰ってくるから。」と、言い残しての。

 

 じゃが、あやつは帰ってこなんだ。

 次の日も、その次の日も……。

 命の繋がりがあったから、生きている事だけはわかっておったのじゃが。

 七日経った頃に繋がりが潰え、同時に我がおった建物一帯が消滅したのじゃ。

 

 依り代であったかなたとの繋がりを……失った我には、ただ……傍にあった……剣を依り代にして……、内に引き……籠もる事しか出来んかった。

 

 殺してでも……止めておけば良かった……のじゃ。


 瞳に溜まっていたいた涙は、大粒になって頬を伝う。

 静をそっと抱きよせる。

 その体は、今にも消えてしまいそうなほど小さかった。


 かなたと過ごした時間。

 花の香り、夏の日差し、波の音、木漏れ日の昼下がり、雪の足跡、全てが輝いておったのじゃ。

 今でもかなたの話方が、交わしたとりとめのない会話が、匂いが、体中に染み付いて離れんのじゃ。

 胸が苦しくなるのじゃ。

 失くしたくないのじゃ。

 行かないでほしかったのじゃ。


 もう一度、もう一度。

 もう一度………………、逢いたいのじゃ。


 かなた……、かなた……、かなた……、かなた……、かなた……、…………、………………。


 子供の様に泣きじゃくる静をきつく抱きしめる。

 ボクも溢れる涙をとめる事が出来なかった。

作品を読んで頂いてありがとうございます。

面白いと感じてもらえたら、いいね、ブックマーク、☆評価お願いします。


至らない点が多数あると思いますが減らして行けるように頑張ります。

作品は今後も加筆、修正あります。

投稿は不定期です。


先に閑話的作品を投稿して……と思ってたんですが、本編と大幅にズレてきたので書き直しか別の作品になりますね。

一緒に読んで評価いただけたら嬉しいです。

本編の執筆が忙しく更新は止まっております


https://ncode.syosetu.com/n2673im/


カスタムキャストでイメージを作ってみました。


※画像はイメージであり、実際のものとは異なります。

挿絵(By みてみん)


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