幸せすぎてヤバい
「アッシェッ、アッシェ〜。 ほいほほーい」
「ユフィ様、廊下は静かにお願いします」
「ほーい」
「サッシャッ、サッシャ〜。 るんるるぅ〜」
「ユフィ、うっせぇ」
「ほいほーい」
「アシェ、サシャおっはよー。 」
「おはようユフィ。 朝から呼び付けといてすまないんだけど、ミネルバが呼んでる」
「そっか、承知。 アシェの用事は?」
「あたしはマジな手合わせしたかっただけだから、時間ある時でいい」
「ん、了承」
「ミネッルバッ、ミネッルバ〜。 てっててってて〜」
「ユフィ様。 自室の外ではお静かに願います」
「ほいっ」
「浮かれてるわね」「浮かれてますね」「緩みすぎぃー」「だらしな」
ミネルバの部屋の前には姉様達が並んでる。みんなからコメントをいただいたのでクーンに取り次いでもらって入室する。
「…………でねー、王子と平民出身の聖女様が結婚するんだけど、王子には元々は公爵令嬢の婚約者がいたんだよね。 で、その公爵令嬢は聖女殺害を企てた罪により婚約を破棄されて投獄された」
「うわー。 絵に描いた……原稿に書いた様なテンプレー。 なろう?」
「違うわよー。 現実だからねー。 で、結婚式の場で公爵令嬢の処刑も行われるって話で、ちょっと普通じゃないよね? ファーレンとはまったく関係ないんだけど、ちょっと気になっちゃってさ」
「行く」
「まぁ、そう言うと思った。 ただ遠いし情報が遅かったからあと十日しかないうえに、あたし達は一切手出だしできない。 それでも?」
「うん。 悪役令嬢を助けるのは転生者の務めだからねっ」
「悪役令嬢はあんたっ。 だけどホントに悪人かもしれないし、残酷だけど見極めはしっかりして、入れ込んじゃダメよ」
「わかってる」
「いつ出るの?」
「三日はかからないと思うし、明日かな? 今日はフェルミナといてあげたいし、タキナとも過ごしたいからね」
「ん。 要る物あったら持って行っていいからね」
「ありがと」
まぁ、旅の用意は常に持ってるからね、ユリちゃんにお願いして料理の補充くらいかな。
ミネルバの話の後はタキナのとこに。
ギルドに入るとすぐに見つけて微笑んでくれて胸が高鳴る。一瞬にして傍にきて唇を合わせてくれる。
「お昼は一緒にすごせますか?」
「うん」
「はいっ。 待ってて下さいねっ」
すぐに戻ってしまうのはさみしいけど仕方ない。
ほとんどの冒険者には一瞬タキナが消えた様にしか見えない動き。隠匿もしてるしボクのとこに来て、戻ったのがわかった人はいないと思う。
「どう? あとどれくらいかかりそう?」
「そうですね。 あと七日ほどは必要ですね」
「そっか……」
「なんですか? また歯切れが悪いですね、今日の口づけは無しにしましょう。 あっ、もうしてしまいましたね」
「ごめん」
「でも、それだと私が不満なので困りますね」
「…………」
「冗談です。 何かありましたか?」
「うん、あのね。 ………………それが気になっちゃってさ」
「そこまで詳しくはないですが王太子が結婚する情報は少し前のギルド報にありましたね。行きたいんですね?」
「うん」
「遠いですから、間に合うかどうか。 まっすぐ行くにしても越えるのが困難と言われている山脈と谷がありますよ?」
「それでも行きたい」
「わかりました。 いつ出立しますか?」
「明日かな」
「では、夜は部屋に戻りますね」
姉様達の気遣いでフリルの訓練も軽かったらしくて、意識のある元気な状態で戻ってきてくれて、ここ数日の話でお茶をしているとタキナが戻ってきたので、フリルと二人であらためて感謝を伝える。
三人で抱き合って喜んでるとこにフェルミナが戻ってきて、膨れる事になるんだけど、タキナは妹の扱いは上手いから問題ない。フリルはまだちょい抵抗がある感じかな?
四人で食事して、入浴して、揃ってベッドに入るけど、フェルミナは戻ってきた時からずっとそわそわして落ち着きがない。ボク? ボクは……と聞かれても……。
大切な人と笑いあって、好きな人の温もりに包まれて。幸せすぎてマジヤバいんですけど。
………………。
今日はタキナも遅い始業にしてもらっていたので、みんな一緒に部屋を出る。
自分で行くと決めたのに、時間が惜しくて泣きそうになる。
「一緒に行けなくて申し訳ありません」
「大丈夫。 行くって決めたのはボクだし、一緒に行けないのは、タキナがボクとフリルの為にしてくれた事だから仕方ないよ」
「くれぐれもお体を一番に考えて下さいね」
「うん。 ありがと」
「お姉様共々ずっとお待ちしておりますからねっ」
「いってらっしゃい。 ユフィ」
「いってきます」




