絶対に負けたりしない
ボクを挟んで眠る二人の寝顔がかわいい。
起こさないように髪をいじったり、くすぐったりして朝までの時間を過ごす。
小さく反応するのが嬉しくて、ギリギリのところを交互に繰り返す。
時間になってフリルに唇を合わせたら、ゆっくりと重ね返してきてくれるけど、少ししてからフェルミナと目が合ったフリルの表情が変わって、唇を離してベッドから降りて姿勢を正してしまう。
「フェルミナ……殿下……。 大変なご無礼をいたしました。 すぐに退室いたします」
「お待ち下さい。 フリル様少しお時間をいただけますか?」
フリルは視線でボクに確認をとって、フェルミナの手の促しに従ってベッドに腰掛ける。
「フリル様。 私はユフィ様と共に歩む事を決めました。 そしてユフィ様の幸せの為には貴方様が必要です。 生まれの身分などは関係ございません。 私をフリル様の義妹にしていただきたいのです」
「…………」
タキナとは違って困惑の顔をみせるフリル。ボクと関わってきた事以外は普通の町娘なんだから仕方ない。
「ユフィ……?」
「えっと、ボクのせいで最初から複雑になっちゃって……。フリルが大切なんだけど、タキナもフェルミナも同じ様に大切で……ゴニョゴニョ」
「ユフィ様っ」
「はいっ。 ボクはフリルがずっと好きだったから、大好きだから、これからもずっと一緒にいてほしいです」
「……うん、私もずっと好きだった。 だから……これからもよろしくお願いします」
「ふふふ、なんの問題もございませんわね。 ではフリル様。 これからは義妹として、よろしくお願いいたします」
「……はい。 謹んでお受けいたします」
唇を重ねてフリルをベッドから送り出すけど、フリルの袖をフェルミナが掴んで引き留める。
「お姉様、私にもお願いいたします」
また困った表情が見えるフリルに頷きで返す。
昨日をなぞるけど、今日は絶対に我慢だ。フリルを遅刻させたら、姉様達の信用がウナギ下がりになる事間違いなしだ。唇を重ねながら流し目を送ってくるフェルミナにだって負けない。絶対に負けたりしないんだからっ。
信用より愛情のが大事じゃん? 大切なのは恋人との時間でしょ? そうなんだけど違う。それは論点が都合の良い様にすり替わっている……。うー、頭がぐるぐるする。
耳まで紅くなったフリルがひどく魅力的で……。おかわりはせがむのだけど唇を軽く合わせるだけでスタスタと準備に入ってしまった。
「行ってくるね。 あまり相手できなくてごめんね」
「うん、大丈夫。 頑張ってね」
口づけしてフリルを送り出して、廊下で待機していたエストアとゼニス達を招き入れる。フェルミナは正装しなきゃだし準備も化粧もさすがに時間かかるからね。
「おはようエストア。 これからもフェルミナの事よろしくね」
「仕事だし、ユフィの大切な人だし、しっかり護るよ。 ユフィ、今日は予定はないよね? 姉様が呼んでるよ」
「ん、承知」
エストアにお茶をだしてフェルミナを眺めてたんだけど少し口をだして化粧を薄くしてもらう。このセカイ設定での正装は過剰美白でチークや頬紅が濃すぎるのだ。フェルミナもフリルも化粧しなくてもかわいいのに。
「ユフィ様。 夕刻には戻ってまいりますからねっ、いいですねっ」
「はい……」
むぅ、半日じゃどこにもいけないのだ。兄様と姉様に甘えに行くかぁ? まぁ、先ずはアシェんとこ行かなきゃだけどね。




