さすが異世界。鬼っているんだなぁ。
ボクの結界の消えた修練場に鬼が入ってきた。
嵌められた。時間も、ボクの疲労度も。
気が付かなかった訳じゃなくて、気にしてなかっただけだけども。
「あっ……うっ」
「ユフィさま」
「ひゃいっ」
顔はにこやかなのに目が怖い。薄紫色のキレイな巻き髪もゆらゆら浮かんで見えて、陰のオーラが沸き立っている。
「そこにお座り下さい」
「はい……」
いきなり帰ってきたフェルミナやアシェ達の前で地面に正座させられる。
なぜこんな事に……。いや、ボクが悪い。
「ユフィ様はファーレンに戻って何をなさってますのっ?」
「はい……、申し訳ありません……」
「申し訳ありませんではありませんっ! 私はお待ちしているとあれほど申し上げておりますのにっ。 ………………。 ……………。」
「すいません……」「ごめんなさい……」「もうしません……」
うっうっうっ……。
「殿下。 お時間です」
「ふんっ、仕方ありません。 ユフィ様の身支度をお願いいたします」
「畏まりました」
「ユフィ様。 償いは後ほどたっぷりとしていただきますからねっ」
「はい……」
「お前が悪い」
「ユフィちゃん。 めっ。 ですよぅ」
「ほんとバカなんだから。 行くわよ」
さっと体を洗われて身支度された後は馬車に放り込まれる。
アシェ達は馬車には乗らなかった。フェルミナと二人でのお出かけみたいだ。
「ねぇ、どこに…………んっ、んあぁ。 ダメ……だよ。 服……よご……れるからぁ」
「申し訳ありません。 我慢などできません」
「んーー」
絡みつくフェルミナに抗う事はボクには出来ない。
到着前の呼び鈴が鳴るまでゆっくりとなぶる様に責められる。
優しさが足りない……。うっうっうっ。
朝の疲れもあって頭がぼーっとするけど、魔法で洗浄と乾燥して、衣服を整える。
えー、うそでしょ?
ドアが開いて降ろされた場所は冒険者ギルドの前でした。
朝の広場はすごい人混みなんだけど、衛士達によりスペースは確保されている。
赤い差し色の騎士団服のボクの登場でもかなりの歓声が上がるけど、顔はヴェールで隠したドレス姿のフェルミナの登場に広場中が熱気に包まれる事になる。
ギルドにお偉いさんが来るのは珍しくないけど、こんな時間の訪問はなかなか無いに違いない。
ギルドの前にはネネさんと数人の職員が出迎えに出ていて、フェルミナと一緒に挨拶を受けるのは非常に恥ずかしいのですが?
扉が開けられてみんなの注目があつまる。二階への通路だけ確保されてるロビーを通るのだけど、知った顔もある中のこれは羞恥に耐えられない。
階段を上がった先の応接室の前にはロビーに姿が無かったタキナが立っていて扉を開けてくれて、ネネさん達はフェルミナに一礼して下がっていく。
「フェルミナ王女殿下、どうぞ」
「タキナ様。 本日は私の用件で参りました。 タキナ様が奥にお願いいたします」
「畏まりました」
タキナ怒ってる? 緊張する。気が張っていて重たい。逃げ出したいのを我慢して最後に入室して扉を閉める。
フェルミナが奥で立っているタキナに着席を促してからヴェールをとる顔は、緊張が伝わってくるけど凛々しくてとてもキレイだった。
「タキナ様、お時間をとっていただき感謝いたします。 お話は伝わっていると思いますが、今後の関係についての承諾をいただきたく参りました」
「フェルミナ様。 私は身分無き立場です。 これからユフィ様を支えていただけるのなら、これほどの幸せはありません。 私は命ある限りお二方に仕えさせていただきたく思います」
「お言葉ありがたく思いますが、身分など関係ございません。 ユフィ様のお顔を見ればわかってしまいますもの。 悔しくもありますが、お側はタキナ様でなければなりません。 ですから私を伴侶の一人として義妹になる事をお許しいただきたいのです」
「私などに許しなど必要ありません。 ありがとうございますフェルミナ様」
「いえ、これからは義妹としてフェルミナと」
「わかりました。 よろしくお願いしますねフェルミナ」
「ありがとうございます。 お姉様」




