ぱねぇんすけど
部屋に戻ってしばらくするとノックがあって、眠ったフリルをビルドがベッドまで運んできてくれる。
「フリルどう?」
「元の能力が高いから、普通のメイドとしてなら問題ねーけど、強くなれるか?ってんなら絶望的だぜ。 アイシャなんかと違って普通に生きてきた娘だからなー」
「そだね」
「夜の訓練はダメだかんな」
「しないよ……」
「さみしいなら、相手してやるぜ」
「やだよ。 闘る気まんまんじゃん」
「遠慮すんな」
「してないっ」
夜も更けた頃、気になる気配があって屋上にあがって長椅子に座るとすぐに傍らに小さなメイド服が舞い降りる。
「ユフィ様、どうぞ」
「うん、ありがとうイヴ」
差し出されたカップを受け取って口に運ぶ。
「あんまっ!」
「そうですか? ユフィ様は甘い方が良いと姉様から伺っておりますが?」
「普通の量でいいからね」
「夜も暑くなったね。 暑くなると不審者が増えるの?」
「学院が始まった頃から増えてます。 アレクシア王女殿下がご入学されたのが原因の一つかと。 今年は異例な事ばかりです。 私達が学院に遣わされるのも、ユフィ様が来たのも、姉様が身受けされたのも……」
「……イヴは、ほんとにタキナが好きだね」
「…………はい。 姉様は特別です。 ユフィ様にとっては幾人かの一人でも、私にはたった一人の姉様です」
「その言い方はボクの大切な人達をバカにし過ぎだよ」
「申し訳ありません……」
「でも……、ボクにとってもタキナは特別だから負けてあげない」
「……はい」
不審者はなかなかの手練れだったと思うけど第一騎士団の下人達に処理されて、怪我人はいそうだけど死者はいない。
早朝、メイド姉様達より先にパウラが訪ねてきた。
「おはよう二等兵。 昨日もお楽しみだったかぁ?」
「誰が二等兵かっ。 してないですぅ。 こんな疲れてるのに何もできないよ」
いままではボクより早く起きるフリルだったけど、この二日は寝返りする事もなく死んだように眠ってるから、時間になったら唇を重ねて起こす。 むくれながら嬉しそうなフリルがかわいいのだ。
「パウラは早いね。 どうしたの?」
「ちょっと目が開いちまったからな。 話でもと思ってな」
「そんな時間じゃないけどね」
パウラの朝は実は早い。昼は学院で生徒達を鍛えて、夜はミネルバを鍛えて、朝は自分を鍛えるのだ。ミネルバと夜通し鍛えてる日もあるんだけど……。
「二等兵、少し付き合え」
「おけ」
死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬー。
RED、ぱねーんすけど。部分召喚の段階でもまったく歯がたたない。圧倒的なパワー差に解析の暇をくれない防壁の構築更新。
くぅぅぅぅ。手数は出すけど抜けない。REDの斬撃を防壁を重ねて勢いを削いでベイルで弾くしかできない。
「かっかっかっかっ。 二等兵をいたぶるのは気分がいーなー」
「いつも通りじゃんかっ……と」
パウラが全力でも簡単にやられはしないと思うけど勝ち筋は見えない。これが中の上の強さか……。きっとジュノーより強い。タイプⅡやジュノサイザーとも段違いだわ。
「今日はこの辺にしといてやるか」
「学院でギッタンギッタンにしてやるぅ」
「かっかっかっ。 甘くて賢しい貴様がそんな事できないのは承知の上だぁ」
「ぐぬぬぬぬ」
あー、魔力ごっそりなくなって、だりぃー。午前中は少し寝よう。
ふらふらとあくびしながら部屋に戻るボクをパウラが後ろから抱きしめてくるけど、汗で湿った体の柔らかさが、かなりえっちぃ。
少し耳に舌を付けてから囁いてくる。
「んっ……」
「闘いに夢中で気付かないとはまだまだだな二等兵……」
「!?」
「貴様はすぐ逃げるからな」




