優しくて……甘い
タキナとフリルもボクの命を優先しようとすると思ってるけど、ボクの指示には従うはずだし、フェルミナは冷静に判断する事ができると思う。
でもアイシャはそんな時がきたら、きっとボクの思いより自分の想いを優先する。嬉しいけど、そんな事はしてほしくない。ボクの為に誰にも傷ついてほしくはないから。
なぜアイシャがボクとフリルの間にわって入って寝るのかわからないけど、今日は仕方ないか。
軽く唇を合わせるけど、伸びてくる手はしっかり抑えて眠りにつく。
二人を送り出したら用事は無いらしいのでギルドに向かう。気になる? ううん。会いたくて仕方ない。
歩いて行くつもりだったのに、一瞬で付いてしまった。
少し扉を開けて覗き込むと、人の多いロビーの向こう。カウンターに美しく咲く彼女に吸い寄せられる。
気付いて合わせてくれた目に時間が止まる。想いが通じて心が熱くなる。タキナが欲しい……。
バカ、バカ、バカ、バカ。渇きを覚えた唇と体を無理矢理抑えつけて扉を閉める。
ハァハァハァ。収まらない。胸が苦しくて体が熱い。
チートで抑えようとした瞬間にいい匂いに包まれて、唇が重ねられる。
「んっ……んんっ……ん」
唇だけで全てを持っていかれる。
「……おかわり」
求める唇に柔らかく人差し指が当てられる。
顔が近い。彼女の朱く染まる頬がかわいいくて魅力的。
「ユフィ。 待てますね?」
「うん……」
「では、お昼に迎えに来て下さいね。長くもらっておきますから」
「うん」
彼女が戻った後も、しばらく唇の余韻に浸る。これだけで百年はもちそうなほど気持ちよかった。
特にする事もないからギルドに入るけど、タキナは平常運転に戻ってて、キレイな姿勢と所作でずっと見ていられる。
受付はしてなくて、三人の見習いの指導をしてるみたいだね。受付で不埒な口説きをされてたら理性が保てた自信はないよ。
既に指導員だなんて、メイド姉様達のハイスペックぶりには驚かされるばかり。
でも、気にするそぶりはないのにボクの気配を掴んで離さないのが嬉しい。
久しぶりの朝のギルド活気があっていいね。情報掲示板には新ダンジョンの情報もあって、周りの半分くらいはその話題になってる。
緊急性のある依頼もないし、盗賊らしき被害情報もない。グレン達の頑張りが見える。
昼過ぎになってタキナが解放されたのをギルドから抱えて連れ去る。今の彼女なら速さに問題はないけど、早く温もりを感じたかった。
雑談しながら本部の自室に入ったあと、彼女を降ろして目を合わせるのだけど、なかなか言葉が出ない。
「タキナ……。 えーっとね……。 その……」
「ユフィ……。 目を閉じて……」
「うん……」
目を閉じたボクの頬に左手が添えられて、おでこに軽い痛みが走る。
「ほえっ?」
期待を外されてちょっと気の抜けた声が恥ずかしい。
おでこを小突いた彼女がイタズラっぽく微笑む。
「今日は歯切れが悪いですね。 お仕置きです」
「ごめんなさい」
「ふふふ。 ちょっぴり嫉妬してしまってました」
そして、また重ねられる唇は優しくて……甘くて……気持ちいい。
「タキナ……ありがと」
「はい」




