だいたいの事は左手の法則で解決できる
「下があるねぇ」
「そうですねぇ」
部屋の最奥には大きな扉、その先は下に続く階段。
ミノタウロスの素材とドロップ品をしまうけど、魔物の装備品なんかはドロップ品以外は消えちゃうんだよね。
ドロップ品は牡牛座の鎧(腕)(ブロンズ)。星座シリーズはかなり強い。ゴールド、シルバー、ブロンズとあって揃えるとユニークスキルも使えるらしい。あるのは知ってたんだけど、ゲーム中も含めて実際に見るのは初めて。微妙だね。揃えるのにどんなけかかるんだか?
タキナにボス戦の説明もする。タキナの剣は正確に心臓を突いてたけどボスはHP型だからクリティカルでも一撃ではきついのだ。知っていたらもっと早く決着は着いていたと思う。他にもHP型はいるかもしれないけどクリティカルをボスキャラ以外に耐えられた事はないけどね。
六階層からは迷宮型なのね。
出現モンスターはアンデッド系がメインかな。
ゾンビにグール、スケルトン、ゴーストからハイリッチまで。
タキナにはアンデッドも問題ない。苦手なモンスターもないし、武器に魔力も流せるから無実体系統も大丈夫。
ただ、七階層からは簡単には進めなかった。魔力の濃さでは道が分からなくて気がつくとぐるぐる同じ所を回っている。六回層、七階層はかなりの広さだし、そしてタキナの魔力探知では地形の把握までは出来ない。
問題があるのは物理的トラップ。魔力的な物はボクには見えるし、タキナも何かしら感じるみたいだけど、魔力を見る能力を鍛えて行かないといけないね。
二人共物理的トラップの特技はなくて感覚と危機感知でスイッチに触れた後や発動後の対処になる。罠も時間経過で復活するけど、タキナは粉砕してしまうので、ダンジョンの中の人は大忙しだろうね。
「申し訳ありません。 迷ってしまいました」
「ふっふっふぅ。 迷宮で迷わない為には法則があるのだぁ」
「法則ですか?」
「そう。 左の壁に手を付けて進むと、いつかは出口にたどり着けるのだっ。 右手でやっても逆回りになって結果は同じだけどね。 これが、フレミングの左手の法則だっ。 人生の大半はこの法則でなんとかなる……らしい」
「端から順番に全て試していけと言う事ですね。 フレミングの左手の法則……。 同じ結果になるのに、どうして左手の法則なんでしょうか?」
「なんでだろうね? 左手の時の方が早い時が多かったとかかな? 目的地が中心だったり、外角じゃない時は効果ないんだけどねぇ」
七階層に入って三時間ほどかな? だんだんとタキナの口がとんがらかってきたので、引き寄せて唇を奪う。
「焦らないの」
「でも、こんな所でユフィの時間を無駄にしてしまって……」
「無駄じゃない。 タキナと一緒なら、どこでだって楽しっ」
「ユフィ……」
迷宮の通路を壁で塞いで完全個室にして食事とお風呂にして、寝るのを拒む彼女を強引にベッドに押し倒して唇を重ねる。
…………
タキナの寝顔を眺めながめてキレイな髪をいじる。彼女がボクより早く寝付くなんて、自分で思ってる以上に疲れてたんだろね。
ボクの目が開くと同じにタキナの瞼が動くから軽く唇を合わせる。
「ユフィは優しいですね」
「タキナが優しくしてくれるからね。 優しくない人達もいるみたいだけど、いける?」
「はい。 お任せ下さい」
モーニングティーは後回しにして(さすがにそこまで寝てないけど)、さっと身支度を整える。
まだ距離があるけど集団がくる。迷宮型のモンスターの習性? トラップ? 誰が教えるんだか(笛くわえて探し回る人達は見た事はない)、同じ場所で長時間留まってるとどこから現れるのか集団で襲ってくるのだ。
集団は二十ほどで目新しいモンスターはなくて、タキナに一瞬で処理されるけど、ラブさん達でもキツいレベルかもしれないね。報告はいるかな。
「この後はどうしますか?」
「後三時間はがんばってみよっか。 ほんとなら数日かけて攻略するものだしね」
そもそも、この狭い迷宮区に数日間とか無理。しかも休息しようとしたら魔物の襲撃があるからセーフエリアで休息をとりつつ攻略を進めないといけない。ゲームルール通りなら階段エリアはセーフエリアに違いない。
結果、七階層は一時間ほどうろうろして完了。八階層は左手の法則で二時間ほどで攻略できた。
今は九階層の階段下広場。左手の法則でぐるっと一周しちゃった感じだね。
モンスターは強くはなるけど、基本系統は同じだから問題なし。
「戻ってきてしまいましたね」
「うん。 次の階段は外側の壁沿いにはないって事で、通常ならマッピングしながら中に進んでいく場面だね」
「どうしますか?」
「今日はもう終わって、明日一日で終了にしよっ」
「はいっ」




