ラブ&ベリー
「誰か来ますね?」
「魔力探知で調べてみて?」
「はい」
オーガは収納して、ゴブリンは討伐証明の耳だけ削いで死体は焼却する。
後片付けも終わろうかという処、いいスピードで近付いてくるグループがいる。八人組で、先行する二人は気配が薄いから斥候かな。
タキナが放った魔力はキレイに処理されて、掻き消された感じは無いから見て避けたか、反らしたのか? 良い腕だ。
「申し訳ありません。 魔力探知には反応がありませんでした。 気配は十ほどでしょうか?」
「そうだね。 とりあえずお茶にしようか?」
日があるから、屋根付きのガゼボにティーセットを用意する。
ここに来るまで少しはかかるだろうし、人だとは思うけど、ゴブリンなら殲滅しないといけない。
知能が高くて、人に対して友好な個体もいるかもしれないよ? このセカイに生きてたら、そんな事は考えられない。ゴブリンは確実に皆殺しにしないといけない。害獣の子供を、かわいそうだからと見逃すと、大量の人間に被害が出る事になる。
所詮、どこまで行ってもゴブリンはゴブリン。人斬りは人斬り。なぁ、抜刀斎……。
チョンっ。
白く細い指先が鼻頭に添えられる。
「また、難しい事考えてますねっ?」
「ごめん……」
「はいっ。 私の目をまっすぐに見て下さい」
吸い込まれそうなほど透明な薄い紫色の瞳。確かに少し桜色に近づいたかもしれない。その瞳はだんだんと大きくなって唇が触れる。
「ふふっ。 嬉しいですねっ」
「うん……」
………………
「おいおい、嬢ちゃんかよ? 久しぶりだなぁ」
「なんだラブさん達かぁ。 ベリさんおひさぁー。 こんなとこで何してんの?」
「ほんと久しぶり。 学院行ってんだっけ? 元気してた?」
「俺を無視すんな。 なんで、べっぴんメイドさん付きでお茶飲んでんだよ?」
「へへへ。 まぁ、みんな座ってよ」
慎重にこちらを伺って、姿を見せたのは見知った人達だった。
ファーレン冒険者ギルド所属の上級冒険者達で一緒に仕事した事もあるパーティー「ラブ&ベリー」だ。
話しかけてきたのはリーダーのラブさん。スキンヘッドのおじさんだけどラブさん。名前がラブだからラブさん。ラブさんだから仕方ない。
「俺はまだ二十代だよ」おっと、失礼。
筋骨隆々でバトルアックスを背負った完全な前衛タイプだけど冷静でリーダーにピッタリ。
ベリーさんはラブさんの奥さん? 彼女? で、大きくはないけど引き締まった素晴らしい身体で大剣を振り回すイケイケ前衛タイプ。
斥候二人は双子姉妹。水色の長い髪を一つにくくった姉のラフィと、同じく水色の髪をショートボブにした妹のコフィ。二人とも小さくてかわいいシーフスタイルで西洋忍者な服装だね。
中衛は二人。
緑の長い髪のイケ顔ソードマンのイケトルに、黒の髪を後ろで束ねた槍の達人ランスイー。二人共弓の腕も良い。
最後は後衛の二人。
赤く長い髪が目を引くナイススタイルの美人剣士エメローラと、青いボサボサの髪で目まで隠して、無口で暗い印象のバウバロ。二人共、後衛って言っても魔剣士だからオールマイティに仕事はできるけどね。
みんなにお茶を出してお菓子を足した後で、タキナを紹介すると、それぞれが自己紹介をしてくれる。上級冒険者はそれなりに礼儀作法も悪くないし信用できるから安心して紹介できるよ。
タキナへの色目を目で威圧しながら互いの近況を話した後は本題になるのだけど。
ラブ&ベリーの仕事はこの集団及び周辺の調査で間違いないらしく、発光信号は罠の可能性があるから応答せずに急行してきたそうだ。
リーダーはオーガでゴブリン三十二体を倒した事を伝えて、ギルドへの報告は任せる。
彼らはこの集団の来た方向を辿ってからファーレンに戻るらしい。
「報酬減らしちゃってごめんねー。 お詫びにこれはあげるね」
オーガの死体を取り出すのだけど。
「これは、一撃? 嬢ちゃんか? ……。 姉さんがやったのか? かぁー、こっちの姉さんまで常識外れかよ。 いらねーよ。 調査だけでも十分以上あるし、仕事した分はちゃんと貰っとけ」
「合点承知」
「二人でそれかよぉ」
「えっ? タキナ一人でだよ」
「ったく、どんなコンビだよ……」
「あっ、ジュノーのネスタフェってどっちー?」




