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ふくちょー

 兄様と姉様ついでにシーズにたっぷり優しくしてもらったし、最高の朝。

 まだ日も出る前だけど出発の準備にかかる。みんなが来ちゃうと寂しくなるからね。

 姉様に身支度をされて、さっと着替えようとしたタキナも姉様に止められて身支度が始まってかわいい顔をしてる。

 二人から励ましをいただいた。兄様はともかく姉様には引き留められると思ってたけど優しく送り出してくれる。

 ファーレンだけじゃなくて、周辺国にとっても重要な事だからって。


 書庫を通って図書室のドアを開けると、いつから居たのかアイシャが椅子に座っている。ボクと姉様がよく図書室に居るのはアイシャも知ってたからね。入口は他にもあるけど、姉様もこっちから入ってくるよ。

 ボクを見つけた途端に抱きついてくるアイシャ。


「おはようアイシャ」

「行くの?」

「しなきゃいけない事が残ってるからね。 すぐ帰ってこれるとは思う」

「そっか」 

「ボクが留守の間、姉様やみんなに何かあったら護ってね」

「わかった」

「ありがと。 お願いね」


 学院を出たらミネルバの部屋にも顔を出す。

 

「おはよう……」

「おはよう……、じゃないわよ。 早いわよ……」


 確かに早かった。裸の彼女に無理矢理ベッドに連れ込まれそうになるのを回避する。

 ミネルバの促しでベッドに腰を下ろす。

 そしてタキナを連れ込もうとするパウラを全力で阻止するのだけどしつこい。

 バタバタうるさいのをカトレアに怒られる事になる。


「二人共、騒がしいのはダメなのです」

「すいません……」「ふんっ」


 ミネルバから今後のシャルマンとの方向性について説明を、知らんぷりのカティアを枕に寝転んで受けるけど、時折手が伸びてきて頭を撫でてくれるのは嫌ではない。


「……な感じなんだけど、ユフィは嫌じゃない?」

「ん? 何が?」

「ユフィの功績が全部ファーレンの物になっちゃってるからさ……」

「いいよっ。 ミネルバに任すっ。 ここで養ってもらってるだけで十分だよっ」

「そんなの、大したことじゃないわよ。 欲が無さ過ぎて心配になるのよっ」

「んー、好き勝手してるだけだしねっ。 タキナとみんなが幸せならそれでいいかな。 おっ、闇の実力者みたいだねぇ。 こんど使おっと」

「バカ。 あんたヒーロータイプだから絶対に潜まないじゃない」

「うむ。 自信はない」


「そーいえば、シャルマンの水の問題を気にしてたじゃない? ユフィ、良い物持ってるよ」

「良い物?」

「シモーネよ、シモーネ。 もしかして見てないの?」

「忙しくて、忘れてた。 しかも三体になってるし。 どんなの?」

「ユフィらしいなー。 見てのお楽しみだねー。 きっと好物だと思うよー。 三体あるなら、二体をファーレンからの貸与品って事でシャルマンに貸し出して欲しいんだけどいい?」

「見てないから分からないよ」

「だよねー。 まー、見たらわかるよっ」

「おけ」


 ここに来てからこれだけ長期間の留守はなかったし、タキナにとっては初めての旅になる。

 ミネルバ達だけじゃなくてメイド姉さま達からも抱擁や口づけをいただいてから出発となる。

 みんな温かくて涙がでる。

 ちょっと拗ねていたパウラも最後は優しかった。

 


「ほっほぉー。 今度はそーきましたか……」

「大きい。 これは、船ですか?」


 ファーレンから離れて人気の無い所でシモーネを出してみたのだけど……。確かに好物ではある。

 物資輸送機(船?)シモーネ? 無塗装の鉄板の様な鋼色で船首と船尾に赤、胴体部分の一部に黄色をあしらった船体、実際に見ると潜水艦どころか宇宙船に見える姿はまさしく万能潜水艦ノーチラス号。

 やめてよー。機体や戦艦への憧れとかはあるけどさぁー。それ以上に主人公に会いたくなるじゃーん。ちょー好きなんだからさぁー。

 あれ? 主人公って男の子の方? 好きなのは当然女の子の方だよ。

 純粋で真っ直ぐな男の子と素直になれないツンデレちゃんな女の子の冒険ラブストーリー。

 主人公二人(オマケ付き)が無人島に流れ着く話があるんだけど、女の子が素直になる時があって、ほんとにかわいいの。まぁ、いつも通り男の子がぶち壊すんだけどね。

 登場人物みんながステキなんだけど、乗員付きだったりはしないよね?


 物語をタキナに話しながら中を見て廻る。

 コンコンコン。

 これ、金属で出来てる。そりゃそうだ。

 鋲が打ってない……。どうやって繋いでるんだろう? ほんとにね。

 ブリッジから機関室まで本物だなぁ。操作の必要はないけどいじりたくなるね。


 空は飛べないけど、水の中だけじゃなくて、タイヤとかないのに陸上も動けるらしくグレードアップパーツもあるみたい。

 カートリーヌはどーこだぁー? ない。そーですか。

 ボクの持ってる水を入れてみたけど、数十トン?の水が難なく入って、どこに入るのか船の中には見当たらない。シモーネに聞いても分からないらしい。


「タキナが船長ねぇ~」

「いえいえ、ユフィが船長です」

「ダメェ。 ボクは副長って呼ばれたいのー」

「副長ですか?」

「うん。 だからタキナがせんちょー。 はいはい船長席に座ってぇ」

「はぁ……、わかりました」


「よぅし。 船長、ご指示を願います」

「指示? なんですか? では、発進っ」

「ふくちょー」 

「はいはい。 副長、発進お願いします」

「はいっ。 エンジン始動。 動力異常無し。 計器類異常無し。 周囲に敵影無し。 障害物なし。 抜錨。 シモーネ・ノーチラス、全速前進」


 …………おっそっ。

 かっこいい音と共に謎の方法で走行を始めたノーチラスだけど、遅い。

 人が歩く程の速力しか出ない。まっ、潜水艦だもんね。万能ってなに?

 せっかく移動手段確保と思ったのになー。

 とっほっほ〜。

 あぁ、追加パーツで速くなれるのね。

 でも、シャルマンの水問題解消の為にはありがたい。

 

「船長……、降りて走ろっか」

「はいっ、副長っ」

作品を読んで頂いてありがとうございます。

面白いと感じてもらえたら、いいね、ブックマーク、☆評価お願いします。


至らない点が多数あると思いますが減らして行けるように頑張ります。

作品は今後も加筆、修正あります。

投稿は不定期です。


先に閑話的作品を投稿して……と思ってたんですが、本編と大幅にズレてきたので書き直しか別の作品になりますね。

一緒に読んで評価いただけたら嬉しいです。

本編の執筆が忙しく更新は止まっております


https://ncode.syosetu.com/n2673im/


カスタムキャストでイメージを作ってみました。


※画像はイメージであり、実際のものとは異なります。

挿絵(By みてみん)

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