約束ですよ
タキナさんの空間を出た所は、前が見えないほどの霧に覆われた場所で。
まだ通常空間じゃないかな?
少し歩くと霧はだんだんと熱気と湿気を帯びてきて、ぼんやりと人影が浮かぶ。
何? どこだろ?
はっきりしてきた人影は椅子に座って髪を洗う裸の……タキナぁ?
こちらに顔を向けていた彼女とばったり目が合ってしまって、お互いにびっくりして目が見開かれる。
「ユフィ……?」
「タキナぁぁぁ……」
泣きながら彼女に飛びつくけど、勢い余って床に押し倒す形になってしまう。
タキナタキナタキナタキナタキナタキナ…………。
透き通る様な白い肌、銀色の髪に薄い紫色の瞳……。
ボクのタキナだぁ。
彼女の感触を確かめてから、唇を合わせてゆっくりと重ね絡めていく。
「ユフィ……さま……。 こんな……所で……いけま……せん」
「ダメっ、我慢出来ない」
「んっ……んあっ……はげしい……です」
「だって久しぶりだから……。 ダメ?」
「ダメ……じゃないです……」
「ダメに決まっていますっ! タキナ、しっかりなさい。 甘やかすばかりがパートナーではないでしょう」
「クーン……。 いたの……?」「姉さま……」
「いたの? ではありません! そんな格好で、どこから入ってきたのですかっ? はぁ。 者共、やっておしまいなさいっ」
「はいっ!」
みんな居たの?
ぐぁぁぁ、みんなして寄って集ってボクを(ついでにタキナも)わやくちゃに洗浄していく。
あぁ、もっと優しくしてほしい。
乾燥と手入れ、仕上げまで終わったら、二人共浴場から追い出されてしまう。
「ユフィ様。 朝からミネルバ様の所に行っていただきますから、逃げないでくださいねっ」
「はい……すいません……」
「ただいま」
「おかえりなさい」
寝間着姿のタキナとあらためて唇を合わせる。メイド服じゃない処にみんなの気遣いを感じる。
部屋のドアを閉じたら、また深く唇を重ね合う。
「髪……伸びたね」
「二日前に急に伸びたんです。 短い方が良いですか?」
「ううん。 とても似合ってる」
「ずいぶん無理をしてきたみたいですね。 お顔が疲れてますよ。 夕食にしますか?」
「タキナが済んでるならいいかな」
「そこは心配しておりません。 ご飯だけはしっかり食べますもんね」
「うん」
キレイな部屋をさらに整えようとする彼女を抱き留めて、唇を合わせながらベットに二人で倒れ込む。
「おはようございます」
「おはようタキナ」
起きがけに重ねられる唇は気持ちよくて幸せなのだけど……。
「ユフィ……。 たくさんしてきましたね?」
「な、なんでかな?」
「たいへんに気持ちよくなっているからです。 これでは私も姉さまに習いに行かないと、奉仕されてばかりではパートナーとして釣り合いがとれません」
「ダメだよぉ。 タキナはそのままでいいからぁ」
「私を置いて行ったと思ったら、遊び回ってるわ、婚約して帰ってくるわ、私だって……ヤキモチくらいは焼くのですよ」
「ごめんなさい」
「…………ふふふ。 大丈夫ですよ。 私の事を覚えていて下されば、それだけで十分です」
「忘れないよ。 忘れる訳ない。 ちゃんとタキナの処に戻ってくる」
「はい。 約束です」
朝から重ねられる唇は、やっぱり美味しくて幸せ。




